00:53 2021年09月26日
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ユネスコ(国連教育科学文化機関)は今年も新たな物件を世界遺産に登録した。しかし同時に、12年ぶりとなる世界遺産登録の取り消しを行なった。今回、登録抹消となったのは「ビートルズ」の故郷、リバプールである。この決定は、中国福建省、福州市で開かれた第44回ユネスコ世界遺産委員会で採択された。2020年の世界遺産登録は、新型コロナウイルスの感染によるパンデミックにより延期されていたことから、今年の委員会では、2020年と2021年の候補地の審議が行われた。

良い報せ

2021年、日本、中国、韓国、タイ、トルコ、グルジア(ジョージア)、ロシア、その他の国々の自然遺産、文化遺産、景観など、類まれな特徴と普遍的、歴史的価値を持つ物件が新たな世界遺産に登録された。

たとえば、今回、新たに登録されたのは、11世紀から14世紀にかけて、外国人の商人にとっての主要な港であった中国の泉州史跡群である。世界各地を旅したマルコ・ポーロはこの泉州を、世界でもっとも繁栄した街の一つだと評した。ここからモンゴル人は日本遠征に出発したのである。しかし同時に、泉州は、仏教寺院とヒンドゥー教寺院、イスラム教寺院、そしてカトリック教会やフランシスコ会の修道院を含むキリスト教会を持つ国際的な中心地でもあった。今回、この物件が新たに世界遺産に登録された結果、中国の世界遺産の数は56となった。

泉州史跡群
© Depositphotos / Аnirut
泉州史跡群

日本にも世界に誇るべきものがある。今回、北海道、青森、岩手、秋田にある17の遺跡群が世界遺産として登録されることとなった。これらは、採集、漁労、狩猟により定住した縄文時代の人々の生活と精神文化を伝える文化遺産である。一方、自然遺産では、奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島が新たに世界遺産に登録された。この島々は、90%以上が亜熱帯の手つかずの森に覆われているが、生物の多様性という意味でも非常に高い価値を持っており、世界でもここでしか見ることができない植物、動物の固有種が数多く存在する。

奄美大島
奄美大島

一方、ロシアで新たに世界遺産に登録されたのは、オネガ湖と白海のペトログリフ(岩絵)。カレリア共和国にあるオネガ湖の岩盤には1200以上、そして白海の岩盤には3411の岩絵が残されており、紀元前4000〜3000年前のものと見られている。人や鳥、動物、狩りの様子などが描かれており、石器時代にも創作活動が行われていたことを物語っている。

悪い報せ

今回ユネスコは、リバプールの世界遺産登録を取り消すとの決定を下した。歴史的な地区の「卓越した普遍的価値」が再開発により失われたというのが理由である。歴史的な建物のそばには、まもなく高層ビルやクルーズ船の発着場、そして52,000人を収容する新しいスタジアムが建設されることになっている。

リバプール
© Depositphotos / Debu55y
リバプール

ユネスコは、数年にわたり、リバプール市政府に対し、再開発計画によって、世界遺産の登録が抹消される可能性があると警告していた。

世界遺産の登録抹消という残念な運命を辿ったのはこれが3例目である。2007年にはオマーンのアラビアオリックスの保護区、2009年にドレスデンのエルベ渓谷がそれぞれ登録を取り消されている。しかも、ユネスコは英国に対し、ストーンヘンジの世界遺産地域の地下にトンネルを建設する計画であることを理由に、こちらの世界遺産登録も取り消す可能性があるとしている。ユネスコの専門家によれば、建設されることになるトンネルがあまりにも短いことから、世界遺産に脅威を与えることになるという。そこで英国政府に対しては、2月までにこのトンネルの長さを延長するよう時間的猶予を与え、これに従わない場合は、ストーンヘンジを「危機にさらされている世界遺産」のリストに含めるとしている。

世界遺産に登録されるとどのような利点があるのか?

世界遺産登録の取り消しは制裁を課すものではない。グリーンピースロシア支部で自然資産区域保護プログラムを率いるミハイル・クレインドリン氏は、「スプートニク」に対し、もっとも大きな損失はイメージダウンであると述べ、次のように語っている。

 「それでも、毎年、各国が世界文化遺産、世界自然遺産の登録申請をするのは無意味なことではありません。これは記念物に対する文明的な態度であり、また世界遺産に登録されると、ユネスコが国際的な管理とモニタリングを行なってくれることから、遺産の保全を追加的に保証してくれるものでもあります。さらにこれは、これらの遺産を維持するための資金を、世界遺産基金を中心に、優先的に引き込むことを可能にしてくれるものであり、その物件の権威を高め、観光という観点で大衆化を推し進めてくれます。世界遺産としての認定を取り消されるということは、遺産を保護するために与えられるユネスコからの財政的、技術的な支援を受けられなくなるということを意味します。このような援助は、貧しい国にとって必要不可欠なものです。しかも、世界遺産に登録された物件は、軍事紛争や自然災害の際、国際協定の枠内で保護してもらえます。ユネスコはいきなり世界遺産登録を抹消したりしません。まずその物件がある政府と協議を行い、危機遺産リストに含められるのです」。

ロシアでは、バイカル湖、カムチャツカ火山、西カフカスが危機遺産リストに含められる可能性がある。

バイカル湖
© Sputnik / Kirill Shipitsin
バイカル湖

これらそれぞれの物件に、詳細に調査すべき問題がある。2022年、それぞれの場所に3つの調査団が派遣され、その結果が2022年の夏に世界遺産委員会で検討されることになっている。世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約の締結から50年を記念した節目の委員会は、ロシアのカザンで開かれる。

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