大隅氏は、授賞理由となった細胞のオートファジー(自食作用)の研究を「役に立つとは思わなかった。でもそういうことが後で有益だと分かるのは、科学の歴史ではよくあること」と解説した。
「細胞内のリサイクルシステム」と題した英語の記念講演では「科学に有益性だけを求めるのではなく、社会は基礎科学を一つの文化と考えてほしい」と訴えた。
「これほど早く、オートファジーが多くの病気と関係があることが示されると思わなかった」と述べた。「自分が重要だと思うことにチャレンジすることが大事で、若い人が基本的な疑問に挑戦できる環境整備が必要だ」と強調した。
これまでの研究は「人と違う道を歩んできたという思いが大きい」と語り、「私は競争を好む人間ではなかったが、顕微鏡をのぞいて観察する時間だけは誰よりも長かった」と振り返った。
大隅氏は、細胞のオートファジー(自食作用)、すなわち細胞が不要なタンパク質を再利用するオートファジーの仕組みを解明した。がんやアルツハイマー病などの病気の治療につながる新たな研究領域を切り開いた。
記念講演は10日の授賞式を前に、一般の人に業績を分かりやすく解説する恒例の行事。医学生理学賞は大隅さんの単独受賞のため、1人で記者会見と講演に臨んだ。