犬の目からみたモスクワ生活、プーとコロの10年

© Sputnik 日本/ Mano Kanako「ぼくたちプーとコロです!」
「ぼくたちプーとコロです!」 - Sputnik 日本
うちの会社が変わっているのか、それともブログ編集担当のアーニャが変わっているのか、うちの犬にブログの執筆依頼が来た…。「お宅の犬は最近10歳の誕生日を迎えたそうですね。10年もモスクワの市民(市犬)をやっていれば、いろんな変化に気づかれたでしょう。どうぞそれを犬の目線からつづってください」という。執筆といっても犬だからペンは握れないし、PCも打てない。私が代筆するしかないのだが、一応本人たちに意思を確認せねばならんだろう。

飼い主「うちの会社が君たちにインタビューしたいんだって。どうよ?」

プーとコロ「こたえる、こたえる!」

飼い主「まじめに答えるんだよ。題して『プーコロの目線でみたモスクワの10年』なんだけど、大丈夫?」

プーとコロ「だいじょうぶぅ~!」

  プーとコロはロシアの通信社からの依頼に耳をピンと立てて張り切った。というわけで今回の執筆の担当は(いいのか?という思いは残るが)真野家の迷犬プーとコロです。

 簡単な自己紹介

© Sputnik 日本 / Mano Kanako「日本の皆さん、はじめして! ぼくたちプーとコロです!」
「日本の皆さん、はじめして! ぼくたちプーとコロです!」 - Sputnik 日本
「日本の皆さん、はじめして! ぼくたちプーとコロです!」

プーとコロはロシア版マルチーズの母と放浪プードルの恋で戌年の10月に誕生。手狭なアパート事情から元飼い主に危うく廃棄のところを真野家に拾われる。プーはプードルに似ており、コロの犬種は獣医も首をかしげるほど不明。

 プー「10年で公園がすごくきれいになった!」

  犬が来る前の私の生活には文化の彩りがあった。劇場、コンサート、展覧会と夜遅くまで続いた華麗なインテリジェンス・ライフは彼らの登場で一変、体育会系部活生活へ。

一日中トイレを我慢する彼らのために仕事終了後は直帰。しかも休日も、毛布の防御も甲斐なく顔を舐めまわされて起床。彼らの普段の運動不足を補うために大公園へと繰り出す。そこで夏は3~4時間、冬はマイナス15度でも20度でも最低1~2時間は森の中を歩く。そのおかげで飼い主にはオールシーズン全天候対応型のゴム長靴からスキーウエア一式まで揃い、市内の緑地帯は遠いところまでもほぼ制覇した。

プーコロが大好きな公園の1つ、ビッツェ公園。2208ヘクタールの広大な敷地を川が流れ、森が広がる。ヘラジカもいるそうだ。我々は当然踏破したことはない。 もうひとつプーコロが好きなのはヴォロンツォ公園。元貴族の屋敷跡で文豪トルストイが樫の森での散策をこよなく愛した。紳士淑女が舟遊びに興じた古池が3つあるが、そのうちの1つになぜかプーは不注意で2度も落ちている…。

モスクワの住宅地の間には犬の訓練場も点在。うちは利用していないが、主に大型犬が平均台の上を歩いたり、ハードルを飛び越す練習をしている。これは将来憧れの「ボリショイサーカスにスカウトされるため!」ではなく、手狭な住居での運動不足を補うのが目的。もちろん無料で常時利用が可能。

© Sputnik 日本 / Mano Kanako 犬専用の訓練場
 犬専用の訓練場 - Sputnik 日本
犬専用の訓練場

  ところで、プーのいう公園の整備改善の話は本当だ。公園事業に民間の柔らな頭脳集団が参画することで、文化イベントもスポーツも積極的に楽しめる工夫が多く行なわれている。これによって「街が自分たちの日々の生活を考えてくれている」という感覚が市民に広がっている。この公園についてのネタは次回のブログにとっておく。

 コロ「こわい野犬がどっかいっちゃった。」

  確かにあれほど多かった野犬はめっきり減った。これは経済事情の改善も犬の保護施設が増えたことも影響していると思われる。たまに脱走集団を思われる野犬の群れを目にするが、非常に明確な目的意識を持っているらしく脇目も振らずどこかへと直進して通り過ぎてしまう。

 飼い主が語るお犬事情、日本のとの大きな違い

 その1、洋服を着ている犬が少ない。

 日本は服を着ている犬が多いように思う。あれを見て暑いしきつくないかと思うのは私だけだろうか? それはうちの犬の極度の服嫌いを知っているからなのだが。

  飼い主「あんたたち、基本的に服着るの嫌いだよね?」

コロ「大嫌い! 首のところ絞まる感じがするんだもん! 脱ぎたくて地面に擦り付けちゃう。」

プー「寒いときだけ仕方なく着る。それよりものすごく寒い時はブーツ履いたらずっと散歩できるじゃん!」

コロ「ブーツは足が凍るよりまし。あれだけはあたしも我慢する。」

 

