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    共謀罪:日本人は、国家から個人生活を干渉されない特権を守れるか?

    共謀罪:日本人は、国家から個人生活を干渉されない特権を守れるか?

    © 写真: 古 天熱
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    日本の野党が提出した、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を巡る金田勝年法相の不信任決議案は18日午後、衆院本会議で否決された。そして組織犯罪処罰法改正案は、19日の衆院法務委員会で与党が採決を強行し、自民党、公明党や日本維新の会の賛成多数で可決された。

    スプートニク日本

    改正案によると、共謀罪の対象犯罪は277で、適用対象をテロ組織や暴力団などの「組織的犯罪集団」と規定した。構成員が2人以上で犯罪を計画し、うち少なくとも1人が現場の下見などの「準備行為」をすれば、計画に合意した全員が処罰されることになる。

    この法案は、テロあるいは他の深刻な犯罪を実際準備していることが明らかな者達から、日本社会の安全を守るためのものだと思われる。ではなぜそうした法案が、社会において反感を持って受け取られ、人権団体は問題があると指摘しているのだろうか?

    ロシアを代表する日本専門家で、モスクワ国際関係大学教授のドミトリー・ストレリツォフ氏は「こうした否定的態度は、個人に対する戦前の全体主義的管理システムの批判的見直しに関連している。当時、人々の振舞いのみならず、見解や意見まで管理する法律は、大変厳しいものだった」と指摘し、次のように続けた-「日本には、具体的な行動に対してばかりでなく、それを行う意思があったことに対する罰則を規定した、危険思想に関する法律がかつて存在した。反政府的立場を取る人なら誰でも、例えば、『権力機関の代表者などに対するテロを計画していた』あるいは『共産主義イデオロギーを支持した』として有罪にすることができた。これは、どんな人であれ司法手続きなしに、その責任を取らせる可能性を秘密警察に与える、他に類を見ない法律だった。実際当時の警察体制は苛酷だった。それゆえ日本では戦後、国家が個人生活に干渉することに対し、強いアレルギーが生じた。それ以来、日本社会は、国家による個人生活への干渉に対し極めて敏感に反応している。」

    この問題について、スプートニク日本記者は、東京大学教授で「九条の会」事務局長でもある小森陽一氏にインタビューした。小森教授は、共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」について、名称と中身が一致していないと指摘し、次のように話した-

    「名称こそテロ防止と銘打ってはいるものの、法律の中身を見ると、テロを防止する条文にはなっていない。テロというよりも、むしろ一般的な市民運動や政治活動において、メールのやりとりや、どこかに集まって話し合いをするといったことまでが、共謀罪として警察の捜査の対象になってしまう可能性がありうる。警察はこの法律を口実に、あらゆる市民活動に関与することができるようになるだろう。組織犯罪処罰法が、かつての治安維持法のように、国家権力 によって市民の自主的な活動や政治行動を統制・弾圧する法律として機能してしまうことが最大の懸念だ。」

    国家というものは常に、もっともらしい言葉で自分達の行動を説明するものだ。21世紀、我々はテロの脅威にさらされているが、それが社会の管理強化を正当化する主な理由となっている。バーチャル空間で、市民の個人生活に当局が干渉していることが暴かれ、少なくないスキャンダルを引き起こした。米国において、グローバルネットワークでのそうした行動が容認されるきっかけとなったのは、あの2001年9月11日の同時多発テロだった。米国市民は、全世界を震撼させたグローバルテロリズムの最初の犠牲者となった。しかし、あれから世界の一般市民の生活は、より安全になったと言えるだろうか。

    ロシアは、米国に対し、テロとの戦いにおける実際の前線での努力を一つにまとめようと提案している。しかし今日シリアでは、ダーイシュ(IS)との露米共同の戦いは、この国の今後の民主化プロセスに対する意見の食い違いにより、うまく行っていない。こうした場合テロとの戦いで、どこに合流点を見出せばよいのか。

