15:47 2020年10月24日
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菅義偉首相が安倍前首相の政治路線を引き継いでいくとの考えを明らかにしたことに関連し、専門家らは菅首相の外交は安倍首相に比べてより柔軟なものになるだろうと見ている。菅新首相は拉致問題解決の糸口を見出し、その他の懸案事項を解決することができるのだろうか。スプートニクが、日本の政治学者(国際関係論・北東アジアの安全保障・朝鮮半島の政治外交専門)の伊豆見元氏にお話を伺った。

菅新首相と安倍政権との政策の継続性について

伊豆見氏は、安倍前首相の政策を継承しながらも、菅政権の下で北朝鮮や韓国との関係が変化する可能性はあると指摘し、次のように述べている。

「菅氏は安倍政権の政策の継続性を強調しているが、最近の発言を見ていて明らかなのは、安倍政策の特徴のような所謂『安倍カラー』は必ずしも同じではなく、むしろ『安倍カラー』みたいなものは少し薄くしていくことが考えられる。

例えば、憲法改正の問題がある。憲法改正に対する安倍氏の熱意は強かったが、それと比べたら菅氏はもっと淡白というか関心が低い。それと同じことがすべての分野について言えるはずだ。

対韓国政策、対北朝鮮政策もベーシックな部分では同じであっても、安倍氏とまったく同じになるということはない。これが第1点。ただ変化の可能性はもちろんある。第2点で重要なことは、いま韓国に対する政策も北朝鮮に対する政策も対外政策の中で優先順位が低いということだ。それは、大事なのは先ず米国との関係であり、次が中国との関係であり、あるいはロシアがその次に少し入り、韓国と北朝鮮はその次にしか入らないからだ。」

菅首相の最大の目標と日朝関係・日韓関係の展望

伊豆見氏は、菅首相は来年も総理、総裁に選ばれることを望んでいると見ており、次の選挙までの菅首相の主要課題は、極めて安定した政権を維持することだと指摘する。

「そうすると、その観点から来年の9月までの間に何をすべきか、すなわち9月以降も総理、総裁が続けられることが最も重要な政治的目標になっていくということになると、ますます対韓国政策や対北朝鮮政策の優先順位は低くなる。韓国との関係改善あるいは北朝鮮との関係改善、あるいは拉致問題の解決がこの1年の間にドラマチックに大きく変わる可能性はない。もう少し時間がかかる話になる。そうすると、変化はもちろんあり得るが、特にこの1年で菅政権が韓国や北朝鮮に対して何かイニチアチブを取るという可能性は非常に低いと思う。」

しかしこれは、朝鮮半島の国々との関係において、なんの進展もないというわけではない。とりわけ、韓国に関しては、今年8月初旬に韓国最高裁が決定した、差し押さえ株式の「現金化」の手続きが今年中に完了する。伊豆見氏は、韓国政府がそれによるダメージを抑えるためになんらかの措置を講じなければ、日韓関係はさらに悪化する可能性があるとの懸念を示している。

「『現金化』の手続きが複雑であるため、早くて今年の12月ぐらい、遅くても来年の春までには現金化すると思う。そうすると、そこで変化が生じる。日韓関係は今よりもかなり悪化する可能性がある。どうしてかというと、韓国政府が現金化を認めるのであれば、日本政府は違法、不法なことだということで必ず報復するはずだからだ。それは菅政権であっても同じであるため、現金化に対して日本は何らかの報復を行う。

その時点でもし韓国政府が譲歩して現金化した場合、そこを韓国政府が補償する、韓国政府がお金を払う、買い取るというようなかたちで日本企業が完全なダメージを受けることがないような手段はやろうと思えばできるため、韓国政府が譲歩してお金を出して日本企業にお金を出させないようにするという手段に出れば悪化しない。その可能性が今ゼロではないため、そういう期待感は日本側には多少あると思う。もし韓国の文在寅政権がそれをやらなければ、来年の春に日韓関係が『今よりも』緊張、悪化することは避けられないと思う。」

実際、このような理論は北朝鮮との関係にも当てはまる。もし北朝鮮自身がなんらかの譲歩をしなければ、日本側からそれを期待することはできない。しかしながら、伊豆見氏は、菅首相は安倍前首相よりも柔軟な対応をすることができるとの見解を示す。

「なぜかというと、15日の段階で公明党と自民党の間で連立政権をつくる合意をした。毎回選挙が終わって新しい内閣ができるとそういった合意をするが、前回までは北朝鮮に対して極めてタフな姿勢を取る、北朝鮮の核問題、ミサイル問題、拉致問題を解決するために、具体的には『毅然たる態度』という言葉を使っていたと思うが、このような姿勢をとるというのが公明党との連立政権の合意の中にあった。しかし今回は特に具体的にそういったことは言っていない。そのため安倍政権と比べて菅政権は少しタフな姿勢がトーンダウンしている感じがあり、少し『安倍カラー』みたいなものからするとトーンダウンするというのがこの点についても言えると思う。しかしそうなったからといって、北朝鮮が喜び、日朝関係が動き出すということは特にないと思う。来年の9月ぐらいまでの1年を考えた場合、動きはあまりないのではないかと思う。菅政権にとっての朝鮮問題の意味というのはやはり小さいというか、軽いというか、低いといったものになると思う。」

しかし、先ほど菅氏は拉致問題に関して北朝鮮の「金正恩朝鮮労働党委員長と条件を付けずに会って活路を切り開きたい」と発言していたが、これは本気ではないということになるのか?

