02:50 2020年09月25日
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日本の若手俳優、三浦春馬さんが7月18日に自殺したことが明らかになった。30歳だった。自殺の理由は明らかになっていないが、ストレスの多い仕事環境やネットの誹謗中傷が原因という説もある。常にカメラにつけまわされている芸能人にとって、インターネット上の心ない発言は、自殺への絶望的な一歩を踏み出すための最後の一押しになることがある。アイドルが悲惨な死を遂げるたびに、社会ではネット上でのコメントの規制や人々の心のケアに関する議論がなされているが、最適解はまだ見つかっていない。

7月18日、三浦さんは都内の病院に搬送され、死亡が確認された。港区の自宅で首を吊っている三浦さんをマネージャーが発見した。警視庁は自殺とみている。

三浦さんが自殺を図った原因として、「ネット民」と「コロナ鬱」が挙げられている。新型コロナウイルスが流行していた3月に三浦さん主演のミュージカル『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』が公演を実施したことで、ネット上では三浦さんについて活発な議論がなされていた。その中には、『なぜこの時期に公演をするんだ!』という三浦さんに向けられた批判も含まれていた。

批判は長引くうつ病の原因になることが多く、芸能人や著名人は自殺することもある。クリエイティブな活動を営む人々は、特に世論に左右されやすく、ファンを失ったり、誤解に直面すると、より激しく反応してしまう。「27クラブ」という言葉がある。これは27歳で亡くなった影響力のあるミュージシャンたちのことで、奇妙な状況下で死亡することが多く、その死因の一つが自殺だ。

しかしアジアでは、厳格な家父長制とプロデューサーへの強い依存がこの傾向を悪化させている。日本や韓国では、芸能プロダクションが所属するタレントを一般社員と同様に扱い、従順であることや規則を必ず守ることを要求する。これはコンサートやレコーディングに限らず、契約期間中のアイドルの生活全般に及ぶ。

ネットの誹謗中傷に耐えられない韓国のアイドル

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アイドルグループf(x)(エプエクス)の元メンバーのソルリさん(本名チェ・ジンリ)

韓国では2015年から若手芸能人の死亡事件が続いている。ソジンさんは、女性アイドルグループKARAの新メンバー候補生を選出する「KARAプロジェクト」に出演し、広く知られるようになった。だが同時に長期にわたるうつ病にかかった。うつ病を治すことができなかったソジンさんは2015年2月24日、マンションの庭で死亡しているのが発見された。ソジンさんはマンションの窓から飛び降りたとみられている。

また強い衝撃を与えたニュースとして、韓国の男性アイドルグループ「SHINee(シャイニー)」の元リーダーでボーカルを務めたジョンヒョンさんが2017年に亡くなったことも挙げられる。

SHINee は2008年にジョンヒョンさんを含む5人のメンバーで結成された。9年間で韓国語アルバムを6枚、日本語アルバムを5枚の計11枚を制作。グループは精力的な活動と続けていたが、ジョンヒョンさんは長い間うつ病に悩まされていた。ジョンヒョンさんは、2017年12月18日、一酸化炭素中毒で亡くなった。27歳だった。

韓国の女性アイドルグループf(x)(エプエクス)の元メンバーのソルリさん(本名チェ・ジンリ)はその進歩的な考えからメディアやSNSで誹謗中傷を受けていた。ソルリさんは自らをフェミニストと称し、女性が服や物を自由に選ぶというポリシーを貫いていた。しかし2019年10月14日、マネージャーがソウル近郊の自宅でソルリさんの遺体を発見した。ソルリさんは25歳の若さで自殺した。ソルリさんの死後、韓国ではSNSの悪質コメントに対処する法案「ソルリ法」が検討された。

しかし、それから1か月後、ソルリさんの親しい友人であった歌手で元KARAのク・ハラさん(享年28)が自殺した。ク・ハラさんは2015年にソロ活動を開始し、同年にファーストアルバム『ALOHARA(Can You Feel It?)』をリリースしたが、2019年5月26日に自宅で自殺未遂を起こし、入院した。ク・ハラさんは助かったものの、その半年後、親友の後を追うように2度目の自殺に踏み切った。11月24日、ク・ハラさんはソウルの自宅で遺体で発見された。わずか28歳だった。元恋人が私的な写真をネットに流出させようと脅迫していたことが、自殺の原因として考えられている。マネージャーによると、ク・ハラさんは重度のうつ病に悩まされていた。ク・ハラさんの死後、パートナー双方の同意を得ずに性行為を密かに撮影することにより厳しい罰を求める請願書に20万人以上が署名し、青瓦台(韓国大統領府)に提出された。

2017年に短編映画「愛の温度」でデビューした韓国人俳優のチャ・インハさん(享年27)は、2019年12月3日に自宅で遺体で発見された。チャ・インハさんは、2枚のアルバムをリリースした俳優グループ「サプライズU」のメンバーとして知られていた。遺書は見つかっておらず、死因も明らかにされていないが、多くのファンは芸能界の過酷な労働環境によって自殺に追い込まれたとの確信を示している。

韓国で自殺はレアじゃない?

