00:39 2021年09月26日
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ロシアのプーチン大統領は、クリル諸島の経済活動に日本を誘致するという「ユニークで前例のない」提案を発表した。

スプートニク通信社は、ロシアの専門家に、ロシア政府が日本のビジネス界にクリル諸島でユニークで有益な何かを本当に提案できるのか、そして日本政府がロシアとの領土に関する議論を忘れてそれを受け入れる準備があるかについて尋ねた。

先日、ロシアのミハイル・ミシュスチン首相がクリル諸島を訪問。この訪問は、同地域におけるここ数年先の開発に関して経済面での提案を直接説明するためのものだった。

ユニークな提案

ミシュスチン首相によると、この地域に自由な関税領域の体制を導入する可能性が検討されている。

ロシア政府は、クリル諸島で働く経営者や地域経済に投資する企業の税金を免除する案を検討している。これは、所得税、付加価値税、財産税、土地や交通にかかる税金を指している可能性がある。ミシュスチン首相は、このような措置がクリル諸島の経済活動を促進し、日本を含む外国のパートナーが興味を持つようになると提案している。

しかし、(スプートニクの取材に応じた)ロシアの専門家らは、日本の資本が係争中の島々に来ることについて楽観的な評価は示していない。

利益に基づく提案の時期は過ぎた

モスクワ国際関係大学東洋学科長のドミトリー・ストレリツォフ氏は、日本がクリル諸島に関して、経済的な利益や利潤のみに基づいた現実的な道を歩むとは考えていない。「日本側は、安部首相の時代にプーチン大統領と係争中の島々での共同経済活動の提案について協議した。当時は確かに(小さいながらも)希望があり、それは経済的なメリットからくるものではなかった。それは正に副次的なもので、両首脳がこの道を平和条約締結の可能性に結びつけていたからだ。しかし、現在の日本政府はその点では幻想を抱いておらず、(ロシアの憲法改正により、領土の奪取が禁じられているため)クリル諸島の問題の早期解決を望んでいない。そのため、クリル諸島でのロシア人との共同経済活動のプロジェクトへの関心は完全に消えてしまった」。

しかし、ドイツの例をみれば、日本の経済界はクリル諸島に対する「経済的無関心」を克服できるかもしれない。ドイツは、周知の通り、「ノードストリーム2」計画実現に対する米国側からの非常に大きい抵抗を打ち破ることに成功している。ドイツ政府は、この計画はEUのエネルギー安全保障にとって、経済的に極めて有利だと考えているからだ。

「ノードストリーム2」計画は、ロシアのガスがウクライナを経由するルートに代わるものとして考案された。ロシア政府とウクライナ政府は(2014年のウクライナ騒乱をきっかけに)難しい関係にある。この状況は、ロシア産のガスが欧州に途切れることなく供給される点において、一定のリスクをはらんでいる。米国はこの計画を特に政治的なものと見なしており、パイプラインの建設を止めるためにロシアに強力な制裁を加えている

ドイツは、政治的なリスクや米国との関係が損なわれる恐れがあるにも関わらず経済的な利益の方を選択した。そして「ノルドストリーム2」は、今後数週間以内にも稼働する。

そしてクリル諸島において、日本政府はそれほど現実的になれるだろうか?

経済的利益が政治的ダメージを上回らない

ロシア科学アカデミー極東研究所の日本研究センター長、ヴェレリー・キスタノフ氏は、日本人は経済問題においてはドイツ人と同様に非常に合理的だが、クリル諸島に関しては、日本人にとっての経済的利益はそれほど明確ではないと指摘する。「(2016年に安部首相がソチでプーチン大統領と会談を行って以降)5年間にわたり、クリル諸島で日本とロシアが共同で経済活動を行う5つの分野が提案されている。その分野とは漁業、果実・野菜の栽培、グリーンエネルギー、観光業、ゴミのリサイクルだ。しかし、その計画は計画のままになっている。それは係争中の島々で協力を行うということが、ロシアの主権を認めることになるのではないかという日本の懸念からだけではない。それよりももっと平凡なものだ。クリル諸島におけるプロジェクトの経済的利益は、日本政府の領有権主張による「重荷」を上回るものではないのだ」

キスタノフ氏は、日本の首相が長年の方針である係争中の島々の返還を放棄した場合の「政治的ダメージ」は、首相の支持率を文字通り低下させる可能性があると指摘する。

またキスタノフ氏は、より利益の高いプロジェクトに関しては、平和条約の不在や領土に関する議論がある状況下でも、露日間の経済協力の障害とならないだろうと指摘している。「例えばソ連時代、ソ連産のエネルギー資源の購入に日本人は全く困惑することはなく、代わりにソ連にパイプを供給し、世界最長の石油パイプライン『ドルジバ・パイプライン』を建設した。日本は現在ロシアのガスを必要としており、そのため極東のサハリンや北極圏ヤマル半島のエネルギープロジェクトに投資している。しかし、クリル諸島での提案はその規模に達していない。係争中の島々での共同経済活動は、露日関係において良好な環境を作り出すためにこれまで議論されてきたということが非常に明らかなのだ。実際、安部首相の時代における日本の政策の最大の目的は、領土問題でプーチン大統領を譲歩させることだった。」

キスタノフ氏は、韓国や中国の投資家がクリル諸島にやってくることにも懐疑的だ。

クリル諸島は豊かな漁業資源で知られている。しかし、ロシアにおけるアジアのパートナーは、クリル諸島の漁業に近代的なインフラを整備するための投資にほとんど興味を持っていない。キスタノフ氏は、結局、彼らは物質的な投資をしなくても、ロシア産の魚介類を低価格で購入することができ、それらはクリル諸島から(最も近い国の消費者の食卓に)最短時間で届けられていると指摘している。

以上のことから、ロシアの専門家らの間では、(プーチン大統領が発表した)クリル諸島に関する「ユニークで前例のない」提案は、外国人投資家よりもロシアのビジネス界にふさわしいものだとみている傾向がある。

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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