2014.02.19 , 11:12

日本人たちは米国人たちに広島・長崎爆撃を思い出させた

日本人たちは米国人たちに広島・長崎爆撃を思い出させた

   米国と日本の関係がスキャンダルで炎上している。駐日米国大使 キャロライン・ケネディ氏が、NHK経営委員百田尚樹氏の問題発言への抗議をこめて、NHKの取材申し込みを断った。百田氏は1937年の南京大虐殺の事実性を否定。同時に、1945年の米国による広島・長崎原爆投下を「野獣的行為」と批判した。

   百田氏の発言は、日本の政治エリートたちの、また日米関係における、見逃すべからざる傾向性を鋭く反映している。元駐日ロシア大使アレクサンドル・パノフ氏は次のように語る。

「広島・長崎に先立ち、同じ1945年、10万人以上が死亡した東京大空襲があった。しかし東京を壊滅させるための、軍事的必然性はなかった。こうしたすべては日本国民の脳裏に拭い難く刻印されている。広島・長崎両市では毎年、追悼行事が行われている。そこで、『原爆を落としたのはほかならぬ米国である』という点に力点が置かれたことは一度としてなかったが、それは別の話である」

   パノフ氏は語る。広島・長崎をめぐる米軍の「蛮行」発言が今の今なされたことは、偶然とは考えられない。米国が日本の安倍首相の靖国参拝をやんわり非難したことは、記憶に新しい。それまで米国は、同盟国を批判するに際しては、きわめて慎重であった。しかし、状況は変わった。バラク・オバマ大統領は、台頭する中国への脅威のもとに、日本および韓国との同盟関係を強化しようとしている。その今、日本の首相に靖国参拝などしてほしくなかったのだ。そこへ百田氏の、南京大虐殺の事実性を否定する発言である。おまけに百田氏は、東京裁判はただ、広島と長崎から目を逸らさせるために、米国に必要だったから行われたのだ、と語った。この発言は米国の許容限度を超えるものだったしい。けれども……とパノフ氏。

「大使が取材を拒否した。米国がこれほどハードなリアクションをとったことはかつてなかった。米国は明らかに不満感を表したのだ。もっとも、日本の肩を持ちたい気持ちもある。米国はかつて一度として自らの野獣性を認めたことはない。平和な都市を壊滅させてしまう、これは野獣性でなくて何か?米国だって悪いのだ。駐日米国大使が広島・長崎の追悼式典に出席するようになったのは、ほんの2年前のことだ。それまでは、日本の平和な市民を大量に殺害したことについて哀悼の意も何も表明してはこなかった。百田氏の発言は、米国の政治家たちの、自らの罪に対する沈黙と、歴史的真実からの逃避の結果なのだ」

   パノフ元大使は、百田氏の発言は日本社会の注意を喚起するに一定の役割を果たすだろう、としている。

「米国が広島・長崎についての自らの有責性を黙殺してきたために、日本の若い世代の多くは、原爆を投下したのはソ連だと思っている。いま歴史的真実が見直されることには、一定の理由と意味があるのだ」

   パノフ氏の見るところでは、百田発言の真意は、一つには歴史的真実への希求であり、また一つには、日本を対等の相手として、しかるべく敬ってほしい、との米国への呼びかけであった。もしも米国が日本の首相の靖国参拝を批判するのなら、日本にだって米国を批判する権利が、また根拠があるのだ。重要人物による問題含みの言動は、日本の抱えるひとつの不安、すなわち、米国はやがて日本を見捨て、中国をとり、ついに日本は孤立状態で中国と向き合わなければならなくなるのではないか、との不安に基づく、捩れた求愛表現と見ることが出来る。パノフ氏は言う、百田発言などがどのような効果を持つのか、それは分からない。しかし、少なくとも、広島と長崎の歴史的真実を見直すことは、誰にとっても害とはならない。

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