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    ウクライナ支援国際会議に日本外務省の代表者が出席

    小手川大介氏、欧州はウクライナを「破綻国家」とみなし始めた

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    小手川大介(こてがわ・だいすけ)元IMF日本代表理事、財務相官房審議官はラジオ「スプートニク」からのインタビューに答えた中で、こうした考えを表した。

    昨年末より、マスコミをにぎわせているのが、石油価格の下落や経済制裁の影響によるロシア経済の危機であり、これが表れているのがルーブルの大幅な下落である。一方、危機のもう一方の当事者である、ウクライナ経済の状況については、マスコミでは全く報道されていない。そこで、今回は、実は大変な危機に陥っているウクライナ経済の状況について説明することとしたい。

    2015年3月11日にIMFはウクライナ政府と4年間で175億ドルに上る財政支援措置を合意した。この合意に基づき50億ドルが即座にウクライナに供与され、残額は、IMFがウクライナ政府と合意した新規政策措置が実行されているかを定期的にIMFの調査ミッションがチェックしたうえで、今後4年間にわたり、3分割で供与されることになっている。

    実は今回の支援措置は2014年以降2回目の支援措置である。2014年2月20日のクーデタでヤンコヴィッチ政権が転覆され、その後の選挙でポロシェンコが大統領に選出されたのち、IMFは2014年4月30日にウクライナ政府と総額170億ドルを2年間で供与する支援措置を合意した(今後措置1と略す)。これによって、32億ドルがウクライナに即時に供与され、その後、3分割の支援措置の第2回目として、14億ドルが2014年8月29日に承認供与された。

    しかしながら、ウクライナ政府による、IMFとの約束事項の実行状況はお寒い限りであった。9月の第2貸付部分(トランシュ)は8月のIMFミッションの報告に基づいて何とか供与されたものの、第3トランシュの供与の是非を判断するためにウクライナに12月に送られたIMFの調査団は、状況の酷さにより、調査の途中でワシントンへ帰ってしまった。そこで、1月末にダボスでIMF専務理事のラギャルデとポロシェンコ大統領が面会し、ウクライナは措置1の条件の実行を諦め(これは措置1の残額の供与の取消を意味する)、IMFに対し、新たな財政支援措置の供与を希望した。これに基づいて急遽ウクライナに派遣されたIMFの調査ミッションの報告に基づいて決定されたのが、冒頭述べた175億ドルの支援措置(今後措置2と略す)である。

    IMFによる措置2の175億ドルに並行して、以下の額の支援が期待されている。

    1) 他の国際機関からの75億ドル

    2) ウクライナ国債所有者による153億ドルの債務救済

    これを合計すると400億ドルとなるが、債務救済については、ウクライナ政府と民間の債権者との交渉に依存するため、本当にこれが実行されるかわからない状況である。ちなみに措置2の合意に伴い供与された第1トランシュの50億ドルのうち40億ドルは債務支払いのために即刻使われてしまった。

    小手川 大助: ウクライナ問題について その2 約20年の間に、ウクライナ経済は悲惨な状況となった

    ウクライナ経済の再建に要する支援額は3400億ドルと見積もられている。また、同じような状況にある(内戦状態にないという点からはむしろいい状況にある)ギリシャに対するIMF,欧州中央銀行、欧州委員会(いわゆるトロイカ)の支援措置の総額が3250億ドルであり、ウクライナの経済規模はギリシャの4倍であることを考えると、今回のIMFの支援措置は極めて小さな額と言わざるを得ない。しかしながら、EUのメンバーではないウクライナはギリシャと異なり、欧州中央銀行や欧州委員会からの援助を受けることはできないため、支援はもっぱらIMFが行っている。

    ウクライナ経済の現状について、著名なウクライナの経済学者であり、議員でもあったヴィトレンコは最近のウクライナ経済の状況について、以下のような報告をしている。

    現在、ウクライナの工場の35%は稼働していない。25%は製品の市場を失ってしまったし、10%の工場は破壊されてしまった。

    2014年にウクライナのGDPは7%下落した。IMFとの交渉の際にウクライナ政府は、2015年のGDPの見通しについて、楽観的と悲観的と二つのシナリオを提出したが、楽観シナリオでもGDPは5.5%の下落となっているし、悲観シナリオでは11.5%の下落となっている。2年続けてのマイナス成長は多数の失業を伴う経済危機というべき事態である。

