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    オスプレイの今と昔:ロシア人専門家、オスプレイの脆弱性の理由を語る

    © REUTERS/ Kevin Lamarque
    オピニオン
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    徳山 あすか, タチヤナ フロニ
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    8月11日、4機のMV-22オスプレイ輸送機が沖縄県の在日米軍普天間飛行場から飛び立った。共同通信が日本政府内の関係者への取材をもとに伝えた。

    スプートニク日本

    その前日には防衛省が、5日にオーストラリアの沖合で発生し3人が死亡したオスプレイの墜落事故にも関わらず、日本国内でのオスプレイの飛行に同意したとの声明を発表していた。一方米国側は、オスプレイの飛行を中止するいかなる理由もないとしている。まさにその安全性への懸念から、日本政府や北海道、沖縄県が米国に対しオスプレイの飛行を一時停止するよう求めていたことを考えれば、米側の主張はどの程度信頼できるのだろうか。

    30年という歳月と何十億ドルもの資金を投じて、米国がV-22オスプレイの近代化に多大な努力を費やしてきたことはよく知られている。1992年初めには開発計画がその後2年以上にわたって凍結されることになるものの、特務機関の指揮下にオスプレイを移行させる計画に伴い、1994年12月にオスプレイのコンセプトは見直された。

    なぜ特務機関なのか。スプートニクは、ロシアの著名な軍事問題専門家であるコンスタンチン・シフコフ氏に「どのような場所・条件において、ティルトローター機(オスプレイのように、プロペラに似た回転翼の角度を変えることで、ヘリコプターのように垂直上昇し、上昇後は普通のプロペラ機のように飛行できる航空機)はその性能を最も発揮できるのか」を聞いた。

    「ティルトローター機は極めて独特な航空機で、米軍では主に特殊作戦軍の軍事行動で運用されています。また可能な場合は、撃墜されたパイロットの救出にも使われます。つまり普通のヘリコプターが行うのと同じ任務をこなしているわけです。ただティルトローター機には、ヘリコプターよりも飛行距離が長く、高速で飛行できるという利点があります」

    いくつかの設計上の変更の後、当時5機のうち4機のオスプレイが1997年から98年にかけてのみ再び飛行を行った。それと同時に、MV-22Bと呼ばれる、より近代化した新型機の開発が開始され、その初飛行は1999年4月に実現した。

    ところがよく知られているように、2000年に起こった2件の大事故(1件目は19人、2件目は4人の死者を出した)によって、オスプレイの威信は大きく傷つけられ、開発費は増大した。5ヶ月間続いた調査の結果、オスプレイの油圧システムと搭載しているコンピューターのソフトウェアに問題があることが分かった。その後も事故は相次ぎ、もっとも最近のものが今回のオーストラリアでの墜落事故である。事故機は沖縄に配備されていた。

    設計上の不備が明らかであるにも関わらず、なぜ米国はオスプレイの運用を中止しようとしないのだろうか。その脆弱性が誇張されている可能性はあるのだろうか。シフコフ氏の意見によれば、答えは「ノー」である。

    「米軍ではオスプレイは艦載機としても運用されていて、この場合普通のヘリコプターよりも敵地の奥深くまで侵入し特殊部隊を降下させることができます。ただ実際は、オスプレイは対空防御兵器に対しては非常に脆弱なため、そのような兵器が存在しない地域でしか性能を発揮できません」

    それにも関わらず、ヘリコプターのように垂直に離着陸し、固定翼機のように飛行できる航空機という構想は、多くの航空機設計者が常に開発に取り組んできたものだ。ソ連では1960年代初めに、この構想に基づいた一連の実験機も生産された。しかし大事故を何回か起こしたのち、実用的でないと判断され量産には至らなかった。なぜティルトローター機の開発はロシアではこの時終了し、米国では続けられたのだろうか。

