06:24 2019年11月18日
TPP離脱はパートナーとしての米国の確かさを疑わしいものに

TPP離脱はパートナーとしての米国の確かさを疑わしいものに

© AFP 2019 / TOSHIFUMI KITAMURA
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ドナルド・トランプ氏は、自分の選挙公約を果たし、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から米国を離脱させた。

大統領選挙戦の間すでに彼は、この協定を「米国経済にとってのカタストロフィ」と呼び「公正な二国間協定」を結ぶ方が良いとの立場を示していた。そうした事から彼は、TPPの生みの親で、自分が大統領としてなした主要な成果であるとみなすオバマ氏の、まさに「功績」を葬り去り、それに終止符を打った。その際、中国というファクターが、アジアにおける米国の「リバランス」政策の核であり、まさに中国に対抗するものとして、TPPが考えられたという事は、誰にとっても周知の事実である。

多くの専門家らは、こうした決定の中に、明らかな矛盾を見ている。まずは何よりも、アジア太平洋地域における米国の戦略的利益に矛盾している。ロシアの国際政治の専門家、フョードル・ルキヤノフ氏は「トランプ氏が、TPPからの離脱を筆頭に、すでに最初に講じた措置の数々は、彼の行動において、はっきりとした戦略が、今のところ推測できない事を示している」とし「一方でトランプ氏は、中国に圧力をかける意志を示しながら、他方では、TPP参加を取りやめにしている。この協定は、他でもない中国に対抗するために思いつかれたものなのにだ。この事は、彼の論理を理解するのを困難にしている」と指摘した。

またベトナムの政治学者、グエン・ダンファト氏は「米新政権が、前大統領時代に下された決定を放棄するという状況は、グローバルな性格を持っている。それゆえ不安が生じるのは全く当然だ」と指摘し、次のように続けた-

「米当局が下している決定は、十分に考え抜かれたものなのか、十分信頼できるものなのかという疑念が生じている。米国のようなパートナーは、どれほど確実な存在なのか、というわけだ。米国のTPP放棄により、この組織の今後の運命に関し、あまりにも多くのことが不明となっている。TPPは、米国なしでも存在し得るだろうか? 米国の代わりに、TPPに新しい参加国を招くべきだろうか? こうしたすべてのことを、綿密に分析する必要がある。どのような場合でも、地域には、別の貿易経済協力の形や自由貿易ゾーンが存在している、例えば、アセアンと中国、ベトナムとロシアそしてユーラシア経済連合諸国との間の協力である。」

実際、米国がTPPへの参加を拒否したことは、個々の国々を袋小路に立たせたばかりでなく、世界貿易の全体的仕組みに反している。米ボルチモア・ホプキンス大学の中国人教授の一人も、そう捉えている。彼の主張は、次の通りだ-「米国は、中国の主要な貿易相手国であり輸出相手だ。しかし同時に、中国は、日本など他の国から、ハイテク部品を輸入し、インドネシアやマレーシアからは、燃料や原料を輸入している。つまり中国は、原料を輸入し、そこから工業製品や大衆消費財を作り出し、米国に売っているのだ。もし米国が、保護貿易主義的政策をとるならば、米国の消費者は、世界貿易の仕組みに反することになる。もし中国が、自由貿易に向けた別のプロジェクトを作り出した場合、どうやって新たな買い手を見つけるかという問題が生じる。」

さて日本だが、トランプ新政権の登場によって、特別複雑で困った状況に置かれてしまった。世界銀行の予想では、TPPに参加した場合、米国経済の成長率は0.4%増えるだけだが、日本には、失うものと、そのために戦うのもがある。TPP協定に向けた準備に、日本が数年を要したのも偶然ではない。

ロシア最高経済学院のエキスパート、アンドレイ・フェスュン氏は、次のように指摘している-

「事実上、日本は、自分達の農業を完全に放棄しなければならなかった。国産品を、近隣諸国からの物にとって代えようとした。

その代わりに日本は、自動車を、まず米国を筆頭に外国で免税販売し、そこから巨大な利益を得るはずだった。そうした観点から言えば、安い日本の自動車製品のために米市場を解放するというオバマ政権の政策は、論理的ではないように思われる。現在、日本側は、トランプ政権の間は、TPP協定は達成されないだろう、それゆえ他のバリエーションを模索する必要があると認識している。」

安倍首相は、それでもやはり、TPP協定の意義について「米側の理解を得たい」と希望を捨てていない。国際経済に詳しい杏林大学の馬田啓一名誉教授は、TPPに対するトランプ氏の対応ぶりについて、ビジネスマンとしての彼の経験が反映していると指摘し、次のように分析した-「彼は米国の不動産王として名を馳せた人物で、体に染みついた不動産ビジネスの常套手段を外交戦略に使っている節がある。どんなに優良な物件(TPP)でも絶対に買いたい(批准)とは言わず、ケチをつけて買わない素振り(TPP離脱)を見せて、売り手にもっと値段を下げさせる(再交渉)。このような筋書きがあってもおかしくはない。まずは米国を、再交渉の土俵に引きずり込むことができれば大成功だ。そうすれば時間はかかっても、衣替えし厚化粧させた形でTPP修正版が成立するだろう。日本は現行TPPの発効にばかり固執せず、セカンドベストの選択をするべきであり、もうその方向に舵を切っている。」

もし、それもうまく行かない場合、恐らくTPP参加国は、更なるパートナーシップに固執しないだろう。そんなことをすれば、米新政権を無視ずることになってしまう。まもなく、すでに形成された貿易連合の強化が始まるだろう。例えばベトナムは、16の国際的な経済統合体の参加者だ。そうした組織の中には、アセアンやユーラシア経済連合のような巨大なものも含まれている。

中国も、アセアンや、アジア太平洋地域における自分達の主要なパートナー国、インド、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを含めた、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の合意に向けた交渉を積極化した。こうした経済統合体のGDPの合計は、世界全体の30%となることが明らかになっている。

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TPP, 日本, 米国
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