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    炭火居酒屋炎の生つくね

    ウラジオストクの日本居酒屋「炎」人気の理由は?佐々木社長に聞くメニュー開発秘話【写真】

    SHINWA HOLDINGS co.,ltd
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    徳山 あすか
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    ロシア極東の街・ウラジオストクで人気を集めている「炭火居酒屋 炎」。この店は、北海道の飲食チェーン「伸和ホールディングス」の海外一号店として、今年4月にオープンした。開店に至るまでの道のりについて、佐々木稔之社長に話を聞いた。

    スプートニク日本

    10年ほど前からロシアに関心をもっていた佐々木社長。ウラジオストクで50件もの物件を見てまわり、ターミナル駅に近い高級住宅街に、大きくはないが快適な空間を作れる場所を見つけた。ロシア人の好きな屋外テラスもつけ、ハイランクの居酒屋として店をスタートさせることにした。

    「炎」の名物料理は、独特の食感とあふれる肉汁が楽しめる「生つくね」だ。このメニューは、ロシアでも絶対に外すことができない。日本の店舗では生つくねのために、契約養鶏所から仕入れた若鶏を自社工場に直送しているが、ロシアではロシアの鶏肉と調味料を使って作らねばならず、満足いくレベルに仕上がるまでレシピの試行錯誤を繰り返した。しかしそれでも、鶏肉そのものが違うため、日本と全く同じ味を出すことはできない。佐々木社長は「将来的にはロシアで、生つくねや唐揚げに合う鶏を育てたい」と話す。

    日本企業として、寿司、特に米には格別のこだわりをもっている。ウラジオストクの「炎」で出されている寿司は北海道産米を使ったもの。炊飯器も日本製だが、理想の炊き上がりになるまでには幾度となく実験を繰り返した。ロシアの水は日本と比べて硬いため、最適なバランスを導き出すのに苦労したという。その甲斐あって「炎」の常連客は日本米の美味しさがよくわかるようになった。一度だけ通関の問題で北海道米が出せずに別の米を使ったことがあったが、たちまち「味が変わった」「美味しくない」という指摘が飛んできた。居酒屋メニューに欠かせないコロッケは、小麦粉に問題があった。ロシアの小麦粉は粒子が粗く、強力粉ばかり。揚げ物をすると衣が厚ぼったくなってしまう。サクッとした食感を出せるように、改良に改良を重ねた。

    しかし、理想の味を目指して奮闘する努力が、いつも理解されるとは限らなかった。ロシア人スタッフに試食させてみると、「どれも美味しい。どこに問題があるのか?」となってしまうのだ。実際、目の前の料理以上の料理を食べたことがなければ、改善点をイメージするのは難しい。そこで3月、開店1か月前にロシア人スタッフを北海道に招き、札幌の店舗で研修を受けさせることにした。

    研修を受ける中でロシア人スタッフが最も感銘を受けたのが、厨房のオペレーションだった。ロシアのレストランでは「一人一役」で役割分担がなされており、注文が集中すると料理がなかなか出てこないことはよくある。「炎」では、一人のスタッフが様々な仕事をこなし、その場の必要に応じて動くので、無駄がないのだ。宴会や温泉といった純日本風のレクリエーションもあり、日本文化を総合的に体感することができた。

    オープン後、意外なメニューの人気があることがわかった。枝豆のリピーターが続出したのである。ロシアには枝豆を食べる習慣はなく、そもそも枝豆を見たことがないという人ばかりだったが、今では定番メニューとして定着した。大勢でつつきながら食べる鍋も人気がある。日本在住のロシア人から「口から豆の皮を出したり、一人前ずつに分かれていないスープを飲むのはロシア人にとって抵抗があるのでは?」という意見もあったが、杞憂に終わった。

    • 居酒屋炎、ウラジオストク一号店外観
      居酒屋炎、ウラジオストク一号店外観
      Asuka Tokuyama
    • リピーター続出の枝豆。ワインにも合う!
      リピーター続出の枝豆。ワインにも合う!
      Asuka Tokuyama
    • 佐々木稔之社長(右)、佐々木智範副社長(左)
      佐々木稔之社長(右)、佐々木智範副社長(左)
      Asuka Tokuyama
    • 名物「生つくね」焼いてます!
      名物「生つくね」焼いてます!
      Asuka Tokuyama
    • 居酒屋の定番料理、だし巻きの厚焼玉子も人気メニュー
      居酒屋の定番料理、だし巻きの厚焼玉子も人気メニュー
      Asuka Tokuyama
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    Asuka Tokuyama
    居酒屋炎、ウラジオストク一号店外観

    佐々木社長は「実際に店を構えてみて初めてわかることがあるので、一部の話だけを聞いて駄目と思っては駄目です。その料理を食べたことがなくても、食べてみて美味しければそこに需要はあります。枝豆もそうですが、何でも最初は1キロ、2キロといった輸出から始まるので、日本からロシアに少量の食品を輸出できるインフラを、どう作り上げるかが課題です。今まで知られていなかった和食がロシアで根付き、それが新しい食文化となるように、この店を発信基地にしていければ」と話す。

    「炎」はウラジオストクやハバロフスクで店舗数拡大を目指すだけでなく、モスクワへの進出も視野に入れている。現在、ロシアに適応したフランチャイズパッケージを作るため、料理マニュアルや人材教育マニュアルなどの精度を高めている最中だ。サービスに対する意識改革や、気持ちのよい挨拶も欠かせない。日本料理のベテラン板前、佐藤寛さんも常駐し、スタッフの中心となって指導を行なっている。

    佐々木智範副社長は「店を開くことは誰にでもできますが、続けるためには常に改善をし、お客様に喜んでもらわないといけません。流行や好みの変化も激しいので、日本でもロシアでも進化を続けたい」と話している。

    板前の佐藤寛さん。「炎」では活カニが味わえます!
    Asuka Tokuyama
    板前の佐藤寛さん。「炎」では活カニが味わえます!
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    食べ物, 食品, 露日関係, ウラジオストク
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