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ガスプロムの政治経済学(2016年版)(7)

© Sputnik / Maksim Blinovガスプロムの政治経済学(2016年版) (7)
ガスプロムの政治経済学(2016年版) (7) - Sputnik 日本
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近く刊行する予定の『ガスプロムの政治経済学(2016年版)』(Kindle版)の第1章の途中からその抜粋を紹介したい。

第1章 経済的側面からの考察

4. 対中協力

(1) 中国国内のガス概要

ロシアと中国とのガスをめぐる協力関係を考察するために、ここではまず、中国国内のエネルギーバランス(一次エネルギーの構成)に注目したい。図7からわかるように、石炭の占める割合が2015年でも全体の63.7%ときわめて高い割合を占めていた。ついで、石油が18.6%、水力が8.5%で、天然ガスは5.9%にすぎなかった。一次エネルギーに占める石炭の割合が高いことで、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの大量発生につながっており、中国政府は事態の改善に迫られている(17)。

図8に示したように、今後2035年までに中国は一次エネルギーにおける石炭依存から天然ガスや非化石燃料への依存へと転換すると予想されている。つまり、中国のガスへの需要拡大が見込まれる。現に、中国政府も2015年12月のパリ協定締結に向けて、2030年までのGDPあたりのCO2排出量を2005年に比べて60~65%減らし、2030年前後にCO2排出量のピークにとどめることを約束した。これを実現するために、石炭から天然ガスや非化石燃料への転換がはかられようとしている。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、中国におけるガス需要は2015年の1900億㎥から2021年には3200億㎥に増加するとみられている。CNPCの計画では、ガスPLによるガス輸入は2015年の530億㎥から2030年までに2700億㎥まで増加する(http://www.ng.ru/economics/2016-08-12/1_gas.html)。

© Sputnik図7 中国の2015年のエネルギーバランス
図7 中国の2015年のエネルギーバランス - Sputnik 日本
図7 中国の2015年のエネルギーバランス

1. 石油
2. 天然ガス
3. 石炭
4. 核エネルギー
5. 水力
6. 再生可能エネルギー
(出所)BP Statistical Review 2016, p. 41.

図8 中国における一次エネルギーの構成予測

© 写真(出所)BP Energy Outlook, 2016 Edition (2016) BP, p. 60.
(出所)BP Energy Outlook, 2016 Edition (2016) BP, p. 60. - Sputnik 日本
(出所)BP Energy Outlook, 2016 Edition (2016) BP, p. 60.

中国のガスバランスを示したのが表15である。これからわかるように、国内での天然ガスは採掘されているが、それを上回る消費があるために、中国はPLを利用した輸入やLNG輸入によって不足分を補う必要がある。表からわかるように、PL輸入もLNG輸入も順調に増加傾向をたどっている。

PL経由でのガス輸入をみると、BP統計では、トルクメニスタンからのガスPLが本格的に稼働した2010年に中国の輸入量は35.5億㎥となった。以後、2011年に143億㎥、2012年に213億㎥(同年、ウズベキスタンから2億㎥の輸入開始)、2013年に244億㎥(同29億㎥)、2014年に255億㎥(同24億㎥。ミャンマーからの30億㎥の輸入開始)、2015年に277億㎥(ミャンマーから39億㎥、ウズベキスタンから15億㎥、カザフスタンから4億㎥)となっている。他方で、LNG輸入も増加させている。中国のLNGの最大の輸入元は、2015年の場合、オーストラリア(LNGを天然ガス換算すると72億㎥)だった。ついで、カタール(同65億㎥)、インドネシア(同39億㎥)、マレーシア(同21億㎥)、アルジェリア(同5億㎥)、ナイジェリア(同4億㎥)、ロシア(同2億㎥)などであった。

表15割愛


(2) パイプラインによる対中ガス輸出

ここでは、ガスPLによるロシアから中国へのガス輸出について考察したい。中国を中心としたガスPL網を示したのが図9である。これと図1を比較してわかるのは、図1では、「サハリン-ハバロフスク-ウラジオストク」の支線として中国につながるルートが描かれていないことである。現状では、「シーラ・シベリア」と「シーラ・シベリア-2」の敷設だけが決まっており、図9に点線で描かれているハバロフスク近くから中国に向かうPLは計画・構想されているにすぎない。

