07:07 2019年11月16日
『エフゲニー・オネーギン』

「ロシアは本当に言葉を大切にする文化」 オペラ歌手の鳥木弥生 東京の新国立劇場での「エフゲニー・オネーギン」への出演について語った

Masahiko Terashi / New National Theatre, Tokyo
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日本の主要なオペラ劇場である東京の新国立劇場で、モスクワ「ゲリコン・オペラ」劇場の芸術監督であるドミトリー・ベルトマン演出のオペラ「エフゲニー・オネーギン」の初演が大成功を収めた。ピョートル・チャイコフスキーの古典作品にはロシアと日本のアーティストが出演した。スプートニクの東京特派員が「エフゲニー・オネーギン」を鑑賞し、オリガ・ラリナを演じた鳥木弥生さんに話を聞いた。

スプートニク:ロシア語で歌うのは初めてでしょうか

オペラ全体をロシア語で歌うのは初めてでした。でも、有名な芸術家のエレーナ・オブラスツォワに習ったので、わりと早くからロシア語では歌っていました。ただ、ロシア(モスクワ、サンクトペテルブルク)にちょっと行った後に、イタリアとフランスに長く行ってしまいましたので、ロシア語をだいぶ忘れてしまいました。でも、エレーナ・オブラスツォワさんと一緒にコンサートをしたことで、ロシアは私のプロ初の舞台となりました。

Masahiko Terashi / New National Theatre, Tokyo
『エフゲニー・オネーギン』

スプートニク:ロシア語で言葉を覚えるのは難しいでしょうか?

呪文、またはお経みたいに覚えるのは簡単なのですが、ただ、意味や、そこに含まれる感情なども全部一緒にして覚えないと意味がないので、それを一緒にして覚えるのには、普段より少し時間がかかりました。

ロシアの印象

初めてロシアに行ったのは1998年でした。それからあまり行ってないので、その時の印象は日本とすごく違うな、またヨーロッパとも違うなという印象なのですけれど、今回、ロシアから来たアーティストの方と一緒に働いて、すごく真面目、簡単な真面目ではなくて、真摯というか、真剣な人たちだなと思いました。自分のオペラを日本でやるということに対しても、私たちを上から目線、見下していることもないし、本当に一緒に仲間としてやろうという真剣な態度だったのが素晴らしいと思いました。また、ロシアに対して私がとても思うのは、本当に言葉を大切にする文化だということです。朗読のコンサートなども盛んじゃないですか。私は言語が好きなので、そういうところでロシアの人たちをすごく尊敬しているし、素晴らしい文化だなと思っています。

コミューニケーションの時も色々面白くて、大変気に入っていることがあります。例えば、みんなが飲む時に、一人一人演説をして乾杯(笑)する、それは私が大好きなんです!全くロシア語わからないけれど、それが私にはコンサートみたいに見えます。すごく楽しくて、参加型コンサートみたいで、みんながワーと聞いて、はい、乾杯といった感じです(笑)。

『エフゲニー・オネーギン』
Masahiko Terashi / New National Theatre, Tokyo
『エフゲニー・オネーギン』

ロシアの文学について

色々読みました。例えば、『アンナ・カレーニナ』や、ほかに、おばあさんを殺すやつは何でしたっけ・・・(笑)『罪と罰』ですね、それと『戦争と平和』。若い頃から読むのが大好きで、もちろん、日本語で読んでいるのですが。でも、いつか『カラマーゾフの兄弟』も読みたいなと思っています。主人公がたくさんいて、内容はすごく難しそうですが(笑)次のチャレンジとして!

『エフゲニー・オネーギン』
Masahiko Terashi / New National Theatre, Tokyo
『エフゲニー・オネーギン』

スプートニク:日本でオペラは人気?若者は好き?

そうですね、私は文学とオペラがすごく近いと思っています。文学的にオペラを見るのがとても好きです。若い人たちは文学から少し離れている感じがあります。若者でオペラが好きな人と言えば、例えば、ミュージカル・ポップスの歌が好きとか、音楽が好きな人はいると思います。ただ、私が思うオペラの本当の芸術性、舞台芸術とか舞台美術もそうですし、台本、文学の価値もそうですが、そういう部分は若者にはまだちょっと足りないかなと思います。文学作品としてのオネーギンを知らないと、オペラではちょっと削られている部分もあって、オネーギンのキャラクターはそれほど描かれていません。だから、文学も広まって、オペラも一緒に若者が好きになってくれたら良いなと思っています。

スプートニク:オリガ役で一番難しかったのは?

今回の演出家の話を聞いて、まさか、こんなキャラクターだとは思っていなかったので、少しびっくりしました。オリガは姉よりも普通の可愛い美人だと思っていました。少しお茶目で、あんまり考えない、本当に普通の女の子だと思っていたのです。ただちょっと綺麗だから、若い罪な女だと思っていました。けれど、今回の演出ではシンデレラの意地悪なお姉さんみたいなイメージで、彼女をいじめたりとか、嫉妬したりとか、またはレンスキーとは恋仲のはずなのに、最初からオネーギンにもすごく興味があって、まあ、悪役ではないですが(笑)、ソプラノ(タチヤーナ)に対立する役柄だったので、それはすごく驚きました。歌も呑気で可愛い女の子のつもりで歌おうと練習していたのですが、演出家が求めたのはアグレッシブさとか、強さ、キャラクターの濃さ。最初はものすごく戸惑いました。普通の可愛い女の子をやるよりも、こうやって濃いものが与えられた方が良かったのかもしれないし、すごく考えました。本当に迷って、やめてくれと言いたくなるぐらいでした(笑)いや、素晴らしいプロダクションになりました、参加して嬉しかったです。

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「エフゲーニー・オネーギン」の初演は満員御礼で、秋篠宮皇嗣殿下も訪れた。「エフゲーニー・オネーギン」を上演するというアイデアは日本の新国立劇場が考えたものであり、彼らがロシアから監督と歌手を呼ぶことを決めた。

ドミトリー・ベルトマン氏によると、東京での演出は1922年のコンスタンチン・スタニスラフスキーの演出にインスパイアされたものだったという。とはいえ、似ているのは舞台装飾だけで、登場人物の人間関係は「現代人の痛いところを突く」演出になっているという。

ドミトリー・ベルトマン氏とのトークショーはこちらでご覧になれます。

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