日米印豪のQUADという枠組み-中国を封じ込むもう1つの策となるか?

© AP Photo / Emily Wang尖閣諸島
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日本と米国、インド、オーストラリアは政府高官が出席する高いレベルでの交渉を行なった。この会合はジョー・バイデン氏が大統領就任後に取り組んだはじめての多国間協議の1つとなった。協議のテーマはインド・太平洋地域における協力の強化だった。

米国政府が現在進めている構想「自由で開かれたインド・太平洋地域」はどのような優先課題を有しているのか、なぜ今日中国がこの構想の実現における「つまづきの石」なのか、通信社「スプートニク」は専門家らの意見を聞いた。

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QUAD(日米豪印戦略対話)とは、インド・太平洋地域の安全保障に関する4ヶ国協議を意味し、当初から中国を封じ込めるシステム構築といった戦略的目的が念頭に置かれている。このパートナーシップの理念は、安倍晋三首相の第1次内閣の際に提唱がされた。2012年に政権に復帰した日本の首相は、QUADを、日本や米国、オーストラリア、インドといったインド・太平洋アジア沿岸地域の民主主義の「戦略的ダイヤモンド」と強調した。

しかし、「4ヶ国」の枠組みが「具体的なファセット」をより鮮明にしたの2017年だった。その際、インド・太平洋地域の戦略の具体的実現を目的に、米国は日本とインド、オーストラリアとの対話に復帰することを決めている。戦略の目的は変更されることはなかったが、参加国側からのアプローチは、はるかに慎重なものとなったと専門家らは見ている。

経済科学博士のビタリー・シヴィトコ氏によれば、新しい菅首相は中国政府との関係を悪化させる気はなく、地域の国家間の経済的利益と米国の対中国戦略の間でバランスを慎重に維持しようとしている。「日本は『4ヶ国』の枠組み参加を利用して自国の名声をより高めようとしており、そのためにパートナー国とグローバルな地域問題について討議している。しかし、日本政府は、NATO(北太平洋条約機構)のアジア版としての『4ヶ国』ブロックの構築という理念に対し極めて慎重であるが、それは中国政府との関係の重大な悪化を危ぐしているためだ。そのため、菅首相はこのテーマに対して考えを述べることはせず、最大の経済パートナーである中国に敵対する具体的行動を避けている。結局、領土問題での中国政府に対するレトリックは外交であり、QUADの具体的フォーマットである軍事協定はすでに好ましくない地政学的な影響を生んでいる」。

インドとオーストラリア、ASEAN各国(中国との個別の領土問題を抱えているにも関わらず)は、同じ様に米中間とのバランスをとり、米国のみならず中国政府を刺激しないように努めている。

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これらの国々は、地域の緊張強化を望んでおらず、可能な限り米中の対立から距離をとるようにしている。そのため、構想「自由で開かれたインド・太平洋地域」は、数年にわたり停滞を続けていると専門家らは考えている。「これらの国々は、米中間の対立は避けることができず、それは(自らを列強国とみなす)両国が地域における自国のグローバルな利益を維持するつもりだからだと理解している。しかし、インドやオーストラリア、ASEAN諸国にとって両国間でバランスをとることは、おそらく、どちらか一方の連盟に加わるよりもベストな選択だと言える。中立を保つことで、米国と中国の両政府が支援を求めた場合、何らかのアドバンテージを得ることが可能となるからだ」。

ベトナムおよびASEAN研究センターの主任研究職員グリゴリー・ロクシン氏は、「4ヶ国」の枠組みは不安定であり、ASEAN各国の支援はまったく明らかではないとの見方を示している。「米国の外交努力と日本の支援のもとで創設されたQUADは文字通り中国への対抗を意図している。その目的は、アジア太平洋地域での中国の拡張政策への対抗計画に、できるだけ多くの同盟国を引き込むことにある。しかし、米国政府は、若干、このイニシアチブに手間取っている。現在の地政学的現実はすでに完全な『アジアのNATO』に地域の国々を「結び付ける」ことを米国に許していない。この点で、こうしたフォーマットは今日すでに必要とされていないと言える。たとえば、日米安保条約またはNATOでは、こうしたことは具体的な条項と義務を伴う公式署名として記載がされている。今日、多くの国々は厳格な義務を避ける傾向にあり、中国との関係に関するものは特にそうだと言える」。

そして米国は、より明確にこうした傾向を実感しているが、しかし、自国の指導性を証明するために、対中国構想「自由で開かれたインド・太平洋地域」の促進を継続している。

そのため、バイデン新政権(トランプ政権のように押しが強くはないが)も同様に、アジア・太平洋地域の各国が中国の封じ込めにより多くの責任を負うよう主張している。そうしなければこの地域で米国政府は深刻なイメージダウンを被ることとなり、そのことは明らかに同国の利益にならないと専門家らは指摘している。

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