都心の弾道ミサイル避難訓練は何をもたらしたのか?

© AFP 2022 / Toshifumi KITAMURA東京・文京区、弾道ミサイル想定の避難訓練
東京・文京区、弾道ミサイル想定の避難訓練 - Sputnik 日本
22日、日本政府のイニシアチブにより、東京ドーム周辺で弾道ミサイル落下の可能性を想定した避難訓練が行われ、約350人が参加した。同種の訓練はこれまでも日本各地で行なわれてきたが、都心部で行なわれたのは初めてであり、国内外の注目を集めた。また、訓練に反対する市民グループは「外交で戦争を防げ」などと主張し抗議活動を行った。この訓練をどう受け止めたか、3人の専門家に話を聞いた。

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戦時中の空襲時の避難の実態について研究していた弁護士の大前治氏は、「意味のある訓練ならばするべきだが、今回の訓練はメディアに見せるためという印象を持った」と指摘し、危機管理体制に懸念を示している。

東京・文京区、弾道ミサイル想定の避難訓練 - Sputnik 日本
東京・文京区、弾道ミサイル想定の避難訓練
大前氏「訓練とは、参加者が状況を把握した上で、一定の目的にたって整然と訓練するのか、あるいは、一人ひとりの状況判断能力を見につける訓練なのか、目的化されているべきだと思います。ところが今回の訓練では、ミサイル落下ということ以外何も特定されていませんでした。どこにどんなミサイルが落ちて、どのような被害が発生し、どう身を守るべきか、主催者側にも参加者側にもわからない状態で実施されていました。参加者は『こちらに逃げてください』という誘導があったから逃げましたが、本当にミサイルが落ちたときに案内してくれる人はいないはずです。実際の危機の際にどう行動するか、判断力・行動力をつけるという訓練にはなっていませんでした。そこが一番の問題です」

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実際、昨年12月13日に発表された、Jアラートを受信した12道県を対象にした「北朝鮮によるミサイル発射事案に対する住民の意識・行動等についての調査」では、アラートによって何をすればよいか理解はしたものの、実際に避難はしなかった(できなかった)、又は避難しても意味がないと思った人が多かった。

しかし、避難に意味がない、と言うことはできない。ミサイルは地震と異なり、被害が局地的だという特徴がある。爆風、熱、瓦礫の飛散状況などは数十メートル単位で異なってくるので、ミサイルが爆発した地点からどのように逃げていくのかは、生死を分けるポイントになるだろう。大前氏は「音や煙をわざと発生させて、目で見た限りの状況に対処する訓練をすれば良かったのではないか」と話している。

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ロシアの軍事研究家で政治学者であるドミトリー・ヴェルホトゥロフ氏も、核ミサイルの破壊力は有限であるため、避難訓練実施はそれなりに意味があると考えている。

ヴェルホトゥロフ氏「例えば20キロトンの核爆発(広島型原爆に相当)が起こった場合、爆心から900メートル圏内にいる人は爆風で致命傷を受けます。しかし、爆心から2300メートル離れれば、爆風が人間にとって危険ではないレベルまで弱まります。つまり核ミサイルの破壊力は無限ではなく、東京のような大都市全体を破壊することはできません。そう考えれば、Jアラートもありますし、すぐ逃げられるようにするための避難訓練はある程度、意味があると思います」

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一方、NHKやTBSなど日本のメディアで勤務経験があるロシア高等経済学院のアンドレイ・フェシュン准教授は、今回の訓練の目的は世論に影響を与えることだと考えている。

フェシュン氏「北朝鮮と韓国がオリンピックについて複数の合意を達成し、日本にとって北朝鮮の脅威が低下したタイミングで訓練が実施されたことに驚きました。また、日本政府が避難訓練の指示を出したことは、国が今後も国民を怖がらせるための『怪談』として北朝鮮を利用する方針だということを物語っています。これは、下がり続けている安倍首相の支持率を維持するためのものでしょう」

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ミサイル落下想定訓練をめぐっては、これまでも日本各地で様々な市民グループが抗議行動を起こしたり、訓練中止の申し入れをしてきた。訓練計画では「X国から弾道ミサイルが発射されることを想定」となっているが、反対派は「北朝鮮を仮想敵国とみなしているのが明らか」だとして批判しており、都内の抗議行動には約60名が参加した。

フェシュン氏「日本国民の中には非常に強く、時には人為的に、反北朝鮮の機運が生み出されています。それにもかかわらず、北朝鮮との対話を今後も続ける必要性をオープンに訴える人々が現れました。彼らは、北朝鮮が事実上、軍事行動を停止しているときに、隣国である北朝鮮を刺激するべきではないという自分たちの危惧を表明しました。このことは、現在の日本人の意識の中に、リアリズム、そして米国が北東アジアの緊張を維持するために北朝鮮を利用しているという理解が存在している証拠であると考えます」

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