06:28 2021年08月04日
福島 あれから10年がたった今
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福島第一原発の処理水海洋放出 (25)
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世論の複雑な反応にも関わらず、日本政府は福島第1原発の事故に関連したトリチウムなどの放射性物質を含む水の取り扱いに関する決定を行なおうとしている。通信社「スプートニク」は福島県地域漁業復興協議会委員の北海学園大学(経済学部)の濱田武士教授に、放水が行なわれた場合、それは実際に安全なのか、この問題における意見の相違はどこに原因があるのか、意見を伺った。

問題は安全性についてか、それともコミュニケーションによるものか?

福島県漁連の福島県地域漁業復興協議会委員である濱田武士教授は、当初から東京電力や政府、漁業団体の動き、汚染水問題、風評の動向について注視し、問題は複雑な性格を持つと指摘している。一方で同教授は、発電所からの放水に危険はないとの考えを示している。

濱田教授:「トリチウム水は通常の原発の運転で出るもので、薄められて放水されています。経験的には安全なことになっているはずですが、そのこと自体がもともと国民に知られておりませんでした。また今回のトリチウム処理水は地下水が燃料デブリにふれてできた高濃度汚染水をALPS処理したものであり、東京電力の起こした事故で発生したものであります。とはいえ、通常よりもさらにトリチウム水を薄めて放出しますので、基準通りの処理をすれば科学的に全く問題ないはずです。」

一方で濱田教授は、放水に関する危惧は、決定を行なう側から事態について住民に十分な情報が提供されていないことで生じていると強調した。

濱田教授:「しかし、国民は報道によって、はじめてトリチウム水の存在を知らされたわけです。危険だという専門家もいる中で、国民は安全だという確信をもてず、簡単に納得できないわけです。そして国民に対するインパクトはマイナス面しかありません。日本では食品が溢れ、国民の食の選択幅は広いです。それだけに無理して危ないかもしれない魚を買うというリスクを国民が背負う必要がありません。」

風評問題の難しさについて

濱田教授は、福島第1原発に関する決定を行なう面々のこうした対応は、とても1日では解決することのできない風評被害という難しい問題を生じされることとなったと見ている。

濱田教授:「つまり、(食品が)少しでも危険だと知ったら消費者はそれをわざわざ選択しないです。消費者がそう考えると察した流通業者は、消費者が買わないのだから、危ないと思われる魚を買い控えるということになります。そして、安全な地域の魚だけを取り扱うようになります。さらに、流通業者は安全な地域の魚を仕入れることができるのならば当然、危ないと思われる魚を買い控え続けます。こうして風評は固定化されてしまい、福島の魚の販売がなかなか回復しませんでした。風評は露骨に表れません。」

濱田教授によれば、10年が経過し風評被害は「徐々に弱まってきた」が、この間の政府による放水の決定が風評問題を再燃させるおそれがあるという。

濱田教授:「そのようなタイミングでトリチウム水が放水されるとなると、どのような規模かはわかりませんが、上記のような現象が繰り返される可能性が高いです。風評対策としては、放水前に社会的インパクトをどれだけ弱めるかが政府の課題です。」

主な問題-明確な説明の欠如

そのため濱田教授は、「トリチウム水の放水をめぐる問題でもっとも大事な点は、廃炉作業を進めるうえで、放水が絶対必要という説明がないということ」と考える。

濱田教授:「 タンクを設置する場がないとは言っていますが、よく聞けば合理的だから放水が正しいという話になっています。それはそれで理解できるとしても、では、もともと、このような状況を誰が作ったのかという責任問題がはっきりとしていません。それは東電であり、原発政策を推進し、原発を管理しきれなかった政府です。にもかかわらず、最終的に困るのは漁業者になっているということです。」

こうして悪循環が生まれ、それにより出口を見出すことが極めて困難になっている。

濱田教授:「(ということで、)政府が、漁業者に寄り添い、風評被害だと政府が言えば言うほど、政府が魚を買わない消費者、一般国民が悪い言っているみたいで、政府が国民を攻撃するということになります。政府が漁業者と国民を分断してしまう図式がそこに見えてきます。漁業者が、放水を認めるわけにはいかないのです。最終的に悪者にされてしまうからです。」

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