16:01 2019年04月23日
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閑話休題:金平キャスターに気をつけて

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塩原俊彦
筆者 塩原 俊彦
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17日のTBS・報道特集を見ていると、金平茂紀キャスターがまたやらかした。モスクワ特派員も務めたこともある彼はロシア通と「世間」では目されているかもしれないが、筆者からみると、「悪質なディレッタント」にすぎない。

彼は日ロ首脳会談をめぐる報道を、シリア、ウクラライナ、サイバー攻撃に関連づけてプーチン大統領を暗に批判する発言で締めくくった。視聴者の多くは「プーチン=悪者」といった見方を当然と受けとめたかもしれない。

だが、こうした安直な見方がマスメディアの信頼を損ね、そうして蓄積した鬱屈が米国ではトランプによる既成のマスメディア批判として盛り上がり、ひいては彼を大統領にまで押し上げてしまったのではないか。

REINAと同じレベル
ここで「閑話休題:REINAとの会話の問題点」でも指摘したことを思い出してほしい。

「「今日のニュースとして、CIAがクリントン大統領候補のメール問題でロシア側がハッキングを行っていたと正式に発表しましたが、この問題についてどう思うか」といった質問をREINAはしてきた。このときに痛感したことがある。それは、国際対立には双方の言い分があり、一方だけの言い分に偏ってはならないということだ。彼女はそんな基本をまったく知らないらしい」というのがそれである。

金平は米国よりの主張が正しいと信じて、一方的に米国寄りの視点からロシアを批判している。しかし、これが間違いであることは明らかだろう。少なくとも国際対立においては、別の立場もありうることに配慮しなければならない。

笑止千万な金平の批判
シリア問題の根幹には、欧米の軽薄なメディアが勝手に名づけた「アラブの春」があることは明らかだろう(アラブ人にとって短い春は真夏の不吉な前兆にしかすぎない)。SNSが民主化を促したとして、こぞって「春」という新しい芽吹きを歓迎する報道をしたマスメディアが大きな間違いをしたことはだれにも明らかだろう。

そもそも民主化とか民主主義がたいしたものではないことは拙著『官僚の世界史:腐敗の構造』のなかで詳述している。

外部から民主化を促すためにカネを使い、暴力的なクーデターに近い煽動を操っていたのは米国政府だ。その結果、真に民主化した国はあっただろうか。

イスラム国の侵入を許したり、内戦が激化したりして避難民が激増した。なにより、何十万人もの人々が死傷した。その原因をつくり出した米国政府を批判しなければならないということを金平は忘れたのか。

ウクライナ危機はこの「アラブの春」とまったく同じ構図のもとに、米国政府の煽動によって引き起こされたことは拙著『ウクライナ・ゲート』や『ウクライナ2.0』のなかで詳述した。金平のことだから、こうした本を読んだことがないのであろうか。

プーチンとサイバー攻撃を結びつけた金平の批判も笑止千万だ。この人はスノーデンが暴露した米国政府の諜報機関が内外問わず繰り返している不法行為について忘れてしまったのか。そのスノーデンをプーチンがかくまっている事実をどう感じているのだろう。

筆者は「サイバー空間と国家主権」という論文を学術誌『境界研究』に書いたことがある(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/JapanBorderReview/no5/pdf/02.pdf)。この論文は筆者の100を超す論文のなかで出色の出来と思っているものだが、これでも読んで「サイバー空間」における主権国家間の権力構造を学んでほしい。

筆者が恐ろしいと思うのは、金平はこうした報道を繰り返してきたという「前科」があることだ。井沢元彦の連載『逆説の日本史』のなかで、北朝鮮の打ち上げたミサイルを人工衛星だったと強弁したのがこの金平だと実名をあげて厳しく非難している。

『ロシアの軍需産業』という岩波新書や『「軍事大国」ロシアの虚実』という単行本(岩波書店)、さらに『ロシアの最新国防分析』(Kindle版)を上梓してきた筆者に言わせれば、軍事問題についてあまりにも無知な人物が公共の電波を使って虚言を吐いてきたことに恐怖さえ覚える。

正義を哲学せよ
拙著『官僚の世界史』では、腐敗問題を論じながら、正義の問題を考察している。腐敗だと糾弾するには、当該行為がある倫理や道徳や法律に反していると判断する過程が伴うからである。したがって、この本で筆者が行ったのは、「正義はどのようにして正義とみなされるようになるか」であった。そこで痛感したのは、正義が現在、主権国家に牛耳られてしまっているという現状の深刻さである。

ゆえに、筆者はオバマにもプーチンにもトランプにも批判的である。あるいは安倍晋三にも。彼らはみな、主権国家を当たり前として受けいれ、主権国家の利害に基づく正義に疑いをいだいていない。金平も同じである。だからこそ、彼らはどちらか一方の立場を正しいとみなして一方的な態度をとることになんの嫌悪も感じていないのだろう。

国家にとって正義であることが人類にとって正義であるとはかぎらない。ある国の正義が別の国の正義になるとも言えない。それぞれの国家が自らの正義を、義務教育を通じて国民を洗脳し、歪んだ正義をつくり出す。そうした主権国家の問題点に気づいてほしい。

図式的に言えば、国家が大好きなのは左翼も右翼も同じだから、筆者の見解は左翼からも右翼からも嫌われている。だがこうした連中に言いたいのは、「もっと勉強しろ」ということだ。『官僚の世界史』でも読んで、「正義を哲学し、歴史を哲学せよ」と言いたい。とくに歴史をよく学んでほしい。そして、ちょっと掲載が遅れてしる「ロシア革命100年の教訓」も。

本当はこんな「閑話休題」を書くつもりはまったくなかった。だが、金平の発言の悪辣さに驚愕した筆者はあえて厳しく彼を批判するブログを書かざるをえなくなった。くれぐれも「金平キャスターに気をつけて」。

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