04:28 2020年09月27日
スポーツ
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新型コロナウイルスによる非常事態宣言や自己隔離は、世界中の何百万人ものアスリートたちの慣れ親しんだライフスタイルを乱した。身体活動レベルの面において、アスリートのライフスタイルは普通の人よりもはるかに大きく変化した。これまでのトレーニング量が多ければ多いほど、自己隔離が身体的および精神的健康に与える影響は大きくなる。自身も空手家である、「スプートニク」日本語課のアントン・シチコフ編集長(極真会の空手、2017年、2018年、2019年モスクワ選手権入賞)が、いつものようにトレーニングする機会を突然失ったアスリートたちが現在直面している困難について語る。

一般的にアスリートの免疫力は高いため、いくつかの面ではスポーツとかけ離れた人たちよりもその健康が大きな危険にさらされたものの、パンデミックに対する保護力はより強い。しかしアスリートにとって危険なのは、ウイルスというよりも、むしろ外出規制や自己隔離である。なぜならトレーニングを急にやめることで、もはや新型コロナウイルスとは関係のない健康上の問題が生じるからだ。多くのアスリートは、それを自宅でのトレーニングで解決しようとし、中には自分のために文字通り自分自身にパンチを打ち始めているアスリートたちもいる。

心血管系

トレーニング時、アスリートの体は大量の酸素を必要とし、心臓は血液に酸素を送るためにより活発に動き始める。心臓も人間と同じようにトレーニングし、負荷の増加に慣れ、代謝プロセスを促進する。

南アフリカの研究者たちは、運動を2週間休むと、運動が血圧に及ぼすプラスの効果がほとんどなくなってしまうことを発見した。

人間が突然運動をやめると、体はトレーニングをしていた時に必要としていただけの血液中の酸素量をもう必要としなくなり、その削減を始める。アスリートのトレーニング量が多ければ多いほど大きな変化が起こり、心血管疾患のリスクが高まる。血圧と血糖値の問題は、運動をやめてから最初の数週間で感じられることも珍しくない。

外出規制とうつ病

トレーニングの突然の中断は、精神に悪影響を及ぼすおそれがある。これは特にうつ病性障害の発症につながる。

オーストラリアのアデレード大学の研究によると、トレーニングを中断してからすでに1週間目に軽い症状が現れる可能性があるという。

ある理論によると、適切な負荷は正常な代謝やホルモンレベル、神経細胞の活動に影響を与えるため、身体的および精神的健康にとって重要だ。また負荷不足はトラブルを引き起こし、それはまず精神に反映され、うつ病の発症につながるおそれがある。

体重が増加し始めるのはいつ?

多くのスポーツ医は、大多数の人がトレーニングをやめてから約6週間後に身体の変化(鏡を見たり、体重を計るなどして)に気づき始めるとの見方を示している。

プロのアスリートでさえ、余分に体重が増えないという保障はない。Journal of Strength and Conditioning Research誌に掲載された2012年の研究では、トレーニングを5週間休んだ水泳選手の体脂肪が12%増加したことが示された。

なお、実験の参加者たちは座りっぱなしの生活を送っていたのではなく、今まで通り軽い運動や中程度の運動はしていたという。

WHOは何を推奨している?

世界保健機関(WHO)は今春、スポーツをしているかしていないかに関係なく、新型コロナの影響で自宅待機している人向けの身体活動に関するガイダンスを公表した。WHOのサイトに自宅でできる運動のリストが掲載されている。

WHOは、成人に対して週に150分〜300分の適度な運動を行うことを推奨している。集中的な運動の場合は、75分~150分で十分だという。18歳未満の子どもは、毎日1時間ずつの運動が望ましいとされている。

スポーツをしている人は、たとえそれがアマチュアレベルであったとしても、WHOの最低限のガイドラインに示されているよりもはるかに大きな負荷に慣れている。アスリートは体力の維持だけでなく、スキルの維持にも努めている。しかし一部のスポーツ競技は、たとえ自宅で積極的にトレーニングしたとしても、スキルの維持はほぼ不可能だ。

通信社スプートニクには、さまざまレベルの空手家やダンサー、また体型維持のために定期的にスポーツジムに通っているアスリートたちが数人いる。外出規制中の「スポーツ・サバイバル」のために極真空手をリモート練習した経験を、以下ご紹介する。

自己隔離における空手

極真空手は、手にグローブをしたり、足にプロテクターをつけずに1対1で対戦するフルコンタクト空手だ。なお、パンチはボディのみで、蹴りはどこでもOK。このようなルールにより、ボディや足はたくさんの攻撃を受け、選手は至近距離で戦うことが多くなる。この点において極真空手は、頭部にパンチを打つことが許され、長めの距離や中程度の距離をとることを好むことが多い他の武道や空手のスタイルとは少し異なる。

選手が試合に出られる状態を維持するためには、一般的な体力トレーニングや技の他に、巻き藁の突きを含む、攻撃を受けて耐えるための体の練習に特別な注意を払う必要がある。そのため空手家たちは時折、トレーニングでブロックせずに互いにさまざまな攻撃を行う(頭部への攻撃は除く)。

もちろん、このようなトレーニングには練習相手が必要だ。したがって自己隔離の状況では、一人暮らし、または家族と一緒に暮らしていても適切な練習相手が家族の中にいない空手家は、受けの技量を維持するという課題を達成できない運命にあるようだ。

© Sputnik /
自己隔離における空手の練習

だが、完全に「体がだらける」ことを望んでいる人は1人もいない。では自分自身にパンチしたらどうだろうか?そうだ、パンチだ!奇妙に思うかもしれないが、空手家たちは運動中、実際に自分自身にパンチする。そのような最も一般的な運動は、床に横たわって行う腹筋だ。ただし、起き上がるたびに腹部やみぞおちを両手で打つ。また、足にも拳でパンチを打つ練習もする。

重要なのは、このようなパンチは試合で受ける力の3分の1にも相当しないのを理解することだ。しかし、このような練習をすることで、少なくとも攻撃とは何であるかを忘れることはない。そして脳も、攻撃とは何か、体はどのように攻撃を受け止めるべきかを忘れないことが重要だ。

体がだらける場合、トレーニング中に負傷する危険性が著しく高まる。空手家たちは外出制限が解除され、再び道場に戻った時にケガを防ぐために、現在、自分自身にパンチを打っているということだ。

スポーツとは常に、第一に自分自身との戦いだった。時にこの表現が比喩的でないのは皮肉なものだ。

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