13:08 2021年03月08日
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1月18日、日本の菅義偉首相は就任後初の国会で施政方針演説を行い、その中で、平和条約を含む日露関係全体を発展させることが重要だとの認識を示し、北方領土は次世代に先送りせず、終止符を打たねばならないと述べた。これは2021年、露日関係において大きな発展が期待できるということなのだろうか?菅首相の外交政策はより積極的なものとなるのだろうか?「スプートニク」からのこうした質問に、ブリーフィング会見を開いた外交・安全保障が専門の神保謙、慶応義塾大学総合政策学部教授は次のように答えている。

「日露関係の戦略的な重要性は増している」

神保氏は、菅首相は安倍首相の後継者ではあるが、今のところ、露日関係発展を予感させるような行動は何ら講じていないと指摘する。

神保氏:「日露関係については、前の安倍首相が大変な熱意を持って取り組んで、何としても任期中にロシアとの平和条約を締結して、そして北方領土問題を解決するという熱意があったわけですけれども、残念ながら、日露関係の正常化、その平和条約の締結には至りませんでした。それは基本方針として菅政権には引き継がれていることは間違いないわけなんですけれども、菅政権が安倍政権と同じ熱意、パッションを持ってロシアとの関係改善に取り組むというこのシグナルはまだ見えてないということだと思います」。

しかし同時に、神保氏は、過去の露日交渉から重要な結論を導き出すことができると指摘する。その一つが、「日露関係の戦略的な重要性が増している」ということである。

神保氏:「過去数年の日露交渉から学んだことは何かということなんですけれども、やはり、平和条約の締結と領土の最終的な解決を目指そうとすればするほど、お互いゼロサム的な関係に入り込んでしまって、そこから先に進まないということがわかったということと、二つ目はそのようなゼロサム的な関係があるにも関わらず、大局的に見て日露関係の戦略的な重要性というのはむしろ増しているということなんだと思います」。

神保氏によれば、日露関係で重要な役割を担っているのが中国の動きだという。中国の存在が、日本にどのように捉えられており、ロシアにどのように捉えられているのかを理解することが、日露関係の発展を実現するのに、きわめて重要なことだという。

神保氏:「日本の戦略的な優先順位としては、当然、中国にどのように向き合うかということが大変重要です。ですので、日露関係というのは、やはりできるだけポジティブサムの領域を増やしていかなければいけないというのが日本の基本的な戦略的な発想だと思います。他方で、ロシアも、ロシアと中国との関係が深まっているということは十分認識できるわけですけれども、しかしながらすべてのアジア政策を中国を通してやりたいとは思っておらず、できるだけそれは多角化したアジアへの関与をしたいという戦略的な発想があるんだと思います。それでこの二つが折り合うところに実は日露関係の発展という可能性があるんだというのが私の基本的な考えです」。

神保氏は、平和条約がなくても、日露関係には、協力を深化させることができる多くの分野があるとの確信を示している。そこで菅首相はおそらくこの方向性で進んでいくだろうと見ている。

神保氏:「従って、日露の平和条約交渉に踏み込まずとも、実は実務的に関係を発展させられる余地というのは日露には沢山あって、例えば、日本とロシアのこの『2+2』です。これは外務大臣と国防大臣の枠組みというのは枠組みとしてあるわけですし、さらに、安倍政権の時に進めた8項目の経済協力枠組みであったり、北方領土における共同経済活動もその中に含めていいと思いますけれども、経済的な相互の関係というものも発展させることができるということで言うと、その日露交渉を進めなくても日露関係を実務的に発展させるということが菅政権の下では進んでいくのではないかというのがあの私自身の見通しです」。

(他の露日関係の専門家の意見はこちらから)

「外交は国内政策から始まる」

菅政権の外交政策が積極化していく可能性と余地について、神保氏はスプートニクに対し、次のように述べている。

神保氏:「これは私も今、本当によくわからないですけれども、重要なことは外交というのは毎日動いていて、これから菅総理は様々な首脳会談、日米首脳会談や多くの主要国との関係を外交を通じて構築していくということを常にやっていかなければいけないんだと思います。そこで菅総理自身は、国内の官僚組織であったり、あるいは有能な方というものをしっかりグリップするという才能に長けた人だとすると、やはり、優秀な人を登用して、その完了の組織をベースにして、日本外交のパフォーマンスを上げていくということに関しては優れた能力を発揮するのではないかということは考えられます」。

このように、神保氏は菅首相は安倍首相ほどの熱意を持って外交に取り組むことはないだろうとしつつも、良好な外交政策を進めていく可能性を否定することはできないと指摘する。

神保氏:「リチャード・ハースさんという外交評議会の会長の言葉ですけれども、彼はよく 『foreign policy begins at home』と言っています。 外交はまさに国内政策から始まります。だとすると、この国内政策をしっかりグリップできるその菅総理というのは実は外交においても優れた力を発揮するポテンシャルを秘めてるんじゃないかということは常に思い出していいことだと思います。確かに、安倍総理のように華やかなパフォーマンスはできないし、外交に対するこのパッションを常に感じているという方ではないかもしれませんけれども、それでも国内政策に対するグリップがしっかりしているからこそ外交のパフォーマンスを増すことができるかもしれません。こういうところは菅政権の外交の可能性として常に見ておいた方がいいのではないかというのが私が考えていることです」。

この記事に示された見解はスプートニク編集部のものとは必ずしも一致していません。

タグ
領土問題, 露日関係, ロシア, 日本
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