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    「全世界が先が読めないというレアなケース」 元駐露韓国大使が北朝鮮問題を語る

    「全世界が先が読めないというレアなケース」 元駐露韓国大使が北朝鮮問題を語る

    © REUTERS/ KCNA
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    朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)問題の歴史はどうやらスパイラル状に発展しているらしい。今回、機密が解かれたデーターによれば、1994年、北朝鮮が初めて国際原子力機関(IAEA)の核施設への査察を拒絶し、同機関を脱退した後、クリントン米大統領とペリー国務長官はヨンビョンの原子炉へミサイル攻撃を行う可能性を検討していた。ところが攻撃を行った場合の影響を分析したところ、これは全面的な戦争に発展しかねず、そうなれば米韓軍は多大な損失を蒙り、民間に出る犠牲も莫大になることが示された。これを知ったクリントン大統領は攻撃のシナリオを反古にした。

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    そして今、このシナリオに戻ったのがトランプ氏だ。トランプ米大統領はアジア歴訪枠での訪日で、安倍首相と話し合い、北朝鮮に作用するあらゆる手段が行使可能であり、軍事行為も除外しないことで意見が一致した。交渉で日本側は一方的な対北制裁の拡大を約束し、米国も日本が北朝鮮のミサイルを撃ち落とせるよう、最新の兵器の供給拡大を約した。

    韓国でトランプ氏は文大統領とそろって両国が対北朝鮮で圧倒的な軍事的有利を土台に独自の戦略を構築することを宣言した。一方で韓国は自国との前提的合意のない米国からの一方的な軍事行為についてはあらゆるものに反対することを明示した。

    朝鮮半島の軍事シナリオが孕むあまりに大きな危険性について、元駐韓ロシア大使で現在ロシアAPEC調査センターの副所長を務めるグレブ・イヴァシェンツォフ氏は、ロシア戦略調査研究所と国民大学校付属ユーラシア調査研究所がモスクワで行った学会の中で指摘している。

    「ロシアは北朝鮮を核大国として認めておらず、このところの北朝鮮の行為は煽動であり、北東アジアの安全保障に脅威をもたらすものと認識しているが、その一方で『ピンポイント』など、あらゆる攻撃、制裁ないしは圧力をかけることで問題は解決できないという立場に立脚している。

    トランプ氏は北朝鮮の核ミサイル施設への『ピンポイント』攻撃を口にするが、これでさえ実際は新たな朝鮮戦争を誘引し、南北朝鮮にとっても北東アジア地域にとっても、世界全体にとっても予測不可能な結果を引き起こしかねない。

    これに代替するのが北朝鮮との対話で南北朝鮮とロシア、中国、日本、米国が参加して安全保障の保証を話し合うことになる。国連安保理の制裁決議は強硬だ。だがこれがゆえに北朝鮮国民の経済、人道状況が緊迫したととらえてはならない。北との対話は絶対に必要だ。だが最後通牒としてではなく、緊張緩和を目的としたものでなければならない。」

    これに対してロシア、中国での駐在経験のあるリ・ギュヒョン元大使はスプートニクからのインタビューに対し、新たな戦争についての話は行われているものの、北朝鮮問題を平和的な方法で解決しようとする韓国の意向は固いとして次のように語っている。

    「金正恩氏が2011年政権の座に就いて以来、4度の核実験および10発のミサイルが発射された。しかも彼はこの先の発射実験を完了させようとしている。同時に北朝鮮は国際法に違反し、露米という世界最強の2国の警告を無視している。これは健全な思考から見ると説明がつかない行為だ。

    北朝鮮は何を軸にしているのか理解に苦しむが、これは非常に危険だ。我々(韓国)にとって最も重要なのは軍事的解決を許さず、対話を通じて行動することになる。今はいかなる事の発展も誰にも保証の限りではないが、韓国政府は煽動を回避するためにあらゆる手段を尽くしている。」

    スプートニク:北朝鮮指導部は自国を守る「安全の盾」として核ミサイルプログラムを正当化しているが。

    リ・ギュヒョン氏「彼ら(北朝鮮)には核保有が自分たちの生存の保証だと思えるのだが、実際はそうではない。自国民の福祉を犠牲にして核プログラムに専心するといった道はどこにも導いていかない。国の安全のためだというならば、わかった。六か国会議に参加する各国が北朝鮮に安全を保障する構えだ。その代わりに彼らには核プログラムの停止が要求される。

    だがそうはいかない。彼らは核プログラムを発展させ、これが彼らの生存を唯一保証する手段だという幻想に生きたいのだ。おそらくこの国は独自の核ミサイルプログラムをこの先も発展させ、それによって状況をさらに緊張化させるだろうとおもう。

    金正恩氏が予測不可能であることを考えると、我々としては状況がどう展開してもそれに対応できる準備がなされていなければならない。そしてこれは全世界がこの先どうなるかわからないという、本当にレアなケースであり、ジレンマだ。

    北朝鮮に対しては国連はすでに全会一致で9つの決議を採択したが、どれひとつとして効き目がなかった。そして今、人々は北朝鮮にいかに不公平で悪い行為を起こさせぬようにしても、その結果、多くの国が犠牲になりかねないと考えている。ロシアをはじめとする平和を愛する国々は北朝鮮になんとかして作用せねばならないと思う。なぜならこれは国際レベルの問題だからだ。」

    スプートニク:つまり韓国市民は実際に戦争の恐怖を感じているのか?

    リ・ギュヒョン氏「韓国に来る外国人は北朝鮮という度を越して落ち着きのない隣人がいるにもかかわらず、韓国民はあまりに落ち着いていると驚く。実際、我々は1993年から95年、北朝鮮の核ミサイルプログラムが開始されたときに、すでに我々の中で危険という感覚は根付いてしまった。敵を血の海に沈めてやるというような北朝鮮の指導者のレトリックに慣れてしまったのだ。このため一見落ち着いているように見えるが、韓国民は危機感を抱きつつ暮らしている。それは今の北朝鮮のリーダーがかなり予測不可能な人物だからだ。

    これは我々にとっては大きな悲劇だ。なぜならば他の諸国とは異なり、韓国は単に北朝鮮と国境を接しているだけでなく、この痛みを鋭く受け止めているからだ。なぜなら朝鮮半島の後、何百万もの家族が離れ離れになり、今も数万人の韓国民が北に親戚を持っている。北に暮らす妊婦、子ども、若い世代の健康状態を我々は本当に心配している。北朝鮮指導部が拒絶しようと、我々は救いの手を差し伸べたい。

    韓国政府が800万ドルもの人道支援金を北の妊婦や子どもに拠出したのはれっきとしたわけがある、今の韓国政権は前政権と同様、政治、外交、軍事などの問題と人道面を分けて考えようとしている。我々が最も望むのは北朝鮮が国際社会のノーマルな一員となることなのだ。」

    文大統領は今年7月、いわゆる「ベルリン構想」を発表。これによって朝鮮半島における非核化と平和樹立の構えを表した。文氏自身、脱北した避難民の家庭に生を受けている。文氏の信条は次のように表されている。「朝鮮半島の南北は同胞であり、同じ言語を喋り、五千年間も同じ文化に育ってきた。このためどんなに困難で苦しい道であろうと、朝鮮統一は定めである。…そして我々はこの定めを守らねばならない。」これが実現するとはとても言い難いが、今一番大事なのは戦争を回避することだ。

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