イワンチャイの正体は、ヤナギランという植物で、明るい紫色の花をつける。ロシアでは昔、ヤナギランの綿毛は、枕の詰め物に使われていた。お茶を作るには花と葉を発酵させて乾燥させるのだが、メーカーや産地によって、わりと味が違う。
7月上旬、アムール州で作られたイワンチャイの試飲会が東京で開かれた。アムール州輸出支援センターは、「参加者の皆さんは、他の地域のイワンチャイを知っている人がほとんどでしたが、アムール州のイワンチャイは、はっきりとした自然の香り、柔らかくて独特の味に特徴があると評価してくれました」と大いに手応えを感じたようだ。中でも、アムール州でしか作られていないという、松の若枝をブレンドしたイワンチャイは、特に注目を集めたという。ごく最近、イワンチャイの輸入を始めたところもある。日本在住のロシア人女性、菅野エレナさんが社長を務めるグローバルウィッシュ株式会社だ。もともとは、マトリョーシカ作りの講師として活躍していたエレナさん。日露をつなぐ様々なビジネスを手がける中で、今年の3月からイワンチャイの輸入を開始した。
エレナさんが選んだのは、母の故郷であるシベリアのイワンチャイ。余計な原材料を使わず、シンプルな製法にこだわっているメーカーを選んだ。エレナさんは「今は、余計なものを使っていない会社を探すのは難しいです。ロシアは暗くて寒いだけじゃない。日本で知られていない良いもの、美味しいものを紹介したいという思いで始めました」と話す。

ところが輸入開始早々、新型コロナウイルスの影響で、各種イベントの開催自体が見送られたり、試飲や試食ができなくなったりと、イワンチャイの味を日本人に紹介するチャンスが巡ってこなかった。そのためネットで販売してみると、日本に住んでいるロシア人がこぞって買い、ミントや生姜&レモンなど、いくつかのフレーバーは早々に売り切れてしまった。ロシアではイワンチャイは免疫力を高めると言われているため、コロナ禍においては特に需要が高まったのかもしれない。
グローバルウィッシュでは、イワンチャイ以外にも、アルタイ地方のはちみつや、松の実のチョコレートなど、ロシアの美味しいものを取り扱っている。お中元のシーズンには、これらを詰め合わせたギフトセットを作り、ロシアの味を届ける工夫をしている。
日本ではまだまだマイナーな存在のイワンチャイだが、ロシアで日本の抹茶が少しずつ時間をかけて浸透し、あるとき火がついてブームになったように、日本でも高く評価される日が来ることだろう。
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