03:38 2018年11月21日
日本人専門家が見る、シリアをめぐるロシアの評価とジレンマ:ロシアの対テロ勝利宣言は正しかったのか?

日本人専門家が見る、シリアをめぐるロシアの評価とジレンマ:ロシアの対テロ勝利宣言は正しかったのか?

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徳山 あすか
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11日、プーチン露大統領はシリア北西部のへメイミーム空軍基地を電撃訪問し、「ロシア軍はシリア軍とともに最も戦闘能力の高い国際テロ組織を壊滅させた」と述べ、ロシア軍にシリアからの撤退を命じた。シリアのアサド大統領は、過激派組織イスラム国(IS)掃討において「シリア国民はロシア軍の協力を忘れない」と述べ、感謝の意を示した。

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シリア情勢に詳しい東京外国語大学の青山弘之教授は、ロシアのシリア介入に対する評価は「どのような政治的立場から見るかによって変わる。日本でポジティブに評価されることはまず無い」と話す。

シリア中部のパルミラ遺跡と住宅街で地雷を除去するロシア軍工兵ら
© Sputnik / Ministry of defence of the Russian Federation
青山氏「日本でシリアへの関心が高まったのは、ISの登場もありますが、まずは中東の民主化運動『アラブの春』がきっかけでした。ですからシリア情勢は、『人権』というファクターで評価されることになります。日本や西側諸国ではアサド政権イコール悪という風に考えられていますから、それを支援したロシアは、たとえ国際法上で正しい形の支援だったとしても、高く評価されることはないのです。ロシアの働きは、本来は『民主化』や『人権』ではなく、テロとの戦いという観点から評価されなければいけないのに、過小評価されています。

個人的には、西側諸国や湾岸諸国と比較して、最も効率的かつ有効に関与したのがロシアだと思います。ISだけでなく、アルカイダやそれにつながるテロ組織を撲滅しなければならない中、米国は空爆回数を抑えるなど軍事介入の費用対効果が伴わない中途半端なやり方をしてきました。米国はアルカイダ系ヌスラ戦線を事実上間接支援してきたので、本来なら国際社会から非難される立場でもあります。それに対してロシアはISもヌスラ戦線も、テロリストは徹底的に叩くという一貫した姿勢を見せ、実際、ロシアの軍事介入後にISが弱体化していきました」

青山氏は、テロとの戦いにおけるロシアの働きをある程度評価する一方、「ロシアはシリアの主権尊重を唱えつつ、シリアの政治的主体性を奪ったというジレンマがある」と指摘している。

青山氏「ロシアは、『シリア政府が要請しているから』というスタンスで、シリアの主権尊重を訴えながら内戦に介入しました。だからこそISと効果的に戦えたという側面もありますし、実際に主導的な役割を果たしました。しかしシリアは政治的にすっかり弱り、ロシアがシリアにおけるテロとの戦いを完全に主導してしまっています。シリアに主体性がないまま、シリアに関与し続けることが果たしてロシアの国益になるでしょうか。しかも、ロシアがISに対して『勝利宣言』してしまったことで、その後の政治プロセスもなんとなくロシアが牛耳っているという感覚があります。これは、ロシアがシリア介入した根拠である『主権尊重』という立場からすると、好ましくありません」

ロシアは今後シリアの復興プロセスにおいて主導的な立場をとることになるが、注目されるのはシリアとの距離感だ。

イタリアの軍事ニュースサイト「ディフェンス・オンライン」のアンドレア・クッコ編集長は、「ロシアが全てを行なえるとも思わないし、するべきではない。シリア人が政治的・軍事的に幕引きをするべきだし、まだ内戦に勝利したと言うことはできない。シリアはまだ分断されているのだから」と話す。青山氏もまた、将来を決めるのはシリア人であるべきだと考えている。

青山氏「ロシアやイランが支援してきた政治勢力がシリア内戦の『勝ち組』になったわけですから、それらの国が重要な意味を持つのは自然なことです。しかし今、国際社会の総意ではなく、ロシア、イラン、トルコという勝ち組国家によるアスタナ・プロセスの延長で事が進んでしまっています。このスタンスでは、決してそのプロセスを受け入れない人々が少なからずいるということを念頭に置いておかなければなりません。

当のシリア人に将来をゆだねることが重要ですが、シリア人だけに国をまかせておくと、決してまとまらないということは、7年にもわたる内戦が示しています。その点が、ロシアの立ち回りが難しいところです。殺し合いが起きても介入しないでおくべきか、何らかの着地点にむけて仲介するのが良いのか、どちらが主権尊重なのか?答えは一つではありません。ロシアはシリアの主体性を奪う形でシリア内戦を幕引きしてしまっただけに、今後その主導権をどうするかが注目されます」

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シリア, ロシア
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