【視点】日米極超音速迎撃ミサイル開発計画 没落する帝国の「袖の下」=専門家

© AP Photo / Andrew Harnik岸田首相(右)の背中を押すバイデン大統領(中央)
岸田首相(右)の背中を押すバイデン大統領(中央) - Sputnik 日本, 1920, 21.08.2023
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日本の超音速兵器迎撃用のミサイル開発を支援する米国の動きは、「バケツの大金」を防衛産業につぎ込むことで衰退する米帝の海外での縄張りを強化する試みにほかならない。このような考えを、元米国防総省の分析官がスプートニクに対し語った。

米国の封じ込め政策

18日に米ワシントン郊外のキャンプ・デービッドで行われた日米韓首脳会談の際、日本の岸田文雄首相と米国のジョー・バイデン大統領は極超音速ミサイルを迎撃するためのミサイルを共同開発することで合意した。これは中国や北朝鮮、ロシアが持つ音速の5倍(時速6000キロ)を超えるミサイルを念頭としている。日米両国はこれまでに弾道ミサイル迎撃ミサイル「SM3」を共同開発しているが、現状では日本の防衛網では極超音速兵器のレーダー追尾や迎撃は困難となっている。
米空軍の退役中佐で米国防総省の元分析官のカレン・クウィアトコウスキー氏は、スプートニクに対し、日米の迎撃ミサイル共同開発計画が軍産複合体への新たな贈り物であり、対中国を念頭に東アジア地域で米国のプレゼンスを強化する動きだと説明する。

「私が最も驚いているのは、太平洋における米国の過去のミサイル防衛計画の失敗や計画延長の繰り返しにも関わらず、10年以上もかかるこの計画に投資しようとする日本の意思だ。恐らくは数十年にわたるスタグフレーションと人口減少・高齢化によって、日本は北朝鮮と中国のミサイルに対する防衛手段として、これが唯一の選択肢だと考えているのだろう。両国の防衛産業にとっては勝利であるが、米国の多極化世界に対するアプローチ、つまり反動的で政治的にナルシストな『封じ込め政策』には実質的な変化はみられない。ジョージ・ケナンは棺の中でひっくり返っているだろう」

カレン・クウィアトコウスキー
米空軍退役中佐・米国防総省元分析官
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ミサイル開発の課題

極超音速ミサイル迎撃弾の開発へ向けた最大のハードルとなるのは、自国の極超音速ミサイル開発を並行して行う必要があるという点だ。国防総省は自前の極超音速ミサイルの開発に2023年度だけで50億ドル、24年度は110億ドルの予算を要求している。クウィアトコウスキー氏は「米国のミサイル開発は今後数年間でかなり進歩するだろう」と指摘している。
米国の計画が遅れているのとは対照的に、ロシアはすでに3種類の極超音速兵器を配備しているほか、中国も2種類を保有している。北朝鮮も開発を進めているほか、配備の可否は不明なもののイランも実験に成功したと主張している。
クウィアトコウスキー氏は日本、フィリピン、米国の三角同盟が米国のアジア太平洋戦略で重要な鍵となると指摘する。

「この対極超音速兵器ミサイルの開発は数年前から米レイセオン社が進めている計画であり、日本が貢献するのは太平洋での演習と実験へのアクセスだと期待されている。建前では計画は防衛的性格を帯びているが、日本国内における米軍のプレゼンスの『必要性』を高めることも目的となっている。同時にフィリピンでの米国のプレゼンスが高まっていることを考慮すれば、米国防総省は南シナ海での三角同盟を作ることになるだろう」

カレン・クウィアトコウスキー
米空軍退役中佐・米国防総省元分析官
クウィアトコウスキー氏は、米国が極超音速兵器を実用化する頃には、ロシアはよりハイスペックな兵器を開発しているだろうとするウラジーミル・プーチン露大統領の言葉を引用する。ロシアは世界で初めて極超音速ミサイルを開発した。これは米国が2002年にABM条約を一方的に破棄したことを受けた対応だった。
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論理的に考えれば米国防総省は常に追いつくために数十億ドル、数百億ドルをつぎ込むのではなく、極超音速ミサイルの購入や技術を盗むことに注力すべきだと、クウィアトコウスキー氏は主張する。

「軍事力を背景として世界帝国を維持しようとした前世紀の思想は捨て去り、米国は自国民の世話をすべきだ。だがどの国も、衰退期には自国の影響力と同盟国を優先する。米国の場合は、海外への投資や1兆ドル以上の大金を利用して軍産複合体に袖の下を握らせることで、自らに利益をもたらそうとしている。

 私が思うに、世界の他の国々にとっての課題は、深刻な内憂外患、不合理な軍事目標、一貫した貧弱な政治的リーダーシップ、悪化する財政予測を抱える米国という軍事国家とどのように付き合っていくかだ。残念ながら、今は誰にとっても危険な時期を迎えている」

カレン・クウィアトコウスキー
米空軍退役中佐・米国防総省元分析官
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