【視点】日本の防衛はどうなる? 空母化に向け甲板改造も、肝心の戦闘機はなし

© 写真 : Japan Maritime Self-Defense Force改修後の「かが」
改修後の「かが」 - Sputnik 日本, 1920, 01.05.2024
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あの戦艦大和が造られた呉、長崎の造船所で、海上自衛隊の護衛艦(DDH‐184)「かが」の第1回特別改造工事が終了した。これまでの「かが」にはヘリコプターが搭載されていたが、この改造で垂直着陸を行う最新鋭ステルス戦闘機F35Bが搭載できるようになった。だが、改造が終わったからといって「かが」がすぐにでも任務に就けるというわけではない。改造工事はまだ続く。防衛省の発表では工事の完成は2027年に予定されている。

甲板改修は終了

「かが」の改造は2022年3月に開始された。第1段階は今、ほぼ終了。これは飛行甲板の改造工事だった。
まず、飛行甲板が強化された。以前の「かが」には哨戒ヘリコプターSH-60Jを7機と、2機の掃海輸送ヘリコプターMCH-101が搭載され、輸送作戦、スタンディング、機雷除去に使用されてきた。これらのヘリの最大重量は前者が9.9トン、後者が15.6トンだたが、これに比べてF35Bは最大重量が27.2トンとはるかに重い。つまり、F35Bの離着陸時に飛行甲板にかかる負荷は、ヘリコプターの離着陸時にかかる負荷のほぼ2倍になる。さらに、F35Bは滑走しながら離陸することが多いため、デッキには静的荷重に加え、ヘリコプターの離陸時にはほとんどない動的荷重が大きくかかる。
次に、飛行甲板には耐熱加工が施された。F35Bは離着陸の際に主力エンジンをほぼ垂直下方向にターンさせるため、炎のプルームが甲板に突き当たる。噴射温度は摂氏1700~2000度に達する。このような加熱では甲板スチールは、加熱時間が短いため溶融こそしないが、激しい熱変形を起こし、強度も低下する。飛行甲板は離着陸が集中的に行われた場合、保護加工がなされなければ、すぐに損傷し、変形してしまう。さらに、高温に熱せられた甲板はそこで働く職員にも設置された機器にも危険だ。耐熱加工はこうした問題を解決する。
第三に、艦首の飛行甲板は完成した。端の形は以前は台形だったが、改造で長方形になった。F35Bは滑走してから離陸するが、フライトデッキが追加されたことで、滑走距離は約50メートル追加された。積載満載の航空機はこれではるかに容易に離陸できる。
第四に、新しい飛行甲板には新たにマーキングが施され(左舷に沿った幅広の黄色のストライプ)、新しい着陸灯が設置された。また、新しい衛星通信機器と精密位置決めシステム(JPALS)機器の設置も計画されている。 F35Bはもちろん、適正なサイズのパットや甲板に着陸できる。だが、そのためには十分なパイロット訓練と、視界がよく、日中の着陸条件が良好でうねりがないことが必要だ。戦闘では霧、うねり、船の揺れなど、条件が複雑化したり、夜間の飛行もあり得る。精密位置決めシステムは、そうした条件下でもパイロットが着陸できるよう助けるほか、自動操縦での着陸も可能にしている。

次の特別改造工事

だが、飛行甲板は一つではまだ十分ではない。「かが」のこの新しい甲板は「いずも」(DDH-183)のように、短い時間で発着艦、補給、補充を行うための飛行場のようなものでしかない。「かが」を本格的な空母にするには、第二段階である内部空間の改造工事が必要だ。
空母の飛行甲板の下には格納庫があり、駐機する航空機が飛行前の整備を受ける。格納庫はF35B用の仕様が必要だ。床の補強、乗り換え時や暴風雨時に備えた航空機の固定装置、必要な機器、砲弾、ミサイル、爆弾の保管・管理庫、燃料貯蔵システム、燃料補給装置が必要となる他、航空機を格納庫から飛行甲板に吊り上げるホイストも改築される。
第2段階の改造工事は2026年3月に始まり2027年初めに終了する予定だが、その後も、さまざまなテストや点検、訓練を通過し、洋上での実践飛行訓練も行わねばならない。つまり「かが」が完全に戦闘可能な空母になるのは、早くても2027年末ということになる。それも、この間に何も起きなければの話だ。

防衛能力を失いつつある日本

ここで注目すべきは、日本がF35Bを42機導入する予定だということだ。ただし、現段階では日本はこれらを保有しておらず、最初の6機の受領は2024年末に予定されている。
2024年度予算には、F35Bの臨時飛行隊の宮崎県の新田原基地(にゅうたばるきち)への設置が計画されている。新たな作戦センター、格納庫、補給庫の建設に440億円が計上されている。地下司令部も新設される。
さらに、新しい空軍基地が鹿児島県西之表市の無人島、馬毛島(まげしま)に建設されている。この基地は、米軍第5空母航空団のための重要な代替飛行場となり、また、将来的にはF35Bパイロットの訓練センターとなる。馬毛島には日本の空母の飛行甲板のレプリカが建造されている。
とはいえ、ここで忘れてはならないのは、米国がF35Bの日本での契約を承認したのは2020年7月だったということだ。あれから4年が経ったが、航空機はまだない。こうなると、日本が約束の6機を2024年末に受け取れるかどうかは、特に米国の財政、軍事上の問題を考慮すると甚だ疑問だ。
航空機のない空母は価値もなく、役に立たない。せいぜい、他のF35Bの保有国が参加する場合、使用が可能という程度にとどまってしまう。例えば、イタリアは6機のF35Bとそれを使用できる空母カヴール(C-550)を保有している。カヴールは2020年に改装された。また、米国と英国もF35Bを保有している。
こうなると、自国にF35Bがない日本は他国の作戦を支援せざるを得なくなる。こうした作戦は、日本の国防の利益に反するだけでなく、大規模な武力紛争に日本を直接巻き込みかねない。
加えて、日本は「かが」の甲板の改造に2年を費やしたが、全面改装には5年がかかる。その一方で、中国は、「かが」より大型で24機のJ15を搭載する自国初の航空空母「山東」をわずか2年半で造船し終え、就役させている。2022年6月には新空母「福建」もほぼ完成し、進水した。最新の写真から判断すると、この空母はすでに最終テスト段階にある。ということは、中国は2024年末までに戦闘可能な空母を3隻保有することになる。では日本はどうだろうか?航空機もない、改造半ばの空母を2隻保有することになるのだろうか?
このことから導き出される結論は、日本は、米国の直接的な関与なしにはもう、主要仮想敵国からわが身を守ることはできないということだ。
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