17:30 2020年10月01日
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ロシア国立原子力研究大学が原子炉の遠隔操作の精度をおよそ1000倍高めることができる一連の実験を行った。世界の原発の安全性を新たなレベルに引き上げる装置だが、その作業原則は、先ごろ発見された中性微子(ニュートリノ)のコヒーレント弾性散乱の現象に基づいている。同大学の広報部がロシア国営原子力企業「ロスアトム」後援の研究結果について発表した。

原子炉の状態の監視メソッドに挙げられるのがニュートリノの分析。これは核燃料が盗用され、違法な核兵器の製造に使われかねない事態を防止できる。状態がおかしいと疑われる原発が見つかった場合、その運転に関与せず、遠距離での分析が可能だ。

プロジェクトを引率するロシア国立原子力研究大学、学科間核物理研究所ノアレクサンドル・ボロズドゥイニャ学科長は、「 ニュートリノとは核反応で大量に生成される素粒子。ニュートリノが原子炉から放出されないようにするには、1光年の厚さの鉛の壁が必要だ。なぜならニュートリノは原発の防護壁をいとも簡単に通過してしまうからだ。ニュートリノの放射の分析で、我々は反応の同位体の構成も、今、原子炉の活発な反応が起きている中心部で何が起きているのかも知ることができる」と語っている。

ロシア国立原子力研究大学の専門家らの説明によれば、原子炉の運転で核燃料が崩壊する際に生み出される生成物のひとつとして、 プルトニウム239の同位体ができる。これはいわゆる核兵器製造の原料となるプルトニウムだ。ニュートリノの放射検出器を用いればこの物質が取り出された場合、それを明らかにすることができるか、もしくは核反応で起きた同位体構成物の変化を見つけることができる。

ロシア国立原子力研究大学はニュートリノを用いた遠隔管理メソッドの改良を行いながら、従来のものと原則的に異なる、重い原子核へのコヒーレント弾性散乱効果に依拠した二層検出器の製造に取り組んでいる。この現象についてはソ連の物理学者らが40年以上も前に予言していたが、2017年に実施された加速化の実験でようやく実証された。

ロシア国立原子力研究大学の話では、コヒーレント弾性散乱効果を用いることで従来の機器より1000倍も感度の良い検出器を製造することが可能。現在使われているニュートリノ検出器は重量が何トンもあり、原子炉の大きさに呼応したサイズだが、新しい検出器は小型のモバイル機器ほどの大きさで実現することができる。

現在、研究者らは史上2度めとなるコヒーレント弾性散乱の観察で得られたデータの分析を終えており、これによって現象の理論モデルの精度を著しく上げることができたと語っている。2度目の観察ではニュートリノをあてる標的としてアルゴンのより軽い原子核が用いられた。

ボロズドゥイニャ学科長は、「アルゴンはその性質が、ロシアの次世代型超高感度検出器RED-100で用いられるキセノンに近いが、はるかに安い。得られたデータから希ガスを用いれば比較的コンパクトなニュートリノ放射検出器を作れることがわかった」と語っている。

ロシア国立原子力研究大学の話では、すでに国際原子力機関(IAEA)の指導部が原子力エネルギーをより安全で透明性の高いものにできるとして同大学設計の検出器に関心を示した。

研究者らはこのほかにも、検出器の高感度は科学的な目的の使用にも十分耐えると太鼓判を押している。例えば太陽や超新星のニュートリノ放射の分析に用いれば、その内部でどういったプロセスが起きているかをよりよく理解することができる。

来年2021年にも科学者らは、モスクワから北のトヴェリ州にあるカリーニンスカヤ原発で検出器の初実験を行う計画だ。次世代型超高感度検出器RED-100を用いたコヒーレント弾性散乱のプロセス研究はロシア科学基金の助成金(RNF №18-12-00135)を受けている。原発の原子炉のアクティブゾーンの有効な遠隔管理技術の開発を目的としたRED-100の実験は、ロスアトムの子会社「科学とイノベーション」(株)が後援している。

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