20:29 2020年09月29日
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28日、辞意を表明した安倍晋三首相。これまで、安倍氏がロシアとの関係を深めようと熱心に取り組んできたのは、誰もが知るところだ。スプートニクは、ロシア政治に詳しい上野俊彦氏(元 上智大学外国語学部ロシア語学科教授)に、対露外交の観点から第二次安倍政権の総括をしてもらった。

上野氏「2012年12月28日に発足した第二次安倍政権下の日露関係は、その初期段階、すなわち2013年4月29日の日露首脳会談および「日露パートナーシップの発展に関する共同声明」の採択から、2014年2月7日の安倍総理のソチ冬季五輪開会式参加までの時期において、飛躍的な発展を見たが、その後、2014年3月のロシアによるクリミア併合により、米欧日による対露経済制裁が始まるなどしたことから、日露関係の発展もスローダウンした。それでも、日露双方の努力により、日露関係は悪化することなく、年に数回というペースで首脳会談が継続され、2013年4月29日の共同声明に基づき、日露外相・国防相会合、いわゆる「2+2」会合も継続して開催されている。このことは、日本の歴代政権の中でも第二次安倍政権が最も緊密な日露関係を維持していたことを明白に示している。」

しかし、その緊密な日露関係が、平和条約締結まで発展することはなかった。記者会見で安倍首相は、特に思い残したこととして北朝鮮拉致問題、ロシアとの平和条約締結交渉、憲法改正の3つの課題を挙げ、志半ばで職を去ることは、「痛恨の極み」「断腸の思い」だと述べた。上野氏は、第二次安倍政権下で平和条約締結交渉が全く進展しなかった背景には、ロシアの対外的な危機感があると指摘する。

無念さの残る平和条約交渉

上野氏「日露平和条約締結交渉は、2016年12月15~16日の日露首脳会談により「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島における日本とロシアによる共同経済活動」がスタートし、2018年11月14日の日露首脳会談では「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる」との合意により、日本側が事実上初めて「2島返還」論へと譲歩したにもかかわらず、まったく進展していない。

その背景には、2019年2月1日に米国が中距離核戦力全廃条約から一方的に離脱したことなど、ロシア側から見た安全保障環境の悪化により、ロシアが対外的により強い危機感を持つに至っていることがあると考えられる。安倍総理としては、平和条約締結交渉については、まったく前進できなかったという無念さが残ったことだろう。」

露日首脳会談
© Sputnik / Valeriy Melnikov
露日首脳会談

辞任表明から一夜が明け、世間の関心は後継の首相選びとなる自民党総裁選に移っている。新リーダーのもとで今後、日露関係はどのように変化していくのか、予想を聞いた。上野氏は、民間ベースでの支障はないが、平和条約へと結びつくような日露関係の劇的発展は見込めないと指摘している。

経済・人的交流悪化の懸念は無し

上野氏「短期的には、新型コロナウイルス感染拡大の結果として、日露双方の国内経済情勢の悪化により日露貿易経済関係は冷え込み、観光を含む人的交流も減少すると考えられるが、それらも、2024年頃までにはコロナ以前の水準には戻ることができよう。日露の経済関係には相互補完関係があり、今後も継続して発展していく可能性は十分にあると考えられ、少なくとも、経済や人的交流の面での日露関係の悪化はないと思われる。」

日露関係の優先順位低下は必至

上野氏「日本では、今後もしばらくは自民党政権が継続される可能性が高いので、対露政策の大きな変化はないと考えられるが、自民党の有力政治家では、安倍総理が最も対露外交に熱心であったことは確かであり、次期総理が誰になったとしても、日露関係に関して安倍総理ほどの熱意は持たないであろう。おそらく、今後の自民党政権は、日中関係や日韓関係の修復・発展に注力することになり、日露関係についての優先順位は下がる可能性がある。したがって、日露平和条約締結交渉は継続はされるであろうが、実質的な進展の可能性は低いであろう。」

安倍氏辞任についてはロシアでも驚きをもって大きく報道された。ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は「非常に残念」と話し、安倍氏は日露関係の発展に「評価しきれないほど大きく貢献した」と讃えた。まだ誰ともわからない後継者が、ロシアにどのような態度で臨むのか、今後に注目だ。

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

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