    「ソ連は、軍で将来ティルトローター機を使うことの意味を見出すことが出来ない、との結論に達したのです」とシフコフ氏は説明する。「特殊作戦には、アントノフAn-12やイリューシンIl-76といった軍用輸送機を使用する方がよいのです。というのは低空を飛行し、ティルトローター機と全く同じ任務をこなせるからです。さらに対空戦闘においてティルトローター機は非常に不安定で事故を起こす危険が高いという理由もあります」

    では米国のティルトローター機に対して現在ロシアにはどのような対抗手段があり、何が最も有望で優越性をもっているのだろうか。あるいはロシア軍にとってこの課題は現在緊急のものではないのだろうか。

    「米国のティルトローター機の脆弱性を考えた場合、これはロシアが今注意を向けなければならない分野ではありません。ロシアには他の重要な課題がたくさんある、と私は考えています。その一つが第5世代戦闘機T-50(PAKFA)の信頼性を十分なレベルにまで高めることです。そして垂直離着陸機(VTOL機)の国内での生産を復活させることです。英国と並んで、ロシアはVTOL機の量産を行った数少ない国の一つでした。我が国のヤコヴレフYak-38と英国の「ホーカー・シドレー ハリアー(1960年代に開発され、VTOL機として世界で初めて量産された)」です。しかもYak-38の後継機Yak-41はあらゆる面で通常の離陸を行う他の航空機と同じ性能を持っていました。現在まさにこの方面に資源を集中させることが重要です。自らの特徴により従来の航空機と同等あるいは優位性さえもつVTOL機の中に、米空軍で承認され現在積極的に運用されているF-35Bがあります。既にそのような航空機の開発経験のある我が国にとって、この課題は完全に解決可能です。一言でいえば、ティルトローター機に開発力を分散させてしまうことはできないのです」

    オスプレイに話を戻そう。沖縄の地元住民が自分たちの頭上にも、いつオスプレイが墜落するか分からない、と恐れていることを日本政府はよく知っている。3人が犠牲になった8月5日のオーストラリアの事故は沖合で発生しているのだ。調査の結果、事故の原因はパイロットの操縦ミスであり、技術的な問題ではないとされた。しかし2016年12月には沖縄県名護市沖にオスプレイが不時着し大破している。そしてこの事故は空中給油の訓練中に起きている。沖縄の住民に対して日本政府が、次は民家の上にオスプレイが墜落することはないと保証することはまずできないだろう。

    8月28日まで続く北海道での日米共同訓練では、複数のMV-22オスプレイの参加が予想されている。札幌の弁護士、猪野亨(いの・とおる)氏は「オスプレイを飛ばされる側も不幸だが、搭乗させられる米軍兵士も不幸だ」と指摘し、次のような見解を示している。

    「今までであればオスプレイは沖縄に押し付けてきましたが、それが今や日本全国で配備し、飛行させようとしています。日本国民の中にも沖縄が犠牲になっていることに無関心な層も大きかったと言えます。しかし、オスプレイが全国を飛行するということになると、この無関心層にまで関心が波及しかねない状況に陥ります。安倍政権としては、こうした状況にも対処しなければならなくなりました。沖縄に犠牲を強いる方針には変更はありませんが、米軍側に対する一定の交渉をしているかのようなパフォーマンスが必要にはなっています。ただ明らかにパフォーマンスとわかるもので、米軍側がそれを忖度することはありません。今日も明日も我が物顔で、日本上空をオスプレイが飛行することでしょう。米軍のやり方にも憤りを覚えますし、安倍政権が米軍のご機嫌ばかりを取っている姿は異様なのです」

    猪野氏が指摘するようにおそらく日本政府は、既に習慣となっている米側からの強い圧力を感じているに違いない。だが飛行許可が下りたという事実は、日本国民の生活の安全を脅かすこの問題が一般社会のレベルでは事実上議論されていない、という点で驚くべきことである。

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