06:15 2019年06月27日

制裁か戦争か タンカー攻撃で極限まで関係悪化の米、イラン

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6月13日、サウジアラビアからシンガポール、台湾に向けてオマーン湾を航行中の石油タンカー2隻で爆発が起きた。米国は爆発をイランが仕掛けたものと断定し、貨物船に対する「許すべからざる攻撃」と非難した。専門家らの見解は、ただでさえ極限まで緊張した同地域の状況はこの爆発でさらに火に油が注がれた状態になったという見方に集約されている。

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事態は、イランのロウハニ大統領と最高指導者のハメネイ師との会談のために同国を安倍首相が訪問している最中に発生した。安倍首相のイラン訪問の目的にはイランと米国間の対話正常化に日本の支援を宣言することも挙げられていた。イランのザリフ外相は、もろもろの状況の他に攻撃を受けた1隻が日本関連の貨物を運んでいたことも、タンカーへの攻撃を疑わしいものにしているとの声明を表した。

オマーン湾のタンカー攻撃
オマーン湾のタンカー攻撃

トランプ米大統領もツィッターを通して安倍首相のイラン訪問にコメントを表した。「アベ氏がイランを訪問し、ハメネイ師と会ったことは高く評価するが、個人的には取引をしようとするのは時期尚早じゃないかと思う。あちらにはその気はないし、こちらも同じだ。」

​オマーン湾とホルムズ海峡を隔ててつながるペルシャ湾は世界でも最も安全から遠い水域となっており、過去40年、幾たびもの戦争、地域紛争を経験してきた。ペルシャ湾岸諸国はどの国も時に慎重に、時に攻撃的にと政策を変え、隣国の勢力を封じ、地域を御する地位を占めようとしのぎを削っている。

現在、状況はトランプ米大統領がイランの段階的非核化プロセスから手を引き、新たな制裁を発動したことから緊張している。

1年前、イラン核合意からの離脱を宣言し、この国の外交、軍事プログラムに12項目の要求を掲げた米国が、今度はこれをいかなる代価を支払っても成し遂げてやると約束している。トランプ氏がイラン産石油を輸送する、あらゆる企業に制裁を発動すると脅すと、イランも一歩も譲歩しないと宣言し、ミサイル発射実験をこれ見よがしに行い、世界の石油タンカーの3分の1が通るルートを封鎖すると威嚇している。

このように米国とイランは今、軍事紛争に突入する一歩手前の状態にある。少なくとも米国行政内には軍事衝突というパターンをまったく例外ととらえていない人間が複数存在しており、大統領補佐官、国家安全保障担当のジョン・ボルトン氏もそのひとりだ。トランプ氏自身、5月19日のツィッターでこう書いている。「イランが開戦する気になったら、それはイランは公に終わりを迎えるだろう。これ以上、米国を脅すものではない!」

​5月、米国はイランにとって石油製品についで大きな利益をもたらしている金属生産に対し、制裁を発動し、ペルシャ湾の水域に追加の軍事船舶を差し向けた。ポンペオ米国務長官は、イランとの戦争を米国は望んでいないとは言ったものの、ペルシャ湾水域に向け、すでに数隻の軍艦が追加配備されている。この他、米国諜報機関の調べによれば、イランは短距離弾道ミサイルを移送しており、巡航ミサイルもペルシャ湾上のイランの軍艦にすでに配備された。

中東に関するプレス情報をモニタリングするNPOの「ミドル・イースト・モニター」によれば、制裁が厳格化した場合、イランはペルシャ湾からの石油輸送を封鎖し、核合意からの離脱も辞さないと強硬な構えを見せている。

バーレーン、カタール、クウェートはオマーンの湾を通る以外の海上ルートは有しておらず、ここを封鎖されたら石油の輸出は行えない。オマーン湾はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラクのタンカーも通過する。ホルムズ海峡のルートを通って輸送される石油は世界の石油輸出の30%近くを占める。中国、日本、インド、韓国、シンガポール向けの石油もホルムズ海峡を通って運ばれている。

オマーン湾は狭く、しようと思えば容易に封鎖できる。だがそのシナリオは想定し難い。なぜならイランがこれに及んだ場合、米国はおろか、地域の他の産油国も敵に回すことになるからだ。

サウジアラビアのアッサーフ外相はイランがオマーン湾の封鎖をほのめかす声明を表すと、もし封鎖された場合、サウジアラビアはイランを攻撃すると宣言した。

米国の狙いがどこにあるのかをめぐって、アナリスト、政治学者らの議論は尽きることがない。核兵器、ミサイルの脅威の除去か、地域でのイランの勢力を頭打ちすることか、公言されてはいないが、経済問題を生み出すことでイラン政権を窮地に追い込み、政治体制の転換を画策しているのだろうか。

専門家らの見解は割れている。米国は今、イランが国際的な石油供給を意図的に妨害しているとして事実上、非難しており、海上交通に脅威を与えると認識してしまった。これは世界にむけて深刻な非難を行ったも同然であり、最低でも完全な経済、貿易封鎖に至るか、最悪の場合、ミサイル、爆弾の攻撃を招きかねない。

分析雑誌「エクスペルト」の記者で国際政治学が専門のセルゲイ・マヌコフ氏はスプートニクからの取材により楽観的な見解を示した。

「イランで戦争が起きることは最終的にはないと思う。イランと衝突した場合、どんなシリアスな結果になるかは米国は認識している。それにこれはシリアのケースよりずっと悲惨だ。

アサド氏には戦争で米国に深刻なダメージを与える能力はなかったが、イランとの場合は状況は全く正反対だ。この地域にはいたるところに米国の軍事基地が存在する。最大級の基地はバーレーンにあり、1万から1万5千人の米兵が配置されている。

万一、そこにイランのミサイル数発が打ち込まれれば、米国が容赦するはずはない。トランプ氏は2020年に次の大統領選挙を控えている。軍事紛争にでもなり、米国本土に米兵の棺が次々と運ばれでもしたらどうなる。だから米国はいつもの通り国連安保理の場で制裁を発案し、現地に駆逐艦数隻を差し向けるだろうが、それ以上の事態には発展しないはずだ。」

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ドナルド・トランプ, 安倍晋三, 石油, 米国, イラン
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