可視化システムの構築にあたり、ゴダード宇宙飛行センターの天体物理学者ジェレミー・シュニットマン氏はNASA気候シミュレーションセンターのスーパーコンピューター「Discover」を用いた。太陽質量2億および1億の2つのブラックホールの降着円盤から出る光線の経路を計算し、シュニットマン氏はアニメーションを作成。光線がブラックホールの周りの湾曲した空間・時間を通過する様子が見て取れる。
「アニメーションを見ると、2つのブラックホールが、それぞれを囲む高温ガスの渦潮から出る光線を歪め、方向を変えていることが分かる。片方のブラックホールがもう片方の前を通る時、前方対象物の重力がもう片方の重量を、変化する弧の連続に変える」とシュニットマン氏は説明する。
アニメーションは、ドップラー増幅においてガスは見る側に向かうほうが、見る側から離れるよりも明るく感じるエフェクトを明確に示している。また相対論的収差、つまりブラックホールは見る側に近づくにつれ小さく見え、遠ざかれば大きく見えるという現象も示している。
「それぞれのブラックホールを拡大すると、各パートナーの歪んだ画像が無数に出てくる」とシュニットマン氏は語る。
降着円盤は青と赤、異なる色を持つ。より高温のガスは青の端のスペクトルに近い光を発し、より小さなブラックホールを周回する物質は、より高温を招く、より強い重量エフェクトを感じる。その際、このような質量の降着円盤は双方ともに大半の光線を紫外線領域で発するという。
研究者らは、近い将来、シュニットマン氏が描いたシステムに非常に近いシステムにおいて、2つの超大質量ブラックホールの融合から得られる重力波を検出することを期待している。
スプートニク通信では以前、イタリア天文台の研究員が2つのブラックホールを起源とする強力な重力波を発見したことを取り上げた。この2つのブラックホールは、宇宙に初期の星や銀河が形成される前にできた原始ブラックホールと関連があるとみられている。
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