プーコロは寒い時は不可避で服を着る。近所では毛の薄いチワワなどは秋の湿気が漂うともう服を着せられている。震えるチワワを横目に「さわってごらん。ウールだよ」といわんばかりの毛皮を誇るプーコロは裸だ。

そのプーコロが意思に反して服を着るのはマイナス20度下がる頃。ここまで来るとプーコロも外にでたとたん、銅像のように動きが止まる。他の犬も服を着せられるのは雨や雪などから体を守る理由が先決でファッションにこだわる犬(飼い主)はあまりいないようだ。

 その2、肉球を守れ!

  でも一番困るのは肉球どおしの間に入った雪が凍りつくこと。短時間の散歩ならいいが、それでも肉球は痛い。プーは我慢しつつ「ケンケンパー」と3本の足で飛び跳ねるが、コロは(抱き上げて)と涙目で訴える。

もっと困るのが融雪剤。人間が転倒しないように撒かれるこの融雪剤のとけかかった液体は動物には天敵だ。肉球は焼けどしたようにひりひりし、洗ってもひび割れてしまう。玄関で靴から解け出た融雪剤を舐めて狂い死にした猫もいる。

人間の革靴に融雪剤がついたまま放置しておくと台無しになり、泣くはめになる。

履くのは(履かせるのは!)面倒でも足は凍えない。これを履いて氷の上を歩くとフィギュアのメドベージェワ選手のようにくるくる回れることを犬たちは覚えた。

 その3、犬のトイレ事情

  毎回日本に帰る度に考え込んでしまうのがアスファルトの占める面積。土を踏む機会があまりに少ないので(犬はどこで用を足せるか)無意識に探してしまう。ロシアの犬が訪日したら街でも田舎でさえもアスファルトだらけでどこに向かって足を上げたらいいか当惑するだろう。それほどここでは家のまわりに土がたくさんある。

ロシアではおトイレ始末グッズを持って散歩することはほぼゼロ。草むらで済まし肥料にする。雪の季節は腐らないのでちょっと困るのだが。

 その4、リードを着けないで散歩もOK

  日本ではリードをつけないで散歩はご法度だが、ここではリードなしで乳母車の脇を歩き、公園を走る犬が多い。もちろん犬が迷惑をかける場合は別。プーとコロも公園ではリードなしで散歩するし、ヴォロンツォ公園までの1.5キロあまりの道もリードなしで歩くことが多い。

 最後に…

 飼い主「10年の人生を振り返って達成できたこと、なんてあるかな?」

プーとコロ「ドアを3枚壊したこと!」

飼い主「…。」

  もちろんこれは達成でもなんでもない、が、現に2匹は2枚はドアを壊している。3枚目はありがたいことにまだ機能しているが傷物だ。こうなったのも外に出たい一心で飼い主が出社したとたん一日ドアを引っ掻くせい。モスクワの変遷とは何の関係もないが、なぜここに彼らの発言を残しておこうかと思ったかというと、この「貴重な」体験を通して、私は非常事態省の活動を知る機会を得たからだ。

2枚の木製のドアを削られた私は3枚目のドアは初めて高価な鉄製を嵌めた。そのドアについた鍵に跳躍犬で知られるプードルは挑んだ。

床からほぼ1メートル高さのノブに向かって撥ねてはバレー選手のようにアタックを繰り返したプーは、その結果なんと内側から鍵を閉めてしまった。この鍵、部屋の内部からは掛けられるが外には鍵穴もない。帰宅した私にドア越しにプーの雄たけびが聞こえる。つまり私は中に入れない、彼らは外に出られない。

うちは12階。プロのロッククラマーに屋上から縄ばしごで伝ってもらうか、危険を冒して隣のうちから壁伝いに這うか、ドアを機械で壊すか…。半狂乱のプーコロにバカ犬とののしる私に近所のおばさんがのたまった。

「あんた、非常事態省よ! 呼んだらいいわ。」

呼んだらいいわって、バカ犬の救出にショイグさん(当時は彼がボスだった)の部下が出動するのか? どう思われます? 本当に天下の非常事態省は来てくれるのだ! 雨どいにひっかかった猫でも助けてくれることをこの一件で私は知った。幸い、ドアは工具で最低限の傷をつけてこじあけ、我々は家に入ることができ、涙とよだれでべたべたのバカ犬は顔を拭いてもらってこれは一件落着となったのだが。

  犬が我が家にきて変わったことは散歩で知らない人に話しかけられる回数が俄然増え、近所にすばらしい犬友達ができたこと。そして出不精な私をアウトドアにしてくれたこと。これは彼らに感謝せねばならない。ありがとう、プーコロ! ずっとずっと長生きしてね!

マノカナコ

 

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