日本のミサイル防衛:米国は中国との双極体制に向かうのか?

© AFP 2023 / Kazuhiro Nogi日本のミサイル防衛:米国は中国との双極体制に向かうのか?
日本のミサイル防衛:米国は中国との双極体制に向かうのか? - Sputnik 日本, 1920, 22.04.2021
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米国はワシントンで実施された日米首脳会談を総括し、1960年に調印された日米安全保障条約に基づき、核兵器を用いて日本を防衛していく決意を確認した。日本は、米国のこの声明を異例のものと見なすべきなのか、またなぜこうした声明が菅首相との初の首脳会談で出されたのかについて、「スプートニク」が専門家に意見を伺った。

米国は2015年、オバマ政権時代にも、(核兵器を含めた)あらゆる手段で日本を守るという姿勢を示している。

一方で、日米安全保障条約が日本の領土を防衛することを定めたものではあることには変わりないが、トランプ政権時代には、これほど明確な声明は表されなかった。

同盟への忠誠

今回の発言が日米関係に関する公的な声明の中で出されるようになったことについて、政治学者で国際関係問題および日本研究の専門家であるドミトリー・ストレリツォフ氏は、これは米国による日本の防衛が保障されることへの懸念が日本側に残されていることを物語っていると指摘する。

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「日本政府は米国で政権が変わるたびに、日米安全保障条約に記されている米国の義務を確認しています。現在、このことは日本にとって非常に重要な意味を持っています。というのも、今回の米国の新政権の発言は米中の対立が激化する中で行われたからです。バイデン大統領はこのような声明を表すことによって、米国はもちろん、同盟国の利益を追求しながら、近い方向性を持ったアジアの民主国家との伝統的な同盟関係にアクセントをおいた民主党の政策を打ち立てていくかまえであることを示して見せたのです」。

日米首脳は、米国が日本を守る義務を負うことを定めた日米安保条約の第5条は中国が領有権を主張している尖閣諸島も適用対象に含められることを確認した。

発言はより具体的なものに

米国の外交上の「メッセージ」は、トランプ大統領の不明瞭な路線を改めることを意味しているが、これは日本に対してだけではない。米国の新政権は欧州諸国を含め、これまで米国が負っていたすべての同盟諸国に対する義務に忠実であるということを示しているのである。

中国問題の専門家でモスクワ国際関係大学および高等経済学院の教授であるセルゲイ・ルジャニン氏は、日米関係においては、尖閣諸島の領有権に関する微妙な問題を含めて2つの新しい重要な局面があると述べている。

「歴史的な問題が急激に深刻化しています。声明は激しさを増し、『核』による攻撃という発言まで飛び出し、まったく新たなレベルのものになっています。米国の声明は日米安保条約を引き合いに出す形で、より具体的なものになりつつあります。これまでは、尖閣諸島問題は『目立たない存在』で、触れられることもありませんでした。中国も以前は基本的には、総体的な声明を出すに留まっていましたが、現在は、より厳しい対応を見せるようになっています。たとえば、台湾に近い南シナ海の係争地周辺で海軍の軍事演習を行なっています」。

次はクリル諸島かもしれない

ルジャニン氏は、武器をちらつかせ、具体的な条文を引き合いに出すようになったことは、アジア太平洋地域において、米国、日本、中国の3カ国が、中国との対立において超えてはならない一線に近づきつつあることを意味していると指摘する。

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「今回、バイデン大統領と菅首相は、非公開の席で何か非常に具体的なことで合意をしたと思われます。そして中国の抑止を目的として、日米の同盟関係がアップグレードされ、新たなレベルに押し上げられたことは世界の誰の目にも明らかです。そして、わたしは、この反中国的な流れの次に、米国がクリル諸島(北方領土)の返還を求める日本の立場を公に支持してくる可能性も排除しません」。

ソ連時代のような双極世界への回帰はあるのか?

ドミトリー・ストレリツォフ氏は、バイデン大統領政権下での「反中国路線」は米国の外交政策の中に、深く、そして長期的に組み込まれたと考えている。とりわけ、日米首脳の共同声明で、52年ぶりに台湾についての言及がなされたことからもこのことが伺えると指摘する。

「『反中国路線』は米国の発言に非常にはっきりとした形で表現されるようになっています。ですから、米中の対立が激化し、冷戦時代の米ソ関係のようなものになる可能性はあると思います。当時、世界の安全は米国とソ連という2つの超大国によって決定づけられていました。このような状況は、当時、双方の間にはゲームのルールに対する相互の理解があったことから、プラスの面もありました。イデオロギー的な対立はあっても、核戦争を回避するため、どちらも一線を超えることはなかったのです」。

つまり、こうした双極世界による安全は、現在よりも高いものだったとストレリツォフ氏は締めくくっている。

一方、中国は、台湾、香港、新疆ウイグル自治区情勢に関する日米首脳の声明に断固、反対する立場を示し、これは中国の内政問題であり、外国からの介入は認めないとしている。

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