宗教問題が理由ではない岸田総理の内閣改造

© AP Photo / Rodrigo Reyes Marin岸田総理の内閣改造
岸田総理の内閣改造 - Sputnik 日本, 1920, 13.08.2022
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大きな物議を醸している宗教団体「統一教会」と政治家らとの関係が続々と明らかになる中、日本では内閣改造が行われた。1954年に韓国の宗教家、文鮮明(ムン・ソンミョン)が創始し、1997年に世界平和統一家庭連合と改称された教団は、現在も世界の多くの国々に支部が置かれている。この教会は、複数の国で、破壊的、全体主義的カルトと位置付けられているが、一方で、「統一教会」によって創設された国際的な社会団体「世界平和連合」や「世界平和女性連合」などの関連団体は、国際連合経済社会理事会との総合協議資格を有している。
今回の日本の内閣改造は、安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件の1ヶ月後に行われた。安倍氏は、長年にわたる一族の「統一教会」との関係の犠牲者となった。
安倍元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者は、犯行の動機について、自身の母親が入信し、家庭の資産のほとんどを献金していたこの団体と安倍氏に深いつながりがあると思ったと説明している。容疑者は、2021年の9月に安倍元首相が「世界平和統一家庭連合」のイベントにビデオメッセージを送ったという情報をインターネットで見つけたという。
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8月10日に「世界平和統一家庭連合」の田中富広会長は記者会見を開き、安倍氏と教会との関連性を否定したものの、安倍氏がそのようなメッセージを送ったことはあると証言した。それは、安倍氏が世界各国の首脳らとともにメッセージを送り、平和を目指す世界的な動きを支持すると表明したものであった。こうした動きを受けて、岸田総理は、すべての閣僚に対し、国民から疑念を持たれるような関係を断ち切るよう呼びかけた。
今回の内閣改造における最大の人事異動となったのが、安倍元首相の弟で、過去の選挙において、「統一教会」のメンバーから支援を受けたことを明らかにした岸信夫防衛大臣の国家安全保障問題担当総理大臣補佐官への起用である。
しかし、「朝日新聞」によれば、新内閣の少なくとも5人の閣僚が、「世界平和統一家庭連合」と「接点」があるという。
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日本のメディアが、「統一教会」と何らかのつながりを持っている政治家として挙げている1人が、厚生労働相に起用された加藤勝信氏である。加藤氏は、自民党の内閣官房副長官時代に、2度にわたって、「世界平和統一家庭連合」の関連団体に懇親会費の支出を指示した。また加藤氏は、「統一教会」と関係が深いとされる新聞、世界日報からのインタビュー取材に応じていたことも明らかになった。
加えて、今回、総務相に任命された寺田稔氏も、「統一教会」の関連団体である「国際勝共連合」に会費を支払っていたことが指摘されている。
また、経済再生担当相に留任が決まった山際大志郎氏も、「統一教会」の友好団体への催しへの出席や会費の支払いを認めた。
さらには、外相に留任することになった林芳正氏も、当初は教団の友好団体とのつながりを否定していたが、2012年に「世界平和統一家庭連合」と密接な関係がある機関からの取材に応じていたことがあることを認めた。林氏は、「関連があるという認識がなかった。大変申し訳ない。今後は一切関係を持たないことをお約束する」と謝罪した。
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日本のメディアは衆議院議長を務める有力議員である細田博之氏にも注目し、細田氏が「統一教会」が深く関係する団体「世界平和議員連盟」の名誉会長を務めていると報じた。2019年に細田氏は、「統一教会」と直接関連がある団体、天宙平和連合(UPF)が名古屋で開催した国際会議に出席し、挨拶の中で、その意義は大変深いと述べていた。
また細田氏の衆院選で選挙対策責任者を務めてきた人物が「統一教会」と深いつながりのある有力団体の議長だったことも分かった。こうしたことから、日本のメディアは、細田氏は「岸田政府」にとって、「最大のリスク」であると指摘している。
タブロイド判夕刊紙「日刊ゲンダイ」は、異なる年代に、「統一教会」およびその関連団体の行事に参加したり、祝辞を送ったりした閣僚や元閣僚、党指導者の数は100人以上にのぼると伝えている。
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一方、旧「統一教会」との関係を維持しているのは日本の政治家だけではない。
文鮮明氏は、数十年にわたって、世界各国の政府高官らと交友関係を持っていた。こうすることで、社会的地位のある活動家としての名声を得ようとしたものと思われる。文鮮明氏は米国のリチャード・ニクソン元大統領やソ連のミハイル・ゴルバチョフ元大統領とも会見した。
また最近の「統一教会」系のイベントには、米国のドナルド・トランプ前大統領も出席している。「統一教会」の代表者らが、スリランカ大統領のパーティに参加したり、国連本部で催しを行ったり、英国をはじめ、各国の議会で発言するということもあった。
また2011年、「統一教会」は台湾から優秀宗教団体特別賞を授与されている。
さらに付け加えておくべきは、文鮮明氏は多数の企業や団体を立ち上げて巨大なビジネス帝国を築きあげ、巨額の利益を得ていた。しかし、コリア・タイムスによれば、教会は主として、世界でももっとも信者数が多く、もっとも熱心な会員が多い日本からの献金で維持されていたという。
苦しんでいる人 - Sputnik 日本, 1920, 16.07.2022
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一方、多くの人々が、「統一教会」の活動は破壊的であると考えているものの、文鮮明氏が行った事業には、貧困国への食糧支援から教育センター、医療機関、文化財団の創設など、人道的なものも多い。たとえば、1978年には東京で、西洋医学と東洋医学を一体化させた一心病院が開設された。
文鮮明氏と「統一教会」の活動について、ロシア科学アカデミー欧州研究所、宗教社会問題研究センターのロマン・ルンキン所長は、「スプートニク」からの取材に対し、2012年に文鮮明氏が亡くなるまで、「統一教会」はキリスト教、仏教、そして世界のあらゆる宗教の教えを統一させることに集中していたと指摘し、次のように述べている。
「教団は、少しずつ、その存在を各国に広げ、掲げる目標をも拡大し、ますます世界的な団体となっていきました。信者たちは、世界平和、全宗教の統一、家族の大切さというものをもっとも重要なものとしています。国連に正式に登録されている「統一教会」が創設した社会団体も、平和と安定的発展のための対話をはじめとする教会の原則に同意しています。こうした考えはすべての政治家、すべての企業家が賛同するものであり、なんら非難されるべきことではありません。というのも、この教団の信者たちも有権者であり、もし安倍晋三氏の悲劇的な事件が起こっていなければ、今回のような騒動にはなっておらず、日本の政治家たちも、今後も、「世界平和統一家庭連合」の代表者らと今まで通り、交流を続けていたかもしれません。確かに、日本には、評判の芳しくない教会とのつながりは日本社会の基礎を揺るがすものだと考える保守的な人々がいます。しかし、これが日本の新内閣のイメージに多大な影響を与えるとは思いません。今回の内閣改造について言えば、安倍氏の死がきっかけとはなったものの、その真の理由は、経済問題や地政学的上の複雑な条件によって国民が苦しんでいるという困難な状況によって、政府の支持率が低下しているということにあるでしょう」
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