01:57 2020年10月31日
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アシュトン・カーター米国防長官は先日の訪日でまず、横須賀基地にある日本最大の護衛艦「いずも」の視察からプログラムを開始した。稲田防衛大臣との会談もその視察が終了して初めて行われている。日米の国防分野の大臣らはトランプ次期米大統領の就任を目前に控え、安全保障分野における二国間同盟関係の重要性を確認した。

とはいえ、会談の参加者らの目的は協力強化の確認だけではすまなかった。日本にとって米国防長官を迎え入れるということはロシア大統領の訪日を控え、ロシアとの経済協力の拡大がある今、特別な意味を帯びたものだ。米国側の目的はおそらくもっと具体的なものだった。カーター長官の「いずも」上船はF-35Bの移送を控えた岩国基地をオバマ大統領が視察したことを思い起こさせる。いずれも同じ課題を負ってのもので、つまり船の戦闘準備体制をチェックしたわけだ。

護衛艦「いずも」
© REUTERS / Thomas Peter
護衛艦「いずも」
「いずも」についてはロシア人軍事専門家らの中からは、日本はきっと空母に戻りたいんだろうが、なにぶん憲法がこれを許さないからなぁ、空母を護衛艦と呼んだんだろうといった冗談がもれている。たしかにこの巨大軍艦は満載排水量2万7千トン、全長248メートル。護衛駆逐艦のカテゴリーに属し、名称としてはヘリコプター搭載護衛艦となっている。大きさとしては伝説の空母「加賀」より多少大きいが、ただ排水量だけは装甲板がない分、多少劣っている。ただしいずも型護衛艦の2番艦は「かが」という名前をもらい、横浜基地で進水式を迎えた。この「かが」だが、もともとの「加賀」は第2次世界大戦で活躍した空母で、あの真珠湾攻撃にも参加している。2番艦は28機のヘリを搭載可能で就役予定は2017年。

伝説の空母「加賀」
© 写真 : Public domain
伝説の空母「加賀」
付け加えると「いずも」が搭載できるのはヘリコプターに限定されないことから最新戦闘機F-35を搭載可能な米のワスプ級強襲揚陸艦とよく比較される。日本はF-35型の戦闘機42機の購入交渉を行なっているが、現時点では「いずも」は汎用ヘリコプター「SH-60 シーホーク」9機を搭載している。日米は「いずも」を合同軍事演習の実施に使用し、このなかでヘリよりスキルの大きいV-22(オスプレイ)のタッチアンドゴー訓練を甲板上で行なっていた。

日本の情報筋によれば、「いずも」2番艦の「かが」の主な課題は潜水艦対策、人道作戦、災害復興援助の参加。だが「いずも」は航空機用、敵のいると思われる沿岸部へ海兵隊を移送、パラシュート部隊の上陸などの課題にも中間的な浮遊航空基地として用いることができる。転換式航空機を用いた訓練が開始されたのはそもそもヘリの使用が、例えば北朝鮮との仮想の紛争があった場合、「いずも」では沿岸部にあまりに接近し、北朝鮮のボートやモスキートフリート級の船、また沿岸用ミサイル複合の接近を許しかねないという前提に基づいてのことだった。転換式航空機は射程690キロで、こうした課題をこなしてしまう。

北朝鮮のボート
© AFP 2020 / Goh Chai Hin
北朝鮮のボート
北朝鮮を相手にした軍事作戦への戦闘準備体制をチェックする路線はオバマ政権下で形成されたものとはいえ、トランプ氏が行なうだろう政策のパラダイムにも十分に当てはまる。同盟国の軍隊、艦隊をより集中的にこうした作戦の準備に惹きいれていくことは、同盟国はそれぞれが防衛負担を行なうべきというトランプ氏の確信とも一致する。

同盟国間で防衛負担を分担するというトランプ氏の公言は新しい物ではないと思う。第2次世界大戦後、米国の参加した軍事紛争の歴史を見れば、米国の司令部は米国の目的に米軍以外の軍事力を用いることに反対ではなかったことがわかる。1969年のベトナムでメルヴィン・レイルド国防長官が語った「ベトナム戦争」についての構想を思い起こすだけでも十分だ。このことから米国が北朝鮮との軍事紛争を思いついたり、もしくはそうした可能性を検討したとすれば、日韓は同盟国とみなされ、戦争の重みも主な人的損害も肩に乗せられることになる。これは日本に必要なことなのだろうか?

なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。

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