10:48 2018年09月26日
アレクサンドル・イヴァシンさん

ロシア人尺八奏者が語る、運命の出会いとソーセージ入りおにぎり【写真・動画】

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アレクサンドラ アリューシナ
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ロシアでは日本の古典音楽への人気が年をおうごとに高まっている。モスクワでは12月23日、音楽祭「日本の魂」が終幕する。この「日本の魂」はモスクワ音楽院で1999年から毎年開催され続けており、この中で日本の有名な師匠による古典音楽のコンサート、レクチャーが行なわれている。

そうした日本の古典音楽の中で尺八の音楽はロシアでどのように広がり、受け止められているのか。スプートニクはロシア人尺八奏者のアレクサンドル・イヴァシンさんに取材を行なった。アレクサンドルは虚竹会琴古流尺八を終了し、「尺八の深い理解を有することを示す」奥伝の免状を有している。

尺八に出会う前のアレクサンドルさんはそれとは何の関係もない生活を送っていた。自動車の整備工として働いていた彼が尺八との出会ったのは、幸せな偶然だったと語る。

「モスクワを歩いていた時のことです。聞いていたプレーヤーのカセットが終わったのでひっくり返そうとしました。その時です。私の耳が自分の周りでなっている音をとらえはじめ、そこに尺八の音色が飛び込んできたのです。私は尺八のコンサートが行なわれていた音楽院の脇を通り過ぎようとしていたのでした。何がこんな音を出しているのだろう。これは是非とも見てみなければ。私は音に誘われるままに音楽院の階段をのぼり、とうとう扉を見つけました。その向こうからこの不思議な音が流れ出しているのです。1分くらい聴いてからまた散歩を続けようと思いました。で、その1分がいまだに続いているんです。」

尺八に没頭するあまりアレクサンドルさんの人生はがらりと変わった。専門的に尺八を勉強するため、先の展開が読めないまま仕事を辞めた。アレクサンドルさんは尺八を肌身離さないという。それはどこで突然吹きたいと思うかわからないからだ。

「あるとき森で腰掛けて尺八を演奏していたときのことです。ふと目をあげると、すぐ近くでリスが座って聞き入っていました。」

アレクサンドルは虚竹会琴古流尺八を終了し、「尺八の深い理解を有することを示す」奥伝の免状を有している。
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アレクサンドルは虚竹会琴古流尺八を終了し、「尺八の深い理解を有することを示す」奥伝の免状を有している。
アレクサンドルさんは今、本物の尺八を手にしているが、最初から練習できるような尺八はなかったという。唯一あったのはプラスチックの安物の尺八で、それも練習希望者が多かったので1日わずか1時間吹くことができればいいほうだった。それでも指の練習をしなければならない。これにはみんな、床ブラシの柄やスコップの柄にマジックで黒く穴を書いて使っていた。

日本の先生方はロシアには教えに来てくださるが、まだロシアには尺八を専門とする教師は存在していないため、尺八を習うロシア人のほとんどはYoutubeの演奏を手本としている。アレクサンドルは残念ながらこれは正しい学び方ではないと語る。尺八は「心から心へ」伝授されうる芸術であり、先生はどうしても欠かせないというのが彼の見解だ。

アレクサンドル・イヴァシンさん
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アレクサンドル・イヴァシンさん

アレクサンドルさんによれば、ロシアでは日本の古典音楽に対する、特に尺八に対してますます関心が高まっている。コンサートを訪れるお客さんの数も毎年増える一方だ。アレクサンドルさんは古典音楽を聴くことで都会の喧騒から解き放たれ、自分自身に「耳を傾ける」ことができると語る。

「私は自分のコンサートでは明かりをみんな消しますので、私のところにはみなさん、寝にこられるんですよ。目を覚まされて『あれ、え~! もう2時間過ぎたの? いや~、こんなに熟睡したのは久々だなぁ』とおっしゃられて。ということは聴かれる方は音楽にどっぷり浸かって奏者の呼吸と一体化し、そのあとリラックスして眠りの世界に入られているんですよ。そして目を覚まされたときは気分がよくなられている。

これはつまり、こうした芸術がモスクワのようなこんな大都会には欠かせないということなんです。俗世間の問題を忘れ、それから離れてリラックスするためにこれは助けになるんです。

モスクワは大きな町でしょう。星を見ようと空を見上げることもあまりありませんね。」

アレクサンドル・イヴァシンさん
© 写真 : Alexander Ivashin
アレクサンドル・イヴァシンさん

アレクサンドルさんは先生に習うために定期的に日本を訪れている。日本にいるときはいつも思いがけないことが起きるという。

ある日真夜中12時にアレクサンドルさんはコンビニに入った。冗談でルーブルで支払をしてもいいですかと聞いたところ、突然並んでいたお客さんの間から流暢なロシア語で「ルーブル払いはだめですよ!」という声が上がった。

驚いて振り向くと声の主は日本人男性。なんと、ロシアが好きでペテルブルグに10年も住んだことがあり、ドストエフスキーを全作品原文で読んだという。

日本滞在中の楽しみは食べ物にもある。アレクサンドルさんはすっかり和食のファンになった。ロシアに帰ってきてもなんとか日本食もどきをつくろうとしている。時に全く和食らしからぬ材料を使うこともある。

「これ、言ってしまっていいのかなぁ。あるときおにぎりを握っていて冷蔵庫にあるものから具を探したらソーセージとチーズしかなくて。(まぁいいや、これでも)と思ったらこれが意外と当たりだった!」

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