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    南シナ海で日韓は戦略的価値を共有しているのか

    南シナ海で日韓は戦略的価値を共有しているのか

    © REUTERS/ Lee Jung-hoon/Yonhap
    アジア
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    徳山 あすか
    199653

    慰安婦問題ばかりがクローズアップされがちな日韓関係だが、両国の立場の齟齬は別のところからも生じている。日韓関係に詳しい新潟県立大学大学院・国際地域学研究科の浅羽祐樹(あさば・ゆうき)教授は、安全保障面でも、経済面でも、日韓の立場の相違が鮮明になってきたと指摘している。特にそれが顕著なのが、南シナ海問題に対する対応だ。

    浅羽教授「10月中旬、米韓首脳会談後の共同記者会見で、オバマ大統領は朴槿恵大統領に対して、『南シナ海』の名称こそ出さなかったものの、『中国が国際的な規範やルールに反する行動をとったときには韓国が我々と同様に声を上げることを望む』と発言しました。条件節というオブラートに包まれていましたが、狙いは、『中国はすでに南シナ海で国際規範やルールに反する行動を繰り返し、国際秩序に挑戦している。にもかかわらず、同盟国のはずの韓国は我々の側に立って同じ声を上げなかった』と警告することにあったのは明らかです。その直後に、アメリカは在日米軍所属のイージス艦を南シナ海に派遣し、中国が埋め立てた環礁の12カイリ以内で自由に航行させました。

    良くも悪くも、日本はアメリカとタッグを組み、力による一方的な現状変更の試みは許さない、と立場がはっきりしています。ところが韓国は、南シナ海について『平和的に解決されなければならない』といった曖昧な表現に終始しました。一体何をもって『平和』と言うのでしょうか。その気になれば、アメリカがイージス艦を南シナ海に派遣したことを、平和を乱す行為であると言い張ることもできます。最近ようやく航行の自由の重要性を明言するようになりましたが、中国に対して釈明もできるようにしているわけです。この曖昧な部分について、日韓首脳会談で安倍晋三首相は朴大統領に問いただしたのです。アメリカは、自らが主導してきた戦後レジーム規範やルールに基づいたリベラルな国際秩序の中で、日本も韓国も利益を受けてきた以上、それを維持するために日韓両国は同盟国として応分の役割を担う責任があると考えています。朴大統領は『朝鮮半島に限定』されていた米韓同盟を『グローバルな同盟』に格上げしたと自負していますが、アメリカからすれば、それならばなお一層、はっきりと自分の側に立たない韓国は『裏切り者』のように見えるわけです。

    一方、北朝鮮問題に対しては『日米韓』の枠組みは依然として重要で、有効です。北朝鮮が核実験やミサイル発射を行う兆候が見られる中で、これを抑止するためには『日米韓』の安保連携が重要であるということが改めて確認されました。ただし、あくまでも『対北朝鮮に限定』『朝鮮半島に限定』というわけです。朴大統領もオバマ大統領との会談で、この枠組みは重要だと発言しました。しかし、同時に『韓中日』と『韓米中』という枠組みにも言及し、北朝鮮との統一問題でも『韓米中』だと踏み込みました。

    日韓関係の悪化の原因は、『日韓』以外に目を向けることで初めて見えてきますし、その対処法も探ることができます。奇しくも、『日韓』首脳会談は『日中韓』首脳会談という多国間関係に連動しましたが、『日韓』という二国間関係は『日米』『日中』、『韓中』『韓米』といった他の二国間関係や、何より『米中』の行方に対する日韓それぞれの認識のズレに左右されるわけです。

    韓国は、安保政策ではアメリカを重視し、経済政策は中国を重視すると言いつつも、すでに安保も中国重視にシフトしたのではないかという日米の疑いは払拭されていません。韓国は中国が創設したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加わりましたが、これは単なる経済的なグルーピングではなく、これからは中国が経済秩序をつくるんだというマニフェストです。オバマ大統領は、『中国のような国には世界経済のルールは書かせない』と断固たる姿勢です。その最たるものがTPPで、ここでも日米が機軸です。それに対し中国は、中韓FTAを一層加速させることで『日米韓』を断ち切ろうとしています。日中韓首脳会談に先立って行われた中韓首脳会談の狙いは『中国による韓国の抱き込み』でしたね。

    経済的にも軍事的にも韓国がどちらの陣営なのか、かなり鮮明になりました。韓国のどっちつかずの対応は、もういいかげん許されなくなってきています。南シナ海に海上自衛隊を在日米軍とともに派遣するというのは、能力的にも政治的にも今は無理でしょうが、日本は米軍の行動を支持し、さらに国際的な戦後レジーム、リベラルな国際秩序を守護すると行動でコミットしています。国際秩序のあり方自体が問われている中で、どう針路をとるのかという国家戦略のレベルで日韓は食い違っています。そうした戦略的な利害や価値観の齟齬は、たとえ慰安婦問題が妥結したとしても、そのまま残るでしょう。そのときになってようやく、日韓対立の要因は慰安婦問題(だけ)ではなかったということが、誰の目にもはっきりするでしょう。」

    聞き手:徳山あすか

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