03:09 2020年08月14日
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ヘンリー王子、メーガン妃の英王室「離脱」 (13)
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もう何週間も世界のマスコミの表題から「英国」の文字が消えていない。その原因は何年もの歳月を経て、ようやく1月31日にゴールを迎えるEU離脱という政治、経済の大変化ではない。英国に無関心ではいられない人々の目を惹いているのは、それに劣らず込み入った話題、英国王室ファミリーの「亀裂」の危機だ。これは世界有数の歴史と伝統を誇る政治制度に関わる話であり、見方を変えれば、いつもいつも全員が同じ意見で平和に暮らせるというわけではないという、ごく普通の家族の問題なのだが。


「君主制への裏切り」

ヘンリー王子とメーガン妃(サセックス公爵、サセックス公爵夫人)は1月8日夜、英国王室の高位王族の地位を退き、地位に関する特典を経済的なものも含めて辞退するつもりであることを明らかにした。ふたりが発表した、英国と北米(カナダ)に半年ずつ居住し、経済的な自立を目指すという話は前例のない事態だ。

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Публикация от The Duke and Duchess of Sussex (@sussexroyal)

突然の決意表明は様々な受け止め方をされた。王室メンバー、ジャーナリスト、世論から出されたコメントはあまりに数多く、それをまとめることは極めて難しいが、スプートニクはそれらの基調となる立場を絞り込んでみた。


「女王は嘆き悲しみ、王室は激怒」

ヘンリー王子、メーガン妃の決意表明が発表された後、バッキンガム宮殿内の王室に近い消息筋からは、エリザベス女王がふたりが王室メンバーの誰にも相談せずに決定したことを「深く悲しんで」おられ、王室の他のメンバーらは「怒り心頭」しているという情報がもたらされた。

​BBCニュースは、ヘンリー王子とお妃の決意表明は王室のメンバー全員にとって「痛切」の極みであったと書き立てた。

しかしともあれ、エリザベス2世が最終的に(かつ実に手短に)発表した声明は、比較的にふたりを支持する内容だった。

その声明には「私の家族と私は、若い家族として新しい生活を始めたいというヘンリーとメーガンの望みを全面的に支持します。私たちは、2人がフルタイムで働く王室の一員であり続けることを望んでいましたが、より自立した生活を送りたいという2人の意向を尊重し、理解します」と書かれている。

ところが英国のマスコミは表向きに抑制をきかせた表現などは選ばなかった。

プレスはこれを 「突然の海外移住」、「まさか」と書き立て、「裏切り行為」、「あまりに無謀」という表現まで飛び出した。

これだけ激しい論調や怒りに満ちた非難が向けられる根拠は何だろうか? ヘンリー王子が王位を継承することは恐らくない(王位継承順位は6位)。このため、ある一定の自由は許されている。それにその自由をヘンリー王子は使っていた。メーガン氏との結婚がそうだ。相手は米国人(!)であり、しかもアフリカ系(!!)であり、加えて一般市民(!!!)の家庭の出だ。これを考えれば、ヘンリー王子の決定は全く予期せぬものだったとは言い難い。

© AFP 2020 / Tolga Akmen
メーガン氏

ところが状況はずっと込み入っている。その上、サセックス公爵夫妻にこれだけ厳しい批判が集まる理由は次に挙げるファクターに起因する。

第1に、王室は英国のイメージ向上に尽くしてきたヘンリー王子、メーガン妃の著しい貢献を失う。おふたりは常時世界中をまわり、慈善活動に参加してきた。

第2に、ヘンリー王子、メーガン妃家族にかかる費用はこの先誰が払うのか? 王室費を受け取らないとしても、警備、住居の修繕費、医療費、生活費などはこれまで通り英国民の税金で支払われ続けることになるのか?

第3に、大方が保守的な一般の英国民にとっては、こうした決定は愛国精神に反した、自己中心的な行為に映る。なんといってもこれは英国民に仕えるべき王室の話だからだ。

SNS上に現れる一般市民の意見は賛否両論真っ二つに割れているが、その両方から偽善だ、感謝の気持ちがないという非難が飛んでいる。反対を唱える側では英国のEU離脱「Brexit(ブレクジット)」をもじり、MeghanとExitを合わせたハッシュタグ #Megxit(メグジット)が盛んに使われている。


「イージーだとは思っていなかった。でもフェアだとは思っていた」

ヘンリー王子とメーガン妃が決意を固めた理由は公式的には明らかにされていないが、大方の見解はこの若夫婦が(先日、息子のアーチ―ちゃんが誕生したばかり)終始、人目にさらされる生活から遠ざかりたかったからではないかというところに落ち着いている。

マスコミのヘンリー王子、メーガン妃への追跡はかなり執拗だった。

英国王室は昔から一貫して自制したコメントしか発表してこなかったが、若夫婦はこの例に習わず、取材に何度も「社会からの注目が重荷」だと正直に語ってきていた。先日公開されたドキュメンタリー映画『ハリーとメーガン:アフリカの旅』もその一例だ。

ヘンリー王子も兄のウィリアム王子(王位継承順位は父チャールズ皇太子に次いで2位)もマスコミに対して寛容ではないことはよく知られている。

ウィリアム、ヘンリー両皇子の母親で英国民にこよなく愛されたダイアナ妃は1997年パリでの自動車事故で死亡。事故は執拗なパパラッチからの追跡を逃れようとして起きたという説が高い。ふたりの王子はパパラッチという職業を認めない声明を何度も表しており、タブロイド紙数社を相手に訴訟も起こしている。そうした一方で事故に対するバッキンガム宮殿の反応の受け止め方は様々に異なった。