この問いに対し、伊豆見氏は次のように述べている。「その立場は維持するということだと思う。すなわち無条件で金正恩氏と会う用意があるということは言えると思う。しかしこれは絶対に実現しない。安倍政権の時からわかっている。無条件で会う、しかしもし会ったら拉致問題について優先的に話すと言っているわけなので、これは無条件ではない。拉致問題についてサミットで会おう言っているのと同じであるため、北朝鮮は絶対にやらない。日朝正常化の問題で首脳会談をやろう、その中の1つの議題が拉致問題というなら北朝鮮は考えると思うが、そういうことではない。無条件で会うというのは、無条件で会って拉致問題の話をしたいと言っている意味になるので、北朝鮮が受け入れる可能性はゼロだ。それは安倍政権の時からわかっている。だから菅氏も同じように無条件で金正恩氏と会いたい、そして会って拉致問題を解決したいと言っているわけなので、可能性はまったくない。だから動きは何も出ないと思う。」

さらに伊豆見氏は、日朝関係、日韓関係におけるあらゆる肯定的な変化には、米中関係の安定が前提条件となると強調している。米国の大統領選でバイデン氏が当選すれば、新大統領との関係構築が必要となることを意味する。そしてその場合、日本は中国との間で、安倍前首相が習近平国家主席を国賓として日本に招待しようとしていた肯定的な段階に戻ることが重要となってくるのである。

「この対中問題をうまく処理し、対米関係も安定、対中関係も安定しているというのが現実になれば、その後、韓国との関係をどうするか考える余裕が少し生まれると思う。だが今はどうすれば韓国との関係を改善することになるかということはあまり真剣に考えることができる時期ではないと思う。どうしてもそれは重要な問題ではない。」

「アメリカ・ファースト」のトランプ政権と日本の関係、日米韓の関係などについて

一方、日米韓連合の存在を考慮すれば、日韓関係はより良好であることが望ましいのではないかと思われる。というのも、アジアのこの2カ国は、米国と協力関係にありながら、共通した問題に直面しているからである。とくにトランプ政権下で「アメリカ・ファースト」政策はさらに強化され、このことは米国と世界の多くの国々との関係にも反映されている。日本は自国領内に米国の地上配備型ミサイル迎撃システムの配備を断念することになり、これにより、日本は米国との貿易交渉において、米国の弟分的存在として、相当な譲歩をすることになり、困難な状況に置かれている。

「バイデン政権になってもかなり『アメリカ・ファースト』になると思う。とりわけ経済関係については、今までの流れで言うと民主党政権のほうが日本に対する要求が強い。貿易の面でも、自由主義的というよりも保護主義的というか、米国の利益を保護するために日本に要求を出している。

その部分で日本に対する米国の要求が高くなるという議論はずっとされてきた。米国に対して仕方がないなと、それを前提にどう対応するかということを考えなければいけならず、それは菅政権でもまったく変わらない。そのような条件のときに他の米国との関係を考えた場合、良いパートナーを他で見つける、あるいは増やしていくということになると、もちろん韓国もそのターゲットになる可能性はある。米国との関係において同じ関係を抱え、同じく米国の同盟国だからだ。日本も米国の同盟国であり、米国からかなり強い要求をつきつけられる点でも同じだ。したがって非常に立場は似ており、抱えている問題も同じということになる。」

弾道ミサイル防衛用の陸上配備型「イージス・アショア(Aegis Ashore)(アーカイブ写真)
© 写真 : U.S. Army Corps of Engineers Europe District
しかしながら、伊豆見氏は、これも日韓の接近を促すものではないと見ている。伊豆見氏によれば、

米国に対して韓国と日本が抱えている問題は同じで、同じ立場におり、本当は協力するのが一番いいはずだが、協力したほうがいいという議論は日本側にもほとんどなく、何より韓国にない。また伊豆見氏は、日本はおそらく、米国とは逆に、ヨーロッパ諸国、そしてインド太平洋構想の関係国との関係の構築を目指すだろうとの見方を示し、さらに次のように述べている。

 「しかし、そこで今、韓国との密接な協力という考え方は日本側にはないと思う。それは日本側にないというよりも、先ず韓国がそれを望まないことははっきりしている。その点でのパートナーは、むしろ1つは安全保障上の三本柱で日本、米国、韓国というよりも、インド太平洋の構想という観点からすると今重要なパートナーは明らかにインドとオーストラリアだ。そっちのほうがより重要だ。あるいは経済的な米国の保護主義的傾向、あるいは米国の同盟国に対する非常に強い要求を考えると、韓国もそうではあるが、ただ欧州でも同じ問題を持っており、英国もフランスもドイツも同じだとすると、むしろそっち、とりわけ英国との関係を深めて英国と一緒になって米国の要求にどう対応するかということを考えるかということだ。やはりそこは韓国ではない。」

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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韓国, 日本
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