【視点】日本のMD予算増大、北朝鮮のミサイル迎撃を保証できない=専門家

© 写真 : Official account of Japan Maritime Self-Defense Force まや型護衛艦から発射されるSM3ミサイル
まや型護衛艦から発射されるSM3ミサイル - Sputnik 日本, 1920, 02.08.2023
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日本のミサイル防衛(MD)の要となるイージス艦の追加建造は、北朝鮮の弾道ミサイルに対する迎撃能力を向上するのに役立つが、それが100パーセントの安全を保証するものにはならない。韓国のシンクタンク「峨山政策研究院」の軍事専門家、ヤン・ウク研究員がスプートニクに対し語った。

MD強化に3倍、スタンドオフは25倍

日本の防衛省は28日、日本を取り巻く安全保障環境や国の防衛政策をまとめた「防衛白書」の2023年度版を公表した。北朝鮮については2022年に頻発した弾道ミサイルなどの発射実験を踏まえ、「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」と位置付けた。
北朝鮮を始めとする安全保障上の脅威に対抗するため、日本政府は今後5年間での防衛費の大幅拡大を目指している。そのなかで軸となるのは、敵基地攻撃能力を持つスタンドオフミサイルの強化に割かれる5兆円で、これまでの5年間と比べて25倍となっている。また、対空防衛ミサイル、MD網の強化にも従来の3倍の3兆円を投じる予定になっている。
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日本のMD網の限界

ヤン研究員は日本のMD網の現状について次のように指摘する。

「日本は島国であることから、日本を攻撃するには中距離以上のミサイルが必要となる。日本の防衛戦略では海上で撃墜し、破片も海に落とすということになっている。そのため、韓国と比べれば日本は安心感がある。海上では米国と共同開発したイージス艦用のSM3ミサイル、最終段階では対空防衛システム『パトリオット』で迎撃することになる」

ヤン・ウク
峨山政策研究院・研究員
問題は北朝鮮が日本を攻撃できるミサイルを大量に持っていることを考慮して、どれほどのイージス艦を保有・運用する必要があるかという点だ。ヤン研究員は「日本が全てのミサイルを迎撃しようとする動きはみえない」と続ける。そうした計画を持っているのは北朝鮮の脅威が目と鼻の先にある韓国だけで、米国すらも全弾迎撃は目指していないと指摘する。
日本は現在、こんごう型4隻、あたご型2隻、まや型2隻の計8隻のイージス艦を保有している。さらに来年度からは追加の2隻の建造が始まる。これとは他に「ミニイージス」とも呼ばれる汎用護衛艦あきづき型も4隻保有。だが、前述の8隻に比べるとミサイル迎撃能力は非常に限られている。
海上自衛隊の現在の運用では、常時配置についているのは全体の3分の1ほどとみられている。つまり、ミサイル防衛で一度に使える戦力は、せいぜい2~3隻ということになる。

「1つのイージス・システムには96の垂直発射装置がついている。だが、その全てからSM3が発射できるわけではない。日本は自分たちでも、ミサイル迎撃を保証するのにこれで十分か疑っていると思われる」

ヤン・ウク
峨山政策研究院・研究員
日本は過去に陸上配備型の「イージス・アショア」の導入も計画していたが、改修の費用や時間などがネックとなり断念している。
米兵士(アーカイブ) - Sputnik 日本, 1920, 18.07.2023
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「北朝鮮の脅威」は口実

また、日本のスタンドオフ能力の強化は北朝鮮の脅威に対抗することを建前に進められているが、実際には主要な仮想敵は中国を念頭としているとヤン研究員は指摘する。

「日本が尖閣諸島やMD網の強化を進めている沖縄周辺での中国の動きを念頭に、防衛費を増大させていることは明らかだ。『北朝鮮の核の脅威』は対中国の戦力を増強するための口実に過ぎないだろう」

ヤン・ウク
峨山政策研究院・研究員
ヤン研究員によると、日本と中国の軍事衝突のリスクは実際にあり、日本政府も現実の脅威とみなしているいう。そして、これこそが岸田政権がミサイル反撃能力の獲得を目指す理由だと結論づけた。
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