    ウクライナの資源の宝庫であるドネツクとルガンスク(現在親ロシア派が支配)は2012年にはGDPの16%を占め、石炭の95%を産出していた。2014年第1四半期(クーデタとそれに続く内戦の前)には両地域はウクライナの工業生産の23%、輸出の23%を占めていた。2014年9月までに対前年比でルガンスクの工業生産は85%低下し、ドネツクも60%低下した。

    EUに対する輸出は、フリブニアの下落に伴う大幅な交易条件の改善に関わらず、1.5%しか増加していない。これに対し、それまで輸出総額の7割を占めていた旧ソ連邦諸国への輸出は減少し、国によっては20-30%も減少している。

    3月2日にウクライナ議会は以下の内容の措置を承認した。

    国家予算の対GDP比を4.1%まで減少させる。

    銀行や国営石油ガス会社(「ナフトガス」)に対する資本注入を含む2014年の国家予算は13.5%の赤字であったが、これが、今回の措置に伴い、2015年には8.8%、2018年には2.6%に引下げられると試算されている。

    オタワ大学のカチャノフスキは、この議会の決定をベースに、国営企業従業員の20%が解雇され、高等教育機関の数も805から317に減らされると予測している。

    ウクライナは長期間ロシアより市場価格より低い価格でガスの供給を受けてきており、これに加えて政府は補助金で価格を引き下げてきた。2015年4月までに家庭用のガスの価格は280%上昇したが、これに加えて、さらに2017年4月までに全ての補助金が廃止されることになっている。電力料金は5段階で引き上げられ、最終的には現在の3倍半になる。

    現在雇用されている従業員の将来年金は15%削減され、また、年金受給年齢は5年引き上げられる。

    以上の措置に加え、為替(フリブニア)の大暴落により、この1年の間に実質購買力は大幅に低下した。例えば、国会議員経験者や学術研究者といった人たちの年金の購買力は2013年末に比較して2015年4月には85%低下している。すなわち2013年末に月額2千ドルの年金を支給されていた上記の人々の現在の年金の価値は月額3百ドルまで落ち込んでいる。EUの平均時給が23ユーロ(約3000円)なのに対し、ウクライナの平均時給は0.2ユーロ(約28円)となっている。

    年金カットは1400万人に上る年金生活者とその家族の生活に影響する。これに国営企業従業員の解雇を加えると、影響を受ける人口は約2千万人、即ちウクライナの現在の国内居住者の45%に上る。
    これまで国営企業従業員の年金は物価の上昇に比例して引き上げられてきていた。2014年になって、年金の物価に連動した上昇は廃止され、生活必需品の価格は政府が発表する最低生活水準の3倍となっている。生活必需品価格の上昇率は年率5%となっており、更に、以下の通り個別の商品価格は上昇している。

    砂糖 40%、りんご 67%、卵 260%、料理用油 150%、牛肉 150%、暖房費 160%、地下鉄及びバス料金 200%。

    2015年初頭には為替の下落とともにパニックが発生し、銀行への取付け騒ぎとなった。インフレは1月と2月の2か月間だけで65%に達した。2月5日に中央銀行は政府の反対にもかかわらず為替をフロート制に移行したが、2月末までに通貨の価値は約半分となり、長らく1ドル=8フリブニアだった交換価値は1ドル=33フリブニアまで下落した。店頭から商品が消えてしまい、商品が帰った時には以前よりもずっと高い価格となっていた。アメリカのエコノミスト、スティーブ ハンケの計算では、年率35%という政府発表の物価上昇率は大幅にインフレ率を過小評価しており、ウクライナの年間物価上昇率は272%で、世界最高となっている。ウクライナ国立銀行が最近公定歩合を16%引き上げた結果、3月3日時点では利率は30%に達し、国内の信用供与は停止した状態になっている。最近の世論調査では、給与所得者の20%が「時折食物を買う金がない」と言っている。

    このような状況で、当然のことながら治安は悪化し、あらゆる種類の犯罪が増加している。欧州では、ウクライナを「Failed State」、即ち破綻国家とみる見方が優勢になってきているが、今の状況が継続すれば、ギリシャ同様にIMFなどの国際機関への返済が危ぶまれるどころか、国民の不満の増大に伴う政情不安、ナショナリズムへの逃避、そしてテロリスト予備軍の出現による周辺諸国への不安の伝染が懸念されるところである。

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