ロシアの最新鋭戦車Т-90Мがウクライナで鹵獲:喜ばしいニュースではないが、致命的なものではない

© Sputnik / Ramil SitdikovТ-90М
Т-90М - Sputnik 日本, 1920, 10.10.2022
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ウクライナ軍がロシアの最新鋭戦車Т-90М(第3世代主要戦車Т-90の国内改良型)を鹵獲したというビジネス・インサイダーからのニュースがベトナムのメディアで拡散された。
ビジネス・インサイダーの記事の執筆者であるピーター・スーチウ氏は、「Т-90Мの鹵獲は、ロシア政府の大きな失敗であり、NATOのある種のうまいやり方である」との確信を示し、Т-90Мが西側の専門家の手に渡れば(おそらくウクライナはこの戦車を米国に引き渡すと思われる)、「プーチン大統領に懸念を呼び起こすはずだ」と指摘している。
戦車は詳細に研究され、これまでは西側では知られていなかった秘密が明らかになるのである。
「スプートニク」は、この記事と、これほど近代的なロシアの戦車が鹵獲された事実について、権威あるロシアの軍事専門家アレクセイ・レオンコフ氏にお話を伺った。
軍事行動が行われるなかで、兵器を損失したり、あるいはそれが戦利品として相手側の手に渡るということは避けられないことである。
そして、ウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦でも同様のことが起きている。
米誌 ロシアの戦車「T-90M」は「死をもたらす怪物」と評価
2〜3ヶ月前、メディアでは、フランスがウクライナに供与したフランス製の最新式155ミリ自走榴弾砲「カエサル」がロシアの武器専門家の手に渡ったという話題が大きく取り上げられた。またロシア軍が、ウクライナ軍の保有する完全に修理された、あるいは十分に修理可能なウクライナ製の戦車Т-80UD、T-64BV、ポーランド製のТ-72М1(NATOの標準に適用させたものとされる)を獲得したという動画も公開された。
一方、戦車などの戦利品が相手側の手に渡っている。Т-90Мもそんな一つである。

致命的なことは何もない

しかしながら、ロシアの専門家は、ロシア軍の戦車部隊について懸念を呼ぶような致命的なことは何も起きていないとの見方を示している。
「ハリコフ(ハリキウ)州で、ロシア軍第4カンテミロフスカヤ親衛戦車師団所属のロシアТ-90Мが発見されました。戦車は、キャタピラが壊れていましたが、まだ使用できる状態でした。このような戦車が敵の手に渡ったとき、もちろん『それはその先どうなるのか』という疑問が湧いてきます。Т-90МはТ-90を、イノベーションプログラム「Proryv」(ブレークスルーの意)の枠内で高度に改良されたものです。このプログラムには3つの段階があり、最後の段階でТ-90Мの外観が作られました。この戦車の大きな特徴は、砲塔上にRWS(遠隔操作付きの無人銃架)が設置されていることです。このRWSの制御システムは司令官のディスプレーに繋がっています。しかし、このようなシステムは、ロシアと隣接するNATO諸国のものなど、NATOの主要戦車の多くに使われているものです。Т-90Мの主な構成はT-90のままですが、そこに制御や操作を簡素化し、戦車に乗り込む兵士をより快適にするような要素が加えられています。機器はたくさんありますが、標準的なモデルで作られていて、そこに無人銃架が加えられているだけです。しかも、すべてのТ-90にはオートマティック・トランスミッションと自動装填装置が付いていますが、これもよく知られているものです。つまり、「超極秘の情報」のようなものはありません。もちろん、西側の専門家(もし戦車がそういった人の手に渡った場合)はFCS射撃統制システム『カリーナ』を研究すると思いますが、NATOの戦車開発の発展を促すような画期的で革新的な手法を手に入れることはないでしょう。というのも、Т-90М開発の最終的な目的は、かなり具体的なもので、それは、ロシアの戦車をNATOの主要戦車の最新改良型の性能以上のものにすることだからです。なぜТ-90Мを他でもない今、戦闘に投入したのでしょうか? 特別軍事作戦の経験は、高度に改良されたТ-72を使っても、与えられた課題を遂行できない時があることを示して見せたため、Т-90を使うことになったのです」。
基本的にТ-90は西側にとって、まったく知らない兵器ではない。アレクセイ・レオンコフ氏は、シリアで戦車Т-90が戦闘員らに奪われたことを例に挙げている。彼らはその戦車を米国のスポンサーらに手渡した。米国はこれを調査したが、興味深いものは何もないと判断し、伝統的にソ連やロシアから戦利品として兵器を集めてある自国軍の基地に持ち帰ることすらしなかった。しかし、Т-90Mが敵の手に渡ったという事実は、ロシアの戦車師団の活動や戦闘にどれほどの問題をもたらしたのだろうか?
レオンコフ氏は、敵はこの戦車を、主に、自国の対戦車兵器の改良とその装甲貫通能力の向上のために研究するだろうと見ている。
「シリアでの実戦での別の例を挙げてみましょう。戦闘員らは、米国製の対戦車ミサイルTOW-2で、シリア軍のТ-90Аを撃破しようとしましたが、ミサイルはT-90の最新型よりもはるかに劣る装甲を貫通することはできませんでした。世界のすべての戦車は横方向から貫通します。しかし、最新型の戦車は爆発反応装甲で装備されています。Т-90Мのこのシステムを調査し、米軍が、評判の良い自国のジャベリンの改良を試み、運動エネルギー弾について研究を進める可能性はあります。ちなみに、戦車をうまく使用できるかどうか、また兵器として高い価値を発揮できるかどうかは、性能だけではなく、操作する兵士にも左右されます。例を挙げると、米国はサウジアラビアに戦車エイブラムスの改良型SEP3とSEP4を供与しました。この戦車はフーシ派との戦闘で使用されましたが、非常に評判が悪かったのです。素晴らしく装備された米国の戦車であったにも関わらず、フーシ派はそれらを打倒するチャンスを見つけたのです」。
軍事専門家のアレクセイ・レオンコフ氏は、西側の専門家らはT-90Mを装甲の貫通能力の対象として研究することはできると考えている。
しかし、演習場での実験は、実際の戦闘条件とは異なる可能性がある。というのも、ロシアではT-90の改良はまだ継続されているからだ。そして、ロシア製の戦車に対し、NATOのありとあらゆる対戦車兵器が使われた(戦車を横から破壊するドイツの地雷を含めて)特別軍事作戦の経験が、今後の改良に生かされるのは疑いようのないことである。
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