    現在ますます反ロシア的発言が強まっている中、一部の専門家らが、歴史的な専門用語である「マッカーシズム」を、ますます思い出しているのは決して偶然ではないのかもしれない。よく知られているように、米国におけるマッカーシズムの古典的戦術は、個人あるいは組織に反米、政府転覆という根拠のない罪を着せる事である。冷戦そして1953年から54年にかけての米ソ緊張の時代における共産主義への恐怖感は、現在のテロリズムに対する恐怖に近いもので、それがマッカーシズムの温床となり、政治的過激主義であり「魔女狩り」であるこの抑えの効かない馬鹿騒ぎが蔓延してしまった。マッカーシズムは、米国の民主主義に影を投げかけた。そして欧州の大部分の国々でも、マーシャル・プランの諸条件により、共産主義政党やそのシンパに対する弾圧が行われた。これは何か、今の状況を思い起こさせるものではないだろうか。シリアにおけるダーイシュ(IS)との戦いで欧米は、ロシアに感謝する代わりに、シリアで合法的に選ばれたアサド大統領の行為を「暴力」とし、それをロシアは支持していると、すでに何度となく非難してきた。

    さて日本に話を戻すと、この国の野党は、現時点ではもちろん、自分達の不満を自由に表現でき、戦前のようないかなる迫害も心配しなくてよい。しかしストレリツォフ氏は「野党の抗議行動の効果は、最小限にとどまっている」と指摘し、次のような考えを示した-

    「 数年前、日本ではもう、特定秘密保護法も採択された。こうした法律が成立する過程では、世論レベルで反対運動が巻き起こり、大衆抗議デモも起きた。そうした人々が国会に乱入するのではないかとの心配もあった。しかし野党は事実上『腰砕け』となり押し切られ、法律は、世論の人気は明らかに高くないにもかかわらず国会を通過してしまった。今回の法案も、同じ経過をたどるに違いない。私は、日本にああしたものは、差し迫って必要不可欠だとは思わない。なぜなら日本には、かなり厳しい政治管理システムが存在するからだ。社会は、何かを隠そうとしても、十分透明だ。外見や名前を変えたりするのは難しいし、そもそも、あの人口密度の高い国で、どうやって身を隠すのだ。さらに外国人が日本国籍を取得するのは、事実上不可能だ。さらに在日コリア人、まず第一に北朝鮮系コリア人は、当局の注意深い監視下にある。つまり日本は、全く安全な国であり、今回のような法律は、他の国々ほど、日本社会には必要なものではないだろう。」

    一方、日本のような単一民族国家ではない、ロシアのような多民族国家では、非常に多くのディアスポラが、安全保障問題に対する特別のアプローチを求めている。
    モスクワ市議会安全保障専門委員会のメンバー、ドミトリー・エフィーモフ氏は、ラジオ・スプートニクに出演した際、最近サンクトペテルブルクの地下鉄でテロを起こしたアクバルジョン・ジャリロフが、キルギス出身者であったことに注意を促した。ジャリロフは、2011年、簡素化された手続きによってロシア国籍を得た。エフィーモフ氏は「ロシアの市民権を付与する法律は、厳格化すべきだ」とし、次のように続けた-

    「ロシアには、中央アジア諸国から非常に多くの移民が流れ込んでいる。彼らは事実上、カフカスを通ってトルコや、さらにはシリアに行き、また同じ経路で戻って来る。そうした移動はしばしば、特別の監督なしになされる。それ以外に移民のコミュニティがあるが、そこは、戦闘員リクルートの温床だ。」

    サンクトペテルブルクでの地下鉄爆破テロを組織したと思われる者達の何人かもまた、数年前にロシア国籍を取得した者達だった。彼らは自由にロシア国境を越え、トルコに飛んだり、ロシア市民となることで得た他の権利を利用してきた。そうしたことから、ロシア議会下院・国家会議は、ロシア市民に関する法律に修正を加えたが、そこでは、ロシアに来て、その市民となり、その後テロ活動を行った者達に対する厳しい処罰が列挙されている。

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