© AP Photo / Lynne Sladky
ヘンリー王子も兄のウィリアム王子

「私は母を失った。そして今、私の妻が同じ影響力の犠牲になりつつある。」

映画でヘンリー王子は王室の一員としてはかなり珍しく、感情的にこう語った。

メーガン妃も同じ映画で自分についてのタブロイド紙の記事を取り上げ、「簡単などと思ったことは一度もなかった。でもすべてフェアに運ばれるだろうと思っていた」ともらしている。


「問題が多すぎ」

英国人王室コメンテーターで広報コンサルタントのリチャード・フィッツウィリアムズ氏はスプートニクからの取材に対し、宮廷内の役割も社会の注目もヘンリー王子とメーガン妃にとってはかなり重荷だったと指摘している。

フィッツウィリアムズ氏は「サセックス公爵は母親との死別した痛みを未だに引きずっており、タブロイド紙(の注目)を脅威だととらえています」と語る。

それでも「王室に仕えるために躾けられたはずのヘンリー王子が、王室制度へ向ける態度は、あまりに桁外れ」であることは、フィッツウィリアムズ氏も認めている。

In this file photo Britain's Prince Harry stands with his fiance US actress Meghan Markle as she shows off her engagement ring whilst they pose for a photograph in the Sunken Garden at Kensington Palace in west London on November 27, 2017, following the announcement of their engagement
© AFP 2020 / Daniel Leal-Olivas
サセックス公爵夫妻

「ザ・クラウン・クロニクル」のケイティー・バルフ記者はスプートニクからの取材に「多くの人にとっては(ヘンリー王子とメーガン妃の)決意はショックだった」と語った。

バルフ記者はふたりの決定はそれが全く予期せぬことだっただけに余計に大きなリアクションを呼んでしまったと断言している。

「外から見ると彼らは自分たちの職務に没頭しているように見えました。だからこそ今回の決定は爆弾の炸裂のような効果を呼んでしまったのです。」

バルフ記者はバッキンガム宮殿は形の上では認めますと言っているものの、ヘンリー王子も、メーガン妃も、王室も一体この先どうしたらいいのかわかっていないという。

「あまりに問題が多い。なのにその解決策はそう多くない。バッキンガム宮殿の声明はいろいろと複雑な問題が起きていることを物語っています。」バルフ記者は「不透明な移行期間」がこれから続くと予言している。

バッキンガム大学で教鞭をとる歴史家で、『王座の陰で 王室の家庭内の歴史』の著者のエイドリアン・ティニズウッド氏は、スプートニクからの取材に対し、ヘンリー王子、メーガン妃の決定は「英国王室の危機ととらえるべきものでは毛頭なく、これを機に王室の改革がどんどん進むというわけではない」と指摘した。

ティニズウッド氏はふたりに親近感を示しながらも、やはり「王室に相談せずに決めたのは無謀だった」ことは認めている。

「王室顧問というのはただ飯を食べているわけじゃないですからね。女王、王室メンバーのイメージに何がプラスになるかを知っています。その彼らに相談せず、ヘンリー王子とメーガン妃はこれ以上に必要な時はないのに、死活問題にかかわる支援システムから自分らを切り離してしまったんです。」


北米は二人の決定をどう受け止めたか?

英国のマスコミが予期したとおりにこぞって厳しい反応を示し、専門家らが慎重な指摘をする一方で海の向こうの米国、カナダのマスコミは比較的にふたりの側に味方している。(メーガン妃は米ロサンジェルス出身でカナダへの移住を希望していることが影響しているかもしれない。)

米アトランティック誌は同情的で「ヘンリー王子にだって他の一般市民と同じように、プライバシーの侵害を望まず、妻への批判を忌み嫌い、わが子を守ろうとし、パリで死んだ母親の死を悼み、彼女を追いまわした挙句、死ぬ直前までその写真を撮り続けた者たちに吐き気をもよおす権利はある」と書いている。

© AP Photo / John Redman
ダイアナ妃とヘンリー王子

ニューヨークタイムズ紙も皮肉を込め、「英国のマスコミは、サセックス公爵夫人のメーガン・マークル氏を自国から追放するという課題を首尾よく遂げたとしか思えない。とはいえ、おそらくは自分らも予期していなかった、ヘンリー王子の喪失という条件に甘んじるはめにはなったが。ヘンリー王子は王室の中でも愛される存在であり、世界における英国王室というブランド作りに重要な役割を果たしていたのに」と書いている。

こうした態度が示される中、カナダのジャスティン・トルドー首相から、王室の財政支援もなくカナダに移住を希望するヘンリー王子夫妻にボディーガードの費用を部分的に肩代わりするという申し出がなされたと報道された。

ヘンリー王子、メーガン妃の若夫婦を思えば当然わいてくる同情の念や、アピールするようなやり方には常に反対の立場をとってきた英国王室の困惑も分かるという気持ちをひとまず脇に置いた場合、いったいどんな結論が出せるだろうか? マスコミを相手にし、社会的立場で行動せねばならない国家の首脳、王室の任務は際限なく、評価しようしもしきれるものではない。

今日、こうしたファクターによる検証が余りに多く行われている。残念ながらそうした検証の影響は時としてあまりに大きく、王室の個々のメンバーのプライバシーを侵し、よりグローバルな関心とは真っ向から反してしまうこともある。これはダイアナ妃の例を思い起こすだけで十分だ。王室制度と家庭を比べた場合、何の重要度が上だろうか? この問題への答えはまだ見つけられていない。

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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米国, カナダ, 英国, エリザベス2世
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