シーラ・シベリアとシーラ・シベリア-2についてはすでに簡単に解説した。ここでは、これらのルートが優先された事情について簡単に説明しておきたい。そもそも、ロシアから中国へのガス供給については、2010年9月、メドヴェージェフ大統領(当時)が訪中時に、ロシアのガスプロムと中国のCNPCのトップ間で「ロシアから中国への天然ガス供給の拡大基本条件」という文書が交わされ、2011年央までに正式契約を締結することになった。基本条件では、2015年末までにアルタイルート(のちのシーラ・シベリア-2)でのガス供給を開始し、年300億㎥の供給を計画していた。契約期間は30年になる見込みだったが、価格についての交渉は継続された。2010年12月段階の情報では、2011年の半ばまでに具体的なプロジェクト実現計画を固め、2015年末の稼働をめざしていた(Коммерсантъ,Dec. 16, 2010)。だが、2012年に入って、環境被害を防止する観点からウコック高原を通るルートを変更せよとのユネスコからの圧力が強まり、ルートの変更を迫られているとの情報がもたらされた(Независимая газета, Mar. 1, 2012)。他方で、東方ルートで年380億㎥の供給も見込まれていた。つまり、2本のルートが併行して検討されていたことになる。これは、2006年3月の訪中時にプーチン大統領が胡錦濤国家主席と会談後、ガスプロムとCNPCとの間でロシアから中国へのガス供給に関する議定書が締結されたのに端を発している。この段階で、すでに西シベリアと東シベリアからの2本のルートの建設が合意されたのである。ただし、具体的なルートが明確に決まったわけではない。

図9 中国におけるガス供給の基本ルート

© 写真図9 中国におけるガス供給の基本ルート
図9 中国におけるガス供給の基本ルート - Sputnik 日本
図9 中国におけるガス供給の基本ルート

(註)下線:ガスPL  点線:計画中ないし可能性のあるガスPL
♦:主要なガス鉱区     タンカーマーク:主要LNGターミナル
(出所)Коммерсантъ, Jun. 3, 2016

とくに東ルートとして、「サハリン-ハバロフスク-ウラジオストク」を北朝鮮経由で韓国にまで延長する構想があり、その構想実現の過程で中国への支線敷設という形で実現する可能性があった。2011年8月24日、メドヴェージェフ大統領と北朝鮮の金正日国防委員会議長(いずれも当時)が会談し、北朝鮮を通過して韓国に至るガスPLの建設で基本的に合意し、この協力のために特別委員会を設置することになったのだ。これを受けて、同年9月、ガスプロムは韓国のKogasとの間でプロジェクト実現意向に関する議定書に署名した。この段階では、年100億㎥の輸送能力をもつ、全長1100kmのPLをウラジオストクから韓国まで敷設することが計画されていた。ガスプロムとKogasは2012年にも正式契約したい考えだったとされる。このPLは北朝鮮を通過する(700km)だけで、同国での消費は想定されていない。このルートの建設は、ウラジオストク以南のPL建設を意味し、一部は中国向けガス輸送ルートとしても利用できるというものだった。だが、この話は北朝鮮という不可思議な国を経由させると、ロシアから欧州へのガス輸出が経由地のウクライナとの関係でもめてきたのと同じ事態になりかねないことから、ロシア側が消極的であった。この実現可能性はすでに薄れ、ガスプロムの計画を示した図1からは抹消されているわけである。ただし、中国までの延長については交渉が継続されている。

中国からみると、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンから中国への「中央アジア-中国」ルートがすでに稼働していることから、中国北東部へのロシアからのガス供給に関心が強かった。このガスを東部の人口の多い都市部に輸送するにはコストがかさむ。太平洋岸の都市部については、LNG輸入で対応できるため、競合関係が生まれる。このため、中国政府は黒竜江省の大都市ハルビンなどへのガスをシーラ・シベリアで輸入することに前向きであったわけだ。

ロシア側からみると、シーラ・シベリアのガス供給源となるチャヤンダ鉱区とコヴィクタ鉱区の開発と合わせて東ルートとしてシーラ・シベリアを建設することには大きな問題点はなかった。「サハリン-ハバロフスク-ウラジオストク」の北朝鮮経由韓国への延長計画が頓挫した以上、シーラ・シベリアが有力となったわけである。他方、西ルートについては、ガスプロムは積極的に推進したいという目論見があった。それは、そのガス源泉が西シベリアにあるガス田だけなく、ヤマル・ネネツ自治管区にある鉱区からのガスを想定しているからである。これらはいずれも欧州向けガス供給の源泉ともなりうるものであり、ガス価格の動向に応じて、欧州に輸出するか、それとも中国に輸出するかの選択権を得ることができる。とくに、ヤマル・ネネツ自治管区では、LNG工場の建設が計画されており、スポット価格に応じた臨機応変の対応が可能となるため、中国へのPL輸送ルートをも確保しておくことは価格交渉上も有利に働く。

