ロシアのお笑い 話題のコメディアンと番組に迫る スプートニクQ&A

© AFP 2023 / Olga Maltsevaロシアのお笑い 話題のコメディアンと番組に迫る
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ロシア人はお笑いが好きなのか。好きだとすれば、どんなお笑いが人気を博しているのか。ロシアのコメディアンやお笑い番組について読者から質問を受けた。そこで今回のQ&Aではこのテーマを取り上げたい。

全ロシア世論調査センターが実施した最近のアンケートによると、お笑い番組を見て余暇を過ごすのはロシア人全体で59%に達する。そのうち、毎日欠かさず視聴する人が6%、週に1回視聴が25%、月に数回が22%、年に数回が6%となっている。世代別に見て行くと、年配になるにつれて視聴率が増える傾向にある。

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人気のあるコメディアンや番組は世代によって大きく異なる。大人に人気のお笑いが若者の間で支持されることは珍しく、その逆もまた同じ状況といえる。

ただし、全ロシア世論調査センターの統計によれば、最近のコメディアンはソ連時代に活躍を始めたタレントにかなわないのが現状だ。最も人気のあるコメディアンとして名前が挙がったのはミハイル・ザドルノフで、この名前を挙げた人は全体の21%に達する(45歳から59歳の層では28%)。

2017年に他界したミハイル・ザドルノフは主にお笑いのジャンルで人気があったが、社会全体でも同様に脚光を浴びた人物といえる。過去にザドルノフは大統領に代わりロシア国民向けに年始の祝賀を読み上げたこともあった。それはソ連が崩壊した1991年末の大晦日で、ロシア社会にとって非常に苦しい時期だった。ザドルノフは生涯にわたって、あらゆる世代の人に愛された人物だった。ザドルノフは主にトークが得意で、国内外の社会的・政治的諸問題について風刺的に考察するのが得意だった。同様に、ザドルノフの米国やアメリカ人をネタにするユーモアも有名だ。

2位にランクインしたのがエフゲニー・ペトロシャン(全体の20%)。ペトロシャンのファンは主に年配の方や年金受給者に多い。若者はペトロシャンのお笑いを冷たくあしらったり、時代遅れのものとしてネタにしたりする傾向にあり、それから発生したミームがネット上で飛び交っている。ペトロシャンも同じくトークで人気を博したタイプだ。
© Sputnik / Sergey Pyatakov / メディアバンクへ移行エフゲニー・ペトロシャン氏
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エフゲニー・ペトロシャン氏
ただし、全国規模で統計をみれば、若者に人気の新世代のお笑いタレントが知名度の点で上位を占めることはまずない。

若者の間で最も人気があるのはパーヴェル・ヴォーリャで、18歳から24歳の層の20%(回答者の7%)が彼を支持をした。ガーリク・ブルドッグ・ハルラモフを支持するのは同じく若者の間で14%だった(全体の6%)。ヴォーリャとハルラモフはいずれもCISの全域での人気番組「コメディー・クラブ」の放送開始時に登場したコメディアンだ。

© Sputnik / Ramil Sitdikov / メディアバンクへ移行ガーリク・ブルドッグ・ハルラモフ氏
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ガーリク・ブルドッグ・ハルラモフ氏
© Sputnik / Alexey Kudenko / メディアバンクへ移行パーヴェル・ヴォーリャ氏
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パーヴェル・ヴォーリャ氏

最も国民的なショー

個別のコメディアンではなく、お笑い番組別で見てみると、KVN(発音は「ケヴェン」、明るい、目先の効く者クラブの意味)の名前が真っ先に挙げられる。この番組は1961年にテレビで放送が開始されて以来、長年にわたってロシアのテレビ業界をリードしてきた。この番組は主にお笑いゲームの形で進行し、同じ学校、大学で学ぶ者、企業で働く者、同郷のメンバーで構成された様々なグループが質問にウィットを効かせて答えたり、即興で何かをやったり、用意してきたステージを披露するなどして、グループごとに競い合う。毎年、優勝チームが選ばれ、番組を卒業していく、という流れになっている。

© Sputnik / Mikhail Klimentyev / メディアバンクへ移行KVN(発音は「ケヴェン」、明るい、目先の効く者クラブの意味)
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KVN(発音は「ケヴェン」、明るい、目先の効く者クラブの意味)

