00:19 2020年12月01日
政治
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安倍首相辞任 自民党新総裁に菅官房長官を選出 (52)
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安倍晋三氏の辞任後、新首相の元では日露関係は下り坂になるという声が聞かれるようになった。実際にそうなるのだろうか? 何らかの関係発展のシナリオはあるのか? これについてスプートニクは日英の専門家らに見解を尋ねた。


菅氏 安倍氏を継承 でも同じ轍は踏まない

米テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)の上級准教授で日露関係を専門とする英国人学者のジェームズ・ブラウン氏は、菅政権での日露関係の行方については極めて悲観的観測を表している。

「菅義偉氏は対露路線では安倍氏の政策を続けていくと公式的に明らかにしました。こうした声明を公にしたところで、日露関係の部分に前任者と同じ熱意を発揮するかどうかは疑わしいところです。ロシアと近しい政治、経済関係を築きたいという願望を持つ安倍氏は日本の政界にとっては極めて変わった現象でした。なぜなら日本人政治家の大半は、自国の北方にいる隣人とのこうした関係拡大を最優先に考えたことは一度もなかったからです。」

一方でブラウン氏は、安倍氏の対露政策は日本国内の支持を取り付けることはできなかったととらえている。安倍氏はロシアに対して大きな譲歩に出た指導者と受け止められているからだ。特に交渉の基盤を4島のうち2つの小島だけを引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言に置くことに同意した点がそうで、日本ではこうしたやり方は相手に弱みを見せたことになり、これに対してロシアからは益になるような回答はなんら示されなかったとみなされた。ブラウン氏も指摘するように、加えて日本のマスコミは世論の目をロシアの憲法改正に積極的に仕向けだした。改正項目ではロシア連邦領土の割譲についてのいかなる議論も禁じられている(このテーマについてのスプートニクの記事はここからお読みいただけます)。

「安倍氏は対露関係にあんなにも入れ込んだにもかかわらず、相互的には何の益も見られなかったことから、菅氏が同じ過ちを犯す可能性は極めて低いと思われます。それでも菅氏がロシアとのより近しい関係発展を行うという安倍氏の政策を公式的に維持する可能性は高いでしょう。それでも実際は、ロシアは日本の外交政策における最優先的意義を失い始めると思います。首相の訪露の回数も減り、日本政府が自国の実業界にロシアへの投資を積極的に促すこともなくなるでしょう。」


「Go To Travel」から 「Go To ロシア」へ?

ロシアが専門の筑波大学の中村逸郎教授も、日露関係は基本路線ではおそらく一時停止状態に陥ると考えている。

「2016年からプーチン大統領が山口県を訪問してから、平和条約の締結に向けて動きが出たんですけれど、この流れは止まります。平和条約の締結に向けては動かないです。経済関係においても、これまでの技術支援とかそういうものはなくなります。」

一方で中村氏は、日露関係ではまさに菅氏のおかげで観光路線で大きな変化があると確信を示している。中村氏今年7月、8月に実施されたGo To Travelに似たイニシアチブがロシア向けに発揮される可能性もありうるとみている。

「菅さんが総理大臣になることで、日本とロシアの、特に旅行関係が活発になります。その一点に限って、大きな変化、人と人の交流が発展していくと思います。具体的に言いますと、ビザが緩和されて日本人とロシア人はお互いに旅行することがしやすくなります。

その理由は何かと言いますと、菅さんを支えている経済組織、経済団体というのは旅行関係の会社がバックにいます。例えば、JTBとか、近畿日本ツーリストとか、大きな旅行会社が菅さんのスポンサーなんです。

また、日本政府は、先ほど、コロナが日本国内で拡大している中でも、『Go To Travel』をやりました。ですので、今度は菅さんが『Go Toロシア』ということで旅行関係の交流が活発になると思います。」


安倍氏の影響力 菅氏もその考慮を迫られる可能性

ロシアを専門とするジャーナリストの石川 一洋氏は、安倍氏は日露関係の重要な「エンジン」だったが、菅氏は前任者の政治路線を維持するにしても、新首相としてリスクを負うような行動はおそらくしないだろうとの見方を示している。

「菅さんは安倍外交を継承すると述べています。だから、これまでの安倍総理の日露外交というのは継承されると思いますけれども、ただ、菅さんがリスクを冒してまで日露関係を進めたいと思うのがどうかは疑問です。

コロナがなかった場合、安倍総理は5月9日にロシアを訪問して、9月の東方経済フォーラムにも出席する予定にしていたわけですが、菅総理の場合はそういうアクティビティーは少なくなるのではないかなと思います。だから、菅総理にしてみると、優先順位は日米関係、それから日中関係という日本の伝統的な外交順位に移ってくるのではないかなと思います。」

石川氏は、菅氏が何らかの問題に「強い思い」を抱いているとすれば、それは北朝鮮の拉致問題の解決であって、対露関係の推進を達成することではないと指摘している。

こうした一方で石川氏は、安倍氏が日本国内で持つ影響力を菅氏も考慮せざるを得なくなるシナリオもありうると考えている。 なぜならここ数か月の安倍氏の政策は激しい批判の的になっていたものの、辞任表明を境に逆に安倍政権の達成にポジティブな評価が集まりだしたからだ。

「退陣する安倍総理の影響力がどのくらい残るのかということも大きく影響してくると思います。それは対露外交だけではなくて、外交や内政全般についてです。安倍晋三氏の影響力がどの程度残るのかと。今のところ、退陣を表明してから安倍晋三氏の評価は非常に上がっているということなんですけれども、菅さんが安倍離れを進めるのか、それとも国民に支持の高い安倍氏の影響力が残るのかということは、日露関係の、特に政治対話には大きな意味が出てくると思います。」

石川氏は、この先、どう発展するかは、菅政権がより良い面を見せつけることができるかどうかにかかってくると見ている。もし良い面を発揮することができなければ、菅氏は決定を取る際に安倍氏の威光に寄り添おうとし、それが日露関係に前向きに作用するということも十分ありえる。

「ロシアのことわざで『新しい箒は新たに掃除したがる』という言い方がありますね。ロシアもそうですけれど、一般的には新しく権力についた人は古い人の『掃除』をしたいと思うのは常です。それでもやはり、菅政権というのは本格的になるのかどうかまだわかりませんから、その安倍総理の支えというものが必要になるかもしれないです。だから、その点で安倍総理の影響力というものが日露関係にとっても良い意味を持つと思えます。」

石川氏は、安倍、プーチン両氏シンガポールで達成した合意を菅氏が発展させるかどうかについて、ここで判断を下すのは時期尚早と考えている。一番見極めがつくのは菅氏とプーチン氏の初会談になるだろうという見方だ。菅氏が面と向かった時にどういう態度に出るかということが、この先の関係発展から見て、ある種の意味を持ってくるからだ。

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