韓国は世界でも最も自殺率の高い国の一つ。さらに自殺は、40歳未満の代表的な死因の一つでもある。英ガーディアン紙によると、韓国人は心のケアを求めることを恥ずべきことだと考えており、これはK-POPスターも例外ではない。K-POP業界に関するドキュメンタリーを制作し、本を執筆した韓国のジャーナリスト、イ・ハクジュン氏によると、俳優や歌手という職業は特に心理的ストレスを受けやすい。スターは1日中 SNSでその動向を注目され、私生活に関するフェイクは瞬時に拡散される。

アイドルは常に汚れのない存在でなくてはならない

労働環境の厳しさからストレスを溜めているのはK-POPスターだけではない。J-POPアーティストは契約中に恋愛関係を築くことが許されていないため、交際がスキャンダルの原因となることがある。2013年には日本の女性アイドルグループAKB48の1期生の1人、峯岸みなみさんが19歳の恋人とのお泊まりが報じられたことで頭を剃り、動画で謝罪した。プロデューサーは峯岸さんを許したものの、10年間正式メンバーとして活動してきた峯岸さんを研究生(新人クラス)に降格させた。

元AKB48の平嶋夏海さんと米澤瑠美さんは2012年、「2ちゃんねる」で男性とのデート写真が流出したことによりAKB48の活動を辞退した。

元AKB48メンバーの指原莉乃さんも活動5年目に週刊文春で交際を報じられたことで苦しむことになった。匿名の元恋人が同誌に指原さんと交際していたことを暴露。指原さんはその内容は全て嘘であると主張したが、運営側から厳しい処分を受けた。メイングループのAKB48から除籍され、東京から遠い福岡県の博多を拠点とするAKB48より知名度の低かったHKT48に移籍させられた。

しかしタレントには契約があったとしてもダブルスタンダードが存在する。男性芸能人の場合は常にペナルティを課される訳ではない。峯岸みなみさんの恋人はファンに謝罪し、それだけで十分だった。しかし、もちろん例外は存在する。男性アイドルグループKAT-TUNの赤西仁さんが2012年に電撃結婚した時は、大スキャンダルが巻き起こった。赤西さんは同年春に日米ツアーを予定していたが、赤西さんの所属事務所は結婚が事後報告となったことのペナルティとして、日本の全国コンサート中止を決定。さらに、赤西さんの芸能活動を1年半休止させた。

ネットいじめとの戦いには無力?

ネットでの誹謗中傷を苦に自殺するのは韓国だけではない。日本でも誹謗中傷による自殺が起こっており、それは歌手や俳優だけではない。女子総合格闘家の元プロレスラー、木村響子さんの娘の木村花さんは、ネットフリックスのリアリティ番組「テラスハウス」出演時の言動によりネットで誹謗中傷を受け、それを苦に2020年5月に自殺した。木村花さんは、日本の女子プロレス団体「スターダム」のスターだった。同番組シリーズの「TOKYO 2019-2020」で木村さんら出演者内に対立が生じ、それを見たファンや視聴者が木村さんにSNSで誹謗中傷を書き込んだ。

そして2020年5月23日、木村花さんは自殺。木村さんは亡くなる前、ネットいじめを訴え、ツイッターやインスタグラムに別れの言葉とも取れる内容のメッセージを投稿していた。木村さんの死亡が報じられた後、ジャーナリストやレスラー、ファンたちがネットの誹謗中傷が深刻な結果につながることを忘れないようにと呼びかけた。

法律は救世主となるか?

SNSの出現により、地理的、時間的、個人的な接触なしに、それまでは不可能だった有名人とのコミュニケーションが可能となった。しかし、残念なことに、この機会を利用して有名人に人種差別的、ミソジニー(女性嫌悪、女性蔑視)的、ホモフォビア(同性愛嫌悪)的な発言をするネットユーザーもいる。

マイクロソフト社がまとめた「デジタル文化指標2019」によると、世界のネットユーザーの約51%がネットの誹謗中傷にさらされており、いくつかの国ではこの数字がさらに高くなっている(例えば、ロシアは約78%)。ネットいじめが人間の心理的、感情的、身体的な健康に与える影響は非常に大きい。ロシアのコンピューターセキュリテイ会社カスペルスキーの調査によると、ネットいじめを受けた子どものうち、その影響が出なかったと回答した親は5%だけだったという。それ以外の子どもの親は、自分の子どもが強いストレス(55%)、自尊心の低下(45%)、学業の不振(40%)、うつ(40%)、社会的活動の低下(35%)、不眠症(20%)に陥ったと答えた。

いくつかの国では、政府がネットいじめを止めるために大胆な試みを行っている。例えば米国のドナルド・トランプ大統領は、ツイッターが自社の目的や理念のためにコンテンツを規制する場合、ツイッターを閉鎖すると脅した

韓国ではソルリさんの自殺を受けて、議員がインターネットセキュリティに関する新法を提出した。しかし問題は、この新法の運命が過去のものと同じ道を辿らないかどうかだ。韓国では2007年、インターネット空間の安全性を確保しようとする試みがすでに行われていた。当時、SNSに登録する際は実際の連絡先(名前と電話番号)の入力を義務付けたが、大きな効果は得られなかった。この法律が可決された後、ユーザー情報を保存するデータベースへの攻撃がより頻繁になり、後に同法は違憲と判断された。

長年にわたって社会で形成された暗黙のルールが存在する場合、法律は万能ではない。ロシアのマイクロソフト社で政府機関担当のマネージャー、エルザ・ガネエワ氏は「年を追うごとに、実際の世界とデジタル世界の境界線がどんどんぼやけてきています。ですから、オンラインとオフラインの環境でコミュニケーションの共通のルールを守ることがとても重要です」とコメントしている。

専門家らは、ネットいじめを受けた場合、いじめが発生したSNSにすぐに報告するようにアドバイスしている。そのSNSはユーザーに対応し、誹謗中傷のコンテンツを追跡するための方法を発展させる。

多くのSNSには、プライバシー設定が存在し、動画の閲覧や書き込みなどができるユーザーを管理することができる。

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映画, 音楽, 文化, 韓国, 日本
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