13:21 2020年09月20日
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日本の研究者グループは、ネズミを人工的に冬眠に似た状態にすることに成功した。この実験の成功は将来、人間も休眠状態にすることを可能にするための第1歩ともいえる。研究結果は医療現場はもちろん、惑星間宇宙旅行でも大いに必要とされる技術となることは間違いない。

通信社「スプートニク」は、一部の温血動物が行う休眠(冬眠はその一種)の人工化の研究で科学はロシア国内も含めてどこまで進歩したのか、ロシア人研究者に解説をお願いした。

休眠とは深い眠りではなく、厳しい環境を生き抜くために多くの動物に不可欠な非常に特殊な身体的プロセスといえる。冬眠を行うことで動物は食糧不足と寒さの時期を生き抜くことができ、また夏眠は暑さや干ばつから身を守ってくれる。通常の覚醒状態に戻った動物たちは、いつものように行動をはじめるが、その際、身体的ダメージは特別見うけられない。

承知の通り、通常ネズミは休眠はしない。しかし、日本の研究者らは、ネズミに数日間の休眠を引き起こすため、脳のQニューロンと呼ばれる部位を活性化させた。その結果、ネズミの体温は10度または10度超まで下がり、心拍数や新陳代謝、呼吸の早さも著しく低下した。

ネズミで人工的な休眠が成功した今、今後の重要な課題はこれを人間に適応することができるか、また、休眠から覚めた後に健康上支障のない状態に戻ることができるのか、ということになる。

人間にとってなぜ休眠がそれほど重要なのか、スプートニクは、ロシア高等研究財団の化学生物・医学研究の副監督であるアナトリー・コフトゥン教授に話を伺った。

 

コフトゥン教授によれば、休眠が活用される主たる分野は医療現場であり、こうした状態は患者らの保護の上で役立つのだという。人体は、脳の虚血状態や低酸素、器官の過冷却、失血などの際によりよい対応策を模索する。またこのことは移植用の臓器の保存期間を著しく伸ばすことにつながる。

しかし、もっとも夢のある休眠の応用方法として、未来の人間が遥か宇宙への旅に利用するというものが挙げられる。

「医学は、極限状態にある人体の保護手段を得る上でこの分野の研究が力となることにとても期待している。たとえば、長期に宇宙飛行では、飛行士は科学的研究の目的を達成しようと思えば、どうしても酸素の消費量を抑え、身体へのエネルギー供給を控えなければ不可能だ。」

休眠は極限状態での身体の耐久性を高めるため、身体は生命活動にとって最小限の損失で回復することが可能となる。また、そのことによって特定の種は最終的に自然界で生き残ることになる。

コフトゥン教授は、他の哺乳類と同様、人間も人工的な休眠状態になる潜在的能力を持つと考えている。ただし、その能力を発揮するには科学の助けは必要だ。

「私たちの見解では、人間が休眠状態に達するためには、いわゆる『ターゲット』を発見する必要がある。つまり、休眠状態にするために、一定の神経群を確実に活性化させねばならない。これはまったく新しい取り組みで、まだ多くの未解明の問題があるが、私たちはこうした研究の将来性を確信している」。

ロシアの研究者らは以前からこの分野での研究を行っており、すでに休眠と類似した状態の研究で成果を上げている。コフトゥン教授は、ロシアのプロジェクトの最終目的は、熊の冬眠に類似した人工的な状況に人間を導くための薬理学的な製剤を開発することにあると強調する。     

「ロシアの研究者らはユニークな医療用注射薬の開発に取り組んでいる。この製薬は8つの薬理学的物質からなる。実験の過程では、こうした注射薬のネズミへの注入が、急速なそして安定的な体温の低下を引き起こしたことが示された。その際、体温は38.5度から31.5度まで下がっている。ネズミの低体温状況は約1日、平均で16~17時間継続した。その際、心拍数と呼吸の減少、酸素消費と脳の活性の低下が見られ、 その後、心拍数の頻度と体温は当初の数値まで回復している」。  

このほか、こうした実験の枠組みの中でロシアの研究者らは、瀕死の酸欠状態にあるネズミの安定性を向上させる薬理学的製剤の開発にも取り組んでいる。これも極限状態にある人間の延命にとって非常に重要な実験であるとコフトゥン教授は指摘している。

これらすべては人間を休眠状態へ導入する研究の重要な一歩だといえる。何種かの鳥を含めた動物の休眠の時間は自然だけが決定できる。たとえば、オオバハタリスは約9ヶ月間眠り続けるが、ハチスズメなどはたった1日だけしかいわゆる休眠状態に入ることができない。

人間は自分の希望通りにまた医学的な必要性から休眠状態を管理しようとすることから、人間はさらに自然から多くを学ぶ必要がある。そしてこれが研究者に解決が求められる冬眠と休眠のさらにもう1つの研究課題だといえる。      

 

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