17:56 2020年09月29日
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ロシア企業NOVATEKが7月末、「ヤマルLNG」プロジェクトで生産した液化天然ガスを、契約に基づき、北極海航路の東ルート経由で日本に納入した。これはアイスクラスArc7のロシアのLNGタンカーが日本の港に入港し、LNGの荷下ろしを行った最初の成功例である。

エコノミストらは北極海航路が世界の主要な幹線輸送路になる未来を予言し、スエズ運河経由の南周りルートと競合をなす可能性を活発に議論するようになった。

なにしろ、北極海航路経由では、中国、日本、米国、ヨーロッパなど、世界のあらゆる地点に貨物を輸送することができるのだ。しかも、ムルマンスク港から横浜港までの輸送であれば、船舶の航行距離はスエズ運河経由が12,840海里なのに対し、北極海航路経由なら5,770海里である。一方で、スエズ運河経由で航行する船舶数が年間数千隻であるのに対し、北極海航路を航行する船舶数は今のところ数百隻に過ぎない。

ロシア産LNGの日本への納入の道のりの「氷をとかす」ものは何なのか、今後、長期契約でアジア太平洋諸国への納入量を増やすためには何が必要なのか。スプートニクが専門家にきいた。

高等経済学院世界経済世界政治学部のデニス・シェルバコフ准教授は、北極海航路の経済的魅力は距離であり、それが外国のビジネス界の注目を集めていると言う。「北極海航路はアジア発やアジア向け貨物を輸送する従来の輸送ルートに比べ、距離が大幅に短い。このほか、近年は従来ルートで海賊による被害件数が増えており、これも輸送の主要プレーヤーが新ルートを模索するきっかけとなっています。」

しかし、今後、LNGを北極海航路経由で日本や他のアジア太平洋諸国に納入する上で、命運を左右するのは具体的に何なのだろうか?

エコノミストらは、どんな大規模プロジェクトでも、命運を決めるのはインフラだと口を揃える。

LNG納入の実現にはまず何よりも港湾建設が重要だが、デニス・シェルバコフ准教授は北極海航路の場合は更なるコストが必要になると言う。「北極海航路の沿岸の陸地はほとんど人が住んでいないため、この地域では救難捜索のリソースと特別な輸送インフラもとても重要です。NOVATEKや他社の発言によると、こうしたインフラは徐々に構築が進んでいくでしょう。現在、カムチャッカにLNG積替ターミナルを建設するための最終調整が行われています。これまでにターミナルの稼働開始は2022年になると伝えられていましたが、私は2023年以降になるだろうと思っています。」

カムチャッカの積替ターミナルはロシア産LNGのアジア向け納入の可能性を大きく促進すると考えられる。  

ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのヤナ・ミシェンコ上級研究員も、北極海航路には気候リスクと地理的特殊性があると言う。「この航路は夏と秋しか使うことができず、これが北東アジア諸国へのLNG納入量の制限要因となっている可能性があります。とはいえ、例外もあります。今年は例年よりも早く北極海航路の輸送シーズンをスタートさせることができました。5月に中国向けの輸送が行われたのです。」

ヤナ・ミシェンコ氏はまた、ロシアと日本はすでに物流チェーン開発とLNG納入プロジェクトで共通の成功経験を積んでおり、今後の協力にも期待が持てると言う。「ロシア初のLNGプラントは「サハリン2」プロジェクトの一環で10年以上前に極東に建設されました。日本企業の三井物産と三菱商事がこれに出資しており、そのおかげで日本へのLNG納入が始まりました。」

重要なことは、日本がLNG生産技術を10年以上前から持ち、その技術開発のパイオニアである点だ。LNG技術をロシアと最初に共有した国のひとつが日本であり、それはロシア初のLNGプラントがサハリンに建設される大きな要因となった。

今回、日本の投資家が「アークティックLNG2」プロジェクトに参加することは、アメリカの制裁に対する一定の防御にもなる。というのも、「ノルドストリーム2」をめぐる状況が示している通り、西側のパートナーがいてもワシントンの攻撃を回避できると完全に保証できるわけではないが、制裁発動を困難にする要因にはなるからだ。

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