2014.07.22 , 13:28

非業を遂げたマレー機、新たな対露制裁を正当化する手段か?

非業を遂げたマレー機、新たな対露制裁を正当化する手段か?

   ウクライナ南東部で墜落したマレーシア航空機の大惨事はロシアへの圧力を強化する格好の手段となった。だがこの悲劇にロシアが関与した証拠として使われているのは、疑惑の多い資料ばかりだ。

   10日ばかり前、ロシア語のインターネット界にウクライナの事態に関連して2冊の長編のSF小説が話題に挙げられていた。最初の1冊はグレブ・ボブロフ作『死産児らのエポック』。これはウクライナの内戦をテーマにしたものだ。本が出版された2008年当時、これは純然たるSFの世界のお話だと受け止められていた。ところが2014年、恐ろしいおとぎ話は現実のものとなった。このため多くの人の口から、2冊目の小説、2013年発刊のセルゲイ・アニシモフ作、『あさっての1日前』の悪夢のような予測も現実のものとなるのだろうか?という問いが挙げられている。そこに書かれているのはNATOがロシアに対して宣戦した初期の頃の話で、そのきっかけとなったのは米国中央情報局(CIA)が仕組んだドイツの副大統領の殺害事件とロシアがバルト諸国に攻撃したという嘘の情報だった。

   今、ロシアに問われている罪。それは、オランダを離陸し、ウクライナ南東部上空を通過してマレーシアへ向かっていたマレーシア航空機の乗員乗客298名の殺害に関与していたというものだ。

   この事件が起きたのは正真正銘の内戦が、世界には合法的な「反テロ作戦」と見せかけられながら展開されている地域の上空である。厳密に言えば、マレー機がどう非業の死を遂げたのか、その最終的な帰結を出すのは時期尚早である。なぜなら国際的な専門家らは機体の破片や残骸を調べてはおらず、「ブラックボックス」の解析も始まっていない。またパイロットがウクライナ上空を監視している航空管制官らと交わした録音会話も聞かれていない。

   だが世界のマスコミは大声で、悪いのは「親ロシア派の分離主義者らだ」と叫んでいる。あたかも、高度1万メートルの射程距離をもつ地対空ミサイル・システム「ブーク」を親ロシア派がロシアから手に入れていたかのような物言いだ。

   キャメロン英首相は新たな対露制裁の導入を要求した。理由は「ますます重みを増し続ける証拠資料によって」英国と自由世界全体は「MN17機は反体制派が掌握するゾーンから発射された『地対空』ミサイルによって撃墜されたという明確な帰結に達した」からだという。どうやらキャメロン氏はウクライナ側が提出した資料を「証拠」だと考えているようだ。それはまず、ウクライナ安全保障庁がインターネットに掲載したドンバスの反体制派の電話会話録音で、やりとりでふたりは、どこかのコサックが飛行機を撃墜した。飛行機は民間機だったと語っている。この会話録音を世界のマスコミはすでに「分離派」とそれを支持するクレムリン、つまりロシアの犯罪を示す証拠として広範に流布した。ところがロシア人専門家らが音声分析を行ったところ、これが捏造されたものであることが暴露された。録音は互いに無関連な2つの録音から、部分を組み合わせて作られたもので、一つの部分はどうやらウクライナ空軍の軍事輸送機AN26の撃墜のことをそしてもうひとつの部分はマレー機の墜落のことを語っているらしい。だが、この会話には誰がこれを行ったかという言葉は一切出てこない。捏造音声がでっち上げられたのは7月16日。マレー機の事件の1日前だ。つまりキエフは、7月17日、マレーシア航空機に何が起こるかを知っていたということになるのか?

   2つめの「証拠」もそれよりいいとは言えない。これは「ブーク1」を映した動画だが、ミサイルのほうは既に使用されて欠如している。これが、キエフ当局が断言するところによれば、マレー機を撃墜した後、クラスノダール市を通過し、ロシアとの国境に向かって移動しているらしい。映像から判断すると「ブーク」はキエフに忠実な軍が掌握するクラスノアルメイスク市を通っている。つまりこの「ブーク」はウクライナ軍に属しているものである。

   さらにもうひとつ、マレー機撃墜は「分離派」か、またはそれを助けるロシア人専門家らの発射した「ブーク1」のミサイルによるものという説に疑問を呈する、あるディテールがある。「ブーク1」がミサイルを発射した場合、これはS200と同様、ミサイルの破片または小型の球が敵の航空機の機体を貫通する。その貫通による穴はすぐに分かる。

   たとえば2001年、対空国防演習を行っていたウクライナ軍により黒海上空で撃墜されたロシアのTu154の機体の破片。その破片にもこの穴はあった。(イスラエルとロシアの民間人が死亡したこの事件について、ウクライナは結局その罪を認めようとせず、犠牲者への賠償金の支払いを拒否した。今、この事件についてはウクライナも西側も思い出さないように努めている。)

   だがマレー機の破片にはこのような穴はない。そのかわり、30ミ砲の高速射撃から発射した爆発弾であればこんな穴を残しただろうと思われるものはある。こうした大砲はソ連製の戦闘機に装備されているもので、ウクライナ軍の軍備にはそれがある。実は目撃者らの証言では、墜落していくマレー機の傍らに2機の戦闘機が見られていた。

   こうしたことから、国際的な委員会が帰結を出す前に真犯人の名を挙げないほうがいいのではないだろうか?

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