ショーはCISの全域で圧倒的支持を得た。そのオーディエンスは全世代にまたがっており、KVNはお笑いの登竜門と化している。その証拠に、KVNのスターは番組を卒業後、お笑い業界や演劇界で活躍するのが常だ。現代ロシアで最も人気のあるお笑いタレント、俳優、プロデューサーにはKVNの出身者が多い。

しかし、ここ数年でKVNの視聴率は右肩下がりだ。特に、若者の間でこうした傾向は目覚ましく、若者はテレビを離れてネットのお笑い番組にシフトしている。また視聴者も多くが、KVNのユーモアの質がここ数年で劇的に低下したと指摘している。

「コメディー・クラブ」とその他の「KVNチルドレン」

KVNの卒業生からは数多くのお笑い番組がこの世に誕生したが、そのジャンルとスタイルは多岐にわたる。そうした番組のいくつかは古巣の人気をしのぐ勢いだ。

  • 「コメディー・クラブ」

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2005年にスタートした「コメディー・クラブ」はロシアのテレビ業界で不動の地位を占めている。「コメディー・クラブ」の特徴は、KVNの時代と比べてタレントの自由裁量に任される度合いが圧倒的に高い点にある。刺激的なテーマをネタにしたり、放送禁止用語が飛び交ったりと、全体的にユーモア自体がよりアグレッシブだ。こうした傾向は「コメディー・クラブ」が放送開始当初、KVNの対抗番組として認識されていた頃に特に顕著に現れていた。

現在の「コメディー・クラブ」には数多くの関連番組が存在する。プロデュース会社「コメディー・クラブ・プロダクション」はお笑い番組やドラマ、コメディーなどを手掛けており、CISの全地域で視聴されている。

© 写真 : Comedy Club Productionコメディー・クラブ
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コメディー・クラブ
  • 「ウラルのペリメニ」

KVN出身者の中には、古巣の基準を踏襲する傾向もみられる。その典型的な例がグループ「ウラルのペリメニ」の作る同名のショーだ。この番組はステージショーの形式を受け継いただほか、「コメディー・クラブ」とは違い、マイルドなお笑いを大事にしている。

「ウラルのペリメニ」は1990年代末から2000年代初頭にKVNで出演していたグループだ。彼らの活躍はテレビ・ショー史上、人気と知名度の点で群を抜いている。そのため、「ウラルのペリメニ」は独自のショー番組を作る段になっても、あえてKVN時代のグループ名を維持し、それを番組名に据えている。

© Sputnik / Ekaterina Chesnokova / メディアバンクへ移行「ウラルのペリメニ」
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「ウラルのペリメニ」

スタンダップコメディとネットのお笑い

ロシアの若者の間でテレビ離れはますます進み、ユーチューブの番組や、インスタグラムといったSNSで活躍するブロガーの番組にシフトする傾向がある。ネット上のお笑いで特徴的なのは、ジャンルやスタイル、そして検閲が全く存在しない点にある。ロシア語のネット・ショーは、悪意のないショートコントやお笑いのシリーズ番組に始まり、容赦ない政権批判や、放送禁止用語が珍しくなく、なかには直接的な侮蔑行為すれすれのケースもある。テレビ番組で活躍するコメディアンがネット・ショーに登場するパターンも見られるが、そうした場合、彼らの言動はより大胆で容赦ないことが多い。

ネット上で爆発的人気を獲得したのは西側から入ってきたスタンダップコメディというジャンルのショーで、コメディアンはオーディエンスを前にトークショーを行う。多くのコメディアンは、事前に用意したネタの他にかなりの時間を観客とのやりとりや即興に割くため、そのステージは観客にとってより鮮明で身近に感じられるものに仕上がっている。

© 写真 : TNT TV channel スタンダップ
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スタンダップ

このジャンルで絶大な人気を誇るのはダニーラ・ポペレチヌィで、全国ツアーとなると、まさに国民的スター級のコンサートホールを貸し切るほどだ。露骨な政権批判や、ロシア正教会を風刺のネタにしたことで、2018年には急進主義に関する事項に触れ、あやうく刑事犯罪沙汰になるところだった。

ロシアやロシア人についてのご質問、より詳しく知りたいテーマがありましたら、私たちにEメールをお寄せください。お答えとなる記事を執筆し、サイトに掲載いたします。sputnik.jp.smm@gmail.com

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