シーラ・シベリアによる対中ガス輸出価格については、公表されていない。一説には、ガスプロムは欧州向け輸出価格での中国によるガス購入を望んでいたが、中国側は米国のHenry Hubでの価格の適用を提案していたという(https://www.gazeta.ru/business/2015/08/22)。2014年5月にガスプロムとCNPCとの間で調印された、30年にわたる年380億㎥のガス供給に関する協定では、ガス輸出価格は当時、欧州向け輸出価格の平均的水準に近い約350ドル/1000㎥になるとみられていた。それは、当時のHenry Hubでの価格よりも100ドルほど高かった。
ガスプロムによる欧州向けガスの輸出価格は欧州各国のエネルギー関連会社と長期契約を結び、それに基づいて算定されてきた。具体的には、石油製品価格の変動(6~9カ月移動平均)に基本的に連動するフォーミュラ(価格決定式)によって輸出価格(フォーミュラ価格に輸出関税や国境までの輸送費を加えてもの)を決定してきた(18)。これに類似した形態で中国へのガス輸出価格が決められるとすれば、石油製品価格の変動によってガス価格が大きく変化することになる。

ロシアの有名なジャーナリスト、ユーリヤ・ラティニナによれば、輸出価格が石油バスケットに連動して決められることになっており、2014年5月の協定締結時には原油価格は109ドル/バレルだったが、2014年11月時点で82ドル/バレルまで下落したから、輸出価格は263ドル/1000㎥にまで安くなるという(Новая Газета, No. 127, Nov. 12, 2014)。2014年5月の契約時には、350ドルを前提とすると、30年間、年380億㎥の輸出は約4000億ドル規模のガス取引になるとみられていたが、同年11月時点では、3000億ドル規模にまで縮小してしまった計算になる。契約時点でシーラ・シベリアの建設および鉱区開発にかかるコストは600億ドルと見積もられていたが、彼女が記事を書いた2014年11月時点のガスプロムの見積価格は1000億ドルに拡大していたという。彼女はこのコストがきわめて厖大であり、このプロジェクトの収益性に疑問を呈している。トルクメニスタンからウズベキスタン経由で中国に向かうガスPL(本文では7500km、ラティニナでは6400km)の建設費は70億ドルにすぎなかったことを考慮すると、3000kmのシーラ・シベリアの建設費はきわめて高額であると、ラティニナは批判している。

やや細かい話をすれば、この契約において最低引取量がどうなっているかも判然としない。中国側はガスプロムとの契約交渉において、最低引き取り量を契約の41%にするよう求めたとされる。ガスプロムが通常、欧州諸国との契約に課している"take or pay"では、年間契約引き取り量の80~85%を最低引き取り義務としているのに比べると、きわめて低い。こうしたことから、2011年10月、プーチン首相(当時)の訪中に際しても、対中ガス輸出に関する最終契約は調印できなかった。さらに、中国側は以前、約束していた400億ドルものガス代金前払いという提案を取り止めることを明らかにした。2012年6月の情報では、中国側は前払い方式を依然として提案した(Коммерсантъ,Jun.19, 2012)。ガス供給国に前払いの形で融資して、ガス購入価格を割り引かせるという戦略だ。これに対して、ロシア側は前払いを断り、欧州と同じフォーミュラ方式で価格を決定する方法を提案したのだ。

2015年9月、ガスプロムの子会社、ガスプロム・エクスポルトがオークション形式でガスをスポット的に販売する初のオークションをで実施した。2015年10月から2016年3月までの間に北西ヨーロッパの四つのポイントにおいてノルドストリーム経由で総計32億㎥を販売する計画だったが、39社中15社との39の取引において合計12.3億㎥が販売されることになった。売上高は全体で2.5億ユーロ(2.825億ドル)で、平均価格は203.2ユーロ(229.6ドル)/1000㎥であった。その冬の長期契約に基づく平均輸出価格は195.9ユーロ(221.4ドル)/1000㎥であったから、長期契約価格よりも高い価格で販売されたことになる。

2回目のオークションは2016年第二、第三、第四四半期の期間におけるバルト諸国へのガス供給のためのもので、2016年3月に実施された。総計4億2000万㎥強が6社に販売された。3回目のオークションは同年7月14日に実施された。ガスプロムは今後、欧州向けガス輸出量の10%までの量をオークション方式で販売していく方針だ。今後の